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さや香・新山とファイヤーサンダー・崎山「不仲すぎる」元コンビの対談動画が味わい深い

イメージ(写真AC)
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 今の芸人界でもっとも「仲の悪いコンビ」として知られているのが、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の2022年に2位、23年に3位に入っているさや香だろう。23年の『M-1』最終決戦では新山が独断で「見せ算」ネタを披露。大いにやらかした上に、同年の『アナザーストーリー』(同)で相方の石井が「僕も汗をかきたかった」とネタ選びについての不満を吐露したことで新山の不満が爆発。それ以前にも『アナスト』ではたびたび2人がカメラの前でモメ出す姿が映し出されていた。

 2人の不仲はすでにネタとして昇華しており、今年の『ゴッドタン』(テレビ東京系)では不仲をテーマに制作された楽曲が放送されたこともあった。

 一方、昨年の『キングオブコント』(TBS系)で3位に入ったファイヤーサンダーも不仲として知られるコンビだ。同じ事務所のAマッソがラジオ『ヤングタウン』(MBS)で「またファイヤーサンダーがケンカしてた」と語るエピソードはすでに定番化しており、崎山が相方のこてつを舞台裏で詰めている光景はすでにワタナベエンターテインメントのライブでは風物詩になっているようだ。

 さや香とファイヤーサンダーは、よく似た構図を持つコンビである。さや香は新山、ファイヤーサンダーは崎山が主導権を握り、すべてのネタを書いている。そしてこの2人が相方に圧をかけることで不仲に拍車をかけている。そういう2組である。

 この新山と崎山がかつてコンビを組んでいたことも、ファンの間ではよく知られている。そして、そのコンビの解散の原因が不仲であったことも、2人を知る者なら容易に想像がつくはずだ。

ピリピリ対談が始まる

 そんな新山と崎山が23日、新山のYouTubeチャンネル「さや香新山の夢の泉【公式】」で対談し、当時の様子を明かしている。昨年12月11日に大阪で行われたさや香とファイヤーサンダーのユニットライブ『ガッ天狗』の本番前だそうだ。不仲で知られるコンビ同士の、不仲の原因のほうが、不仲で解散した自分たちのコンビについて振り返っているのである。

 新山と崎山のコンビは「オリオン」といった。そのコンビ結成のきっかけからしてふるっている。新山が当時の相方と一緒に乗っているエレベーターに同乗し、新山に「いつ解散すんの?」と聞いてきたのだという。

「こいつやばいぞと」と新山。当の崎山はまったく覚えていないと言って爆笑している。

 その後もNSC時代や、当時のコンビ関係について、にこやかに振り返る2人。ネタ合わせでは崎山が新山の前に座り、新山にひとりで演技をさせていたという強烈なエピソードも出てくる。

 17年に先にさや香が『M-1』の決勝に進出。その報せを知った崎山はスマホを投げ捨てたという。翌年には『ABCお笑いグランプリ』の決勝で2組が顔をそろえ、まったくの無名だったファイヤーサンダーが今でも語り草になっている名作コント「KPKDBF」で優勝を果たしている。新山はファイヤーサンダーにタイトルをさらわれても「ちょっと余裕やった」と明かす。

 トガリきっていた2人の若者が大人になって、仕事でも結果を残して、こうして笑いながら当時を振り返る姿は実に和やかに映る。それでも、2人の会話のテンポはまったく合っていないし、互いに語尾を食い合うようにしゃべり始めるし、声の圧で上回ろうとしているようにも見えるし、やはり緊張感が漂う対談になっている。

 それでも、最近の新山はファイヤーサンダーのネタをYouTubeでチェックしているといい、崎山の念願である『KOC』優勝にエールを送っている。「太りすぎや」と体の心配までしている。

 新山は石井、崎山はこてつという相方を得て、それぞれが目指していた結果にたどり着こうとしている。それは、彼らのストイックすぎるお笑いへの姿勢を、それぞれの相方が受け入れてきたからに他ならない。

「仲良しコンビ」全盛の時代に

 芸人の「不仲」というものを考える。

 才能に恵まれた2人が才能に惹かれ合ってコンビを組み、真正面から衝突して解散した。散り散りになったオリオンはそれぞれにエゴを突き通せる相方を見つけ、オリオン時代とは違う形の「不仲」の形を振りまきながら、光り輝こうとしている。

 ここ数年、お笑い界には「仲良しコンビ」を是とする空気があった。コンビ仲がいいことを「売れる条件だ」と言い切る者までいた。

 さや香とファイヤーサンダーは、そんな空気に抗っているようにも見える。おもしろさだけで時代の空気を突破していく姿は、それはそれで痛快に映るものだ。

 不仲だった2人が、不仲のまま握手を交わしている。そんな関係性があってもいい。不思議な味わいのある対談だった。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。1977生。

n.shinkoshigaya@gmail.com

新越谷ノリヲ
最終更新:2025/01/24 18:00