山里亮太「紅白司会に急浮上」報道…なぜ業界で高く評価されているのか
B’zのサプライズ生出演などで中高年の視聴者を中心にSNSが大盛り上がりとなった昨年大みそかのNHK『紅白歌合戦』。しかし、視聴率は「歴代ワースト2」と厳しい結果に終わり、一部メディアではテコ入れ策として2年連続で司会を務めた有吉弘行に代わり、南海キャンディーズの山里亮太が新たな司会に抜擢される可能性が急浮上したと報じられた。
なぜそれほど山里はMCとして高く評価されているのか。人気も知名度も抜群の有吉を降板させてまで、山里が司会に起用されることはあるのか。芸人事情に詳しい芸能ライターが解説する。
昨年末の『紅白歌合戦』の視聴率は、午後7時20分からの第1部が平均世帯29.0%、個人21.1%、午後9時からの第2部が平均世帯32.7%、個人23.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となった。2部制になった1989年以降、第1部は初めて30%を割った前年と同率で過去最低。第2部は過去最低だった前年の31.9%より0.8ポイント上がったが、ワースト2となった。
有吉の「後釜」に山里が急浮上か
B’zや米津玄師、41年ぶりの出場となったTHE ALFEE、25年ぶりに出場したGLAYなど、出場者のキャスティングはNHK側の奮闘がうかがえた。それでも視聴率が厳しいとなると、テコ入れする部分は限られてくる。
そんななか、20日付の「デイリー新潮」が「紅白の司会、有吉の“後釜”に急浮上する意外な『お笑い芸人』の名前」などと題し、司会陣刷新の可能性を報じた。
昨年の司会陣では、NHKの鈴木奈穂子アナ、3年連続となった橋本環奈、初となった伊藤沙莉が会場を盛り上げたが、2年連続だった有吉は得意の毒舌を封印し、無難なトークに終始していたため視聴者の評価が芳しくなかったという。実際、有吉は誰が見ても緊張していることが分かり、いつもの調子でないのは明らかだった。
有吉への司会オファーは3年連続が条件だったともいわれているが、テコ入れとして満了を待たずに降板となる可能性があり、その後任としてサンドウィッチマンや内村光良らと並び、山里の名前が急浮上していると伝えられている。
山里の評価の高さの秘密
好感度抜群でNHKとの相性もいいサンドウィッチマンや過去に司会を務めている内村なら分かるが、山里の名前が有吉の後釜として取りざたされているのは意外なようにも思える。なぜそこまで山里の評価が高いのか。芸能ライターの田辺ユウキ氏はこう指摘する。
「私はかつてNSC(吉本総合芸能学院)の先生を取材したのですが、NSC時代の山里さんはとても勉強熱心だったとおっしゃっていました。山里さんと同じ22期には、キングコングの梶原雄太さん、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん、とろサーモンの久保田かずのぶさん、なかやまきんに君、中山功太さん、ギャロップの林健さん、ダイアン、スーパーマラドーナらがいます。
先生によると、山里さんはそのなかで決して目立つ存在ではなかったそう。ただ、山里さんはそういう自分を自覚していて、周りの才能あふれる同期と正面からぶつかることはせず、その代わりに誰よりもたくさんの本を読んだり、時事ネタを仕入れたりしていたとのこと。先生は、山里さんが背負うリュックにいつも5、6冊の本が入っていたことに驚いたそうです。
番組の進行役には、そういった『知識の絶対量』が間違いなく必要。山里さんは才能の人ではなく、努力の人といえます。NSC時代から培ってきた下地が今、司会者として生かされているのではないでしょうか」
有吉と山里の司会の違い
山里は6年連続で『紅白』の直前番組のメインを務め、1月7日に出演したNHKの人気番組『ファミリーヒストリー』も好評だった。日本テレビ系『DayDay.』で生放送の司会にも慣れており、実績もNHKへの貢献度も申し分ない。
山里が実際に『紅白』の司会に抜擢される可能性はあるのか。有吉の司会ぶりとの比較も含め、田辺氏はこのように解説する。
「たしかに有吉さんの『紅白』での司会進行は、いつもの芸風から考えるとかなりおとなしめな印象がありました。『紅白』ということで、有吉さんは身をわきまえるところがあったはず。有吉さんの著書などを読むと、すごく謙虚な性格で、誰よりも空気を読んでいることが分かります。
空気が読めるからこそ、バラエティ番組などで毒舌を繰り出すタイミングが抜群にうまい。逆に、秒単位で進行が組まれている『紅白』ではさすがにそういう余裕はなかったはず。『この場で毒舌は違う』と空気を読むところもあったのではないでしょうか。なにより有吉さんの毒舌芸はその一つ一つに破壊力があるので、なにかポロッと口にするとその言葉が“主役”になってしまう。さらっとやり過ごすことができないんです。
その点、山里さんのツッコミは良い意味でスルーしやすい『気楽さ』があります。山里さんはとにかく丁寧に、いろんな人の言葉をすくい上げて小さいツッコミを入れていくタイプ。どれも強烈には目立たないけど、なんだかちょっとだけいい仕事をしている。そういう瞬発的かつ端的なツッコミは、『紅白』の忙しない舞台にも合う気がします」
アドリブのセンスが光った場面
山里は「アドリブ力」も紅白向きだと田辺氏は力説する。
「2023年の『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)で、MCのフットボールアワー・後藤輝基さんが体調不良になり、急きょ代役MCを務めたときの司会進行ぶりは圧巻でした。優勝した紅しょうがの熊元プロレスさんの喜びのコメント『今日がクリスマスや』を受けての、山里さんの『慌てん坊なサンタクロースさんがいたもんだ』の返しはお見事でした。
『今日がクリスマスや』だけだと、ゆるい締めになっていた気がします。山里さんのこのちょっとした一言が、大会をしっかりまとめ上げました。つまり、その場、その場でアドリブ対応力がすごいんです。そういう能力も『紅白』とは相性が良さそうです」
業界内でも非常に評価の高い山里。ある意味でMCの頂点ともいえる「紅白司会」に上り詰めることができるだろうか。
(文=佐藤勇馬)
協力=田辺ユウキ
大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。