フジテレビ、異例の10時間会見で露呈した“お山の大将”体質 ベテランPが呆れる「トップの“思いやり”のなさ」と『仰天ニュース』での“例外”
芸能界引退を発表した中居正広氏の女性とのトラブルを巡る問題について、フジテレビは1月27日にやり直し会見を開いた。同17日に行われたクローズドな会見とは打って変わり、週刊誌やネットメディア、フリーランスの記者も受け入れ、テレビやネットでの中継も行われた。時折記者から怒号が飛び交うなど、波乱に満ちた会見は10時間にも及ぶ異例のものとなった。
会見に出席したのは、28日付でフジテレビ社長を辞任した港浩一氏、同じく会長を辞任した嘉納修治氏、遠藤龍之介副会長、フジ・メディアHD代表取締役社長の金光修氏、さらに新たにフジテレビ社長に就任した清水賢治氏の5人。フジサンケイグループの“ドン”と呼ばれ、フジテレビの取締役相談役として強い影響力を持つ日枝久氏は、出席しなかった。
時間無制限で行われた質疑応答で質問が集中したのは、一部週刊誌で報じられているフジテレビ社員A氏のトラブルの関与について。そして、トラブル発覚後も中居氏の冠番組である『だれかtoなかい』を終了させなかったことや、新たな特別番組の出演をオファーしたことなどについても、多くの質問が寄せられた。
港氏は、トラブルがあった当日の会食に、社員A氏の関与は「なかった」と回答。「週刊文春」(文藝春秋)で報じられていた、会食の1カ月前に中居氏のマンションで行われたBBQには社員A氏のほか女性も参加していたと認めたが、このBBQがトラブル当日の会食につながっているとは評価していないとした。なお、文春は28日になってこれまでの「社員A氏が女性を誘い、結果的にドタキャンしたため中居氏と女性が2人きりになった」という報道を“女性は中居氏に直接誘われた”と訂正している。
フジの“お山の大将”気質
トラブルは当初、社内の数人と女性の担当医しか知らない状態で、コンプライアンス推進室とは共有していなかったことも判明。港社長は『だれかtoなかい』の番組終了も考えたが、女性の体調を配慮して、タイミングを見計らっていたという。
「中居氏の番組が終了することが、女性の体調に良くない影響を与えるかもしれないという判断だったとのこと。番組終了が憶測を呼び、女性の望まない形でトラブルが明るみに出る可能性も考えていたのかもしれない。とはいえ女性の体調やプライバシーを盾にして不祥事を隠蔽していたかのように見えるのも事実で、苦しい言い訳には見えてしまいます」(芸能記者)
コンプライアンスを遵守し、社員の人権を最優先に守るのは当然だ。しかし、フジテレビが隆盛を極めた1980年代から1990年代にかけては、そういった“当たり前”が軽視される傾向もあった。今回の事案は、フジテレビが古い時代の考え方から抜け出せていなかったことが遠因になったとの見方もある。日本テレビで42年間プロデューサーを務めた尼崎昇氏は、フジテレビの体質についてこう話す。
「今は“弱いものに寄り添う”という当然のことをしっかりやっていく時代。しかし、今回のフジテレビの騒動を見ていると、そうはなっていない。港前社長は1980年代からイケイケでやってきた人であって、本当の意味で弱いものに寄り添うということができていなかったのでしょう。フジの動きを見ていると、トラブルを会社の問題として捉えず、あくまでも当事者間の問題として見ていたようにも感じられる。結局のところ、港社長を含めた決定権のある人々に“思いやり”がなかったということに尽きると思います」
フジテレビのバラエティー番組では、伝統的に出演者だけでなく、スタッフが登場することも多かった。『とんねるずのみなさんのおかげです』では、木梨憲武が頻繁に港氏のモノマネをしていたものだ。一般人であるにもかかわらず、タレントにイジられるのは“おいしい”。いわば“チヤホヤされるお山の大将”のような気分のまま、局のトップにまで上り詰めていたのかもしれない。
実際、1月27日発売の「週刊ポスト」(小学館)では、港氏の社長就任後に社員A氏を発起人とする港氏の誕生日会が開かれ、エース級の女性アナとともにトラブルの被害女性も参加させられたと報じている。まさに、社長になっても“お山の大将”気分が続いていたことを裏付ける出来事とも言えそうなのだ。
ちなみに、トラブルの当事者である中居氏の印象について、尼崎氏はこう振り返る。
「日本テレビの『ザ!世界仰天ニュース』での中居さんは、紳士的で心遣いもあって優しい人だと報告を受けていました。ただ、笑福亭鶴瓶さんと2人でのMCなので、“お山の大将”気分にならなかっただけなのかどうなのか……」
ドジャースの大谷翔平選手の新居について、その場所が特定できる形で報じて、プライバシーに対する意識の低さを露呈したフジテレビ。『めざましどようび』では、先輩アナらが新人の上垣皓太朗アナの容姿いじりをして大炎上した。そういった時代錯誤の動きが続いたなかで明るみに出た最悪の事態が、今回の中居トラブルだったとも言えるだろう。根本的な解決には、過去の栄光から抜けきれないフジテレビの“お山の大将”体質から脱却することが何よりも重要だと言えそうだ。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)