フジテレビのお粗末会見、批判する他局も同じ? テレビ局関係者は「明日は我が身」
中居正広の女性トラブルに端を発した、フジテレビのスポンサー離れが止まらない。その最大の原因となったのは、同局の港浩一社長のテレビ史に残るような“お粗末会見”だ。
当初、フジテレビは中居のトラブルへの「社員関与疑惑」について、社内調査だけで「一切の関与がない」と済ませようとしたが、フジ・メディア・ホールディングスの大株主である米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が厳しく批判すると、2月に予定されていた定例会見を急きょ前倒し。港社長らが17日に記者会見を開いた。
しかし、会見は「記者クラブ加盟社しか参加できない」「NHKや民放キー局は会見には入れるものの質問はできない」「テレビ局の会見なのに映像を撮らせない」といった異例の閉鎖的なものに。さらに、社員の関与疑惑などへの明確な回答ができなかったうえに「調査委員会の人選や中身を明かさない」という、なんら疑問が解消されないどころか、かえって不信感が強まる会見となってしまった。
これを発端にトヨタ自動車やアフラック生命、NTT東日本など大手スポンサーが続々と同局へのCM差し止めや差し替えを発表。フジの番組が「ACジャパン」のCMだらけになり、キッコーマンが一社提供する『くいしん坊!万才』の放送見合わせをフジに要請するなど、番組編成にまで影響が及んでいる。
前述のダルトン・インベストメンツは「信頼を回復するどころか、正反対の効果をもたらし、評判を傷つける結果になった」と港社長の会見を評し、テレビカメラを入れ、すべてのメディアが参加できる会見を改めて開くよう求めている。
テレビマンは「明日は我が身」
視聴者とスポンサーを失望させたフジの会見については、他局の報道番組などでも厳しい批判が浴びせられている。しかし、業界内では単純に「フジテレビがお粗末だった」と片付けられない内情があるようだ。
ある在京テレビ局の関係者は「あの会見は最悪だった」と前置きしたうえで、このように語る。
「もし港社長が会見を見事にさばいていたら、今のようなスポンサー離れをはじめとする大混乱には発展していないかもしれません。しかし、私が記憶する限り、テレビ局が不祥事などで会見を開いて『お見事』だったことはありません。
あのような会見は『調査委員会に委ねる』『被害者のプライバシーにかかわるので回答を控える』といった魔法の言葉に頼ってしまいがちで、フジテレビでなくとも信頼を失う結果になることが大半。テレビ局の内部から見れば『明日は我が身』です。偉そうに批判している他局も似たり寄ったりで、フジだけがお粗末なわけではない」
今後、他局でも同じような「接待」が発覚する恐れがある。もし同規模の問題が起こったとして、自信を持って「ウチの上層部はちゃんとした会見をやってくれる」と言えないのがテレビマンの実情のようだ。
フジの会見を批判している各報道番組などに対しても、前出の関係者はこう断じる。
「前もって会見に参加する条件が出され、各テレビ局は質問ができず、映像も撮れないことが事前に通達されていた。その条件でのこのこ会場に行った他局も同罪とまでは言わないですが、かなりお粗末だったと思います。カメラを回せないのも質問できないのも分かっていたのに、終わってから鬼の首を取ったように騒ぐのは情けない」
伝説の「5時間半会見」再現するしかない?
フジテレビにとって史上最悪のピンチといえる状況だが、ここから信頼を回復する手段はあるのだろうか。前出の関係者はこう指摘する。
「信頼回復のためには、一発逆転となる記者会見をするくらいしか手がない。ある意味で伝説になった、闇営業問題などに関する吉本興業の『5時間半会見』と同じように、質問が出なくなるまで会見をやるしかないでしょう」
2019年、吉本興業の岡本昭彦社長はタレントの闇営業問題などについて「時間無制限」で記者会見を実施。記者からの質問が出尽くすまで会見をやめないという異例の形式となり、その内容の是非はともかく、会見以降はマスコミの追及の勢いが沈静化していった。そのくらいのことをやらなければ、フジはあの「大ポカ」を取り戻せないということなのだろう。
中居だけでなくフジテレビの命運も懸かった今回の騒動は、テレビ業界全体にも波及している。視聴者やスポンサーと真摯に向き合う姿勢が問われるが、どのような形で収束を目指すのだろうか。
(文=佐藤勇馬)