フジテレビ、広告引き上げ、制作費削減、タレント出演拒否…元テレビPが指摘する“底なし沼”から立ち直る起死回生策
元タレント・中居正広の女性トラブルをきっかけに、フジテレビが存亡の危機に立たされている。
昨年末にトラブルが報じられた後も中居の出演番組は“普通に”放送され、関係者は大きな問題だと思っていなかったようだが、騒ぎは広まるばかり。社員の関与が噂されたフジテレビは説明を求められる状況となり、17日に社長会見が行われたが、お粗末な内容にスポンサーが激怒。一斉にフジテレビからCMを引き上げる異常事態になっている。
「1月23日時点で少なくとも75社がCMを差し止めており、ACジャパンのCMに差し替えられていて、ライオンなど一部のスポンサーは減額や返金交渉をするようです。タイミング的に新年度のスポンサー獲得時期ですが、こんな状態で契約がまとまるはずはない」(マネー誌記者)
実入りが減れば当然、企業は支出を削ることになる。社員の給与や賞与がカットされるのは当然だとして、制作費も削られるのは必至だ。そうしたなかで、4月以降のフジは一体どういう番組を放送するのか。制作会社スタッフが言う。
「 “ショボい番組”ばかりになりそうです。分かりやすいのは、再放送や“再編集”という名の使い回しや、動画サイトで集めた衝撃映像や面白動画を紹介する内容。街角でインタビューを行い、『X人に聞いた◯◯ランキング』として紹介する番組も制作費はあまりかからない。レギュラー番組はコスパのよい2~3時間の特番ばかりになるでしょう。一方、どのテレビ局もやっている『A社の売れ筋商品ベスト5』『B店マニアが激推する絶品グルメ10選』みたいな企業PR番組は、企業が嫌がるため、姿を消しそうです」
また、今回の騒動の影響がタレントにも及ぶのは間違いない。出演者の顔ぶれは興味深いことになりそうだ。
「フジテレビが現状のままのギャラが払えないとなると、ギャラの安い “知名度の低いタレント”“旬が過ぎた人”に出番があるかもしれません。また、ギャラを削るには自社の人間を使うのが一番ということで、アナウンサーは新人からベテランまでフル稼働することになるでしょう。ただ人件費が削られるのは確実で、優秀な人が出ていって、いよいよ番組がつまらなくなる悪循環に陥るのは目に見えている」(キー局関係者)
業界でも「未曾有」の失態
未曾有ともいえる一テレビ局の大ピンチだが、過去にこうした例はあったのか。日本テレビで42年間プロデューサーを務めた尼崎昇氏は、組織の体制が問われた一例として、2003年に起こった日本テレビのプロデューサーによる視聴率買収事件を挙げる。
「日テレは1994年から2002年まで9年連続三冠王だったのですが、巻き返しを図ろうとするフジテレビの勢いに焦ったPが担当番組の視聴率を上げようとして、視聴率を計測する機器がある家の住人を買収した事件です。2003年10月24日に事件が発覚し、問題のプロデューサーは翌11月に懲戒解雇処分。役員3人が降格、8人の役員報酬返上、6人が懲戒となりました。当然あってはならないことで大きな批判を浴びましたが、社の対応は早かった。スポンサーが降りてCMがACに差し替わることもなかったと思います。今回は、港(浩一)社長が下手くそすぎましたね……」(尼崎氏)
ベテランPも驚く、今回のフジの醜態。起死回生策はあるのか。
「ズバリトップが辞任するしかないでしょうね。港社長、嘉納修治会長、遠藤龍之介副会長も。また、第三者委員会でしっかり調査して、問題になっている社員がクロならクロでちゃんとけじめをつけるしかない」(同前)
実際、1月27日の会見で、フジテレビは港社長、嘉納会長の辞任を発表した。
“楽しくなければテレビじゃない”というキャッチフレーズにあてはめれば、現状のフジテレビは“テレビじゃない”状態だが、果たして立ち直ることができるのだろうか……。
(取材・文=藤井利男)