のん、11年ぶり「地上波ドラマ完全復帰」報道…「徹底締め出し」から復活できた理由

俳優でアーティストの「のん」が、4月期のTBS系日曜劇場『キャスター』で11年ぶりに民放ドラマに復帰すると報じられた。さらに、Netflix映画『新幹線大爆破』(4月23日世界独占配信)に運転士役で出演することも決定するなど、完全復活の気配となっている。長らく地上波ドラマからほぼ締め出されていた彼女が復活できた背景について、業界事情に詳しい芸能記者が解説する。
4月スタートの日曜劇場『キャスター』は、阿部寛が演じる破天荒なニュースキャスター・進藤壮一を主人公とするオリジナルドラマ。“世の中を動かすのは真実!”という信念を持つ進藤が、視聴率低迷にあえぐ民放テレビ局の報道番組「ニュースゲート」のメインキャスターに就任し、型破りな手法で番組を変えていく物語だ。
もともと前評判の高い作品だったが、2月27日発売の「女性セブン」(小学館)が「のんが出演する」と報じたことで注目度がさらに跳ね上がった。同誌によると、のんは物語中盤ごろにサプライズキャストとして登場するという。のんが演じるのは、“新しい万能細胞”を発見して脚光を浴びるものの、後に研究データの不正が発覚する「疑惑の女性研究者」という、どこかで聞いたことがあるような役柄とのことだ。
市川実日子『ホットスポット』好調で高まる主演女優として価値…「通好みの脇役」から新たなステージへ
業界と前事務所の「変化」が影響か
のんといえば、本名の「能年玲奈」で活動していた2013年にNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』のヒロイン役で大ブレイク。しかし、当時の所属事務所「レプロエンタテインメント」との間で独立トラブルが勃発し、ほどなく開店休業状態に。2016年に「のん」に改名して再スタートを切り、CMや映画などには出演するようになったが、地上波ドラマからは消えてしまった。
地上波の連続ドラマに出演するのは、実に『あまちゃん』以来。それほど徹底的に締め出されていたにもかかわらず、突然の「復帰」となったのはなぜなのか。業界事情に詳しい芸能記者はこう解説する。
「のんは昨年から堰を切ったようにテレビ露出が増えましたが、大半の出演番組はNHKという状況で、完全復活とはいかなかった。しかし、4月スタートの『キャスター』で11年ぶりの民放ドラマ出演が実現すれば、注目度の高いTBSの看板ドラマ枠『日曜劇場』ということもあり、大きく状況が変わってくる。ここで印象に残る演技ができれば、他局からも続々とオファーが舞い込む可能性が高い。
突然の民放ドラマ復帰には、旧ジャニーズ問題を発端に業界の『忖度』文化が問題視されたことや、公正取引委員会が芸能事務所との関係などについてタレントへのヒアリング調査をしたことが大きく影響している。この調査の報告書は昨年末に公表されました。また、過去に所属していたレプロが、ここ数年は旧態依然とした体質から脱却。タレントファーストの姿勢になり、独立にも協力的になった。実際、昨年も鈴木康介、高田秋が円満退所している。そうした体質の変化が、長年にわたってこじれていた、のんとの関係にも影響したのでしょう」
公正取引委員会が行ったタレントへのヒアリング調査では、移籍や独立をめぐって事務所から「今後の芸能活動を一切行えなくなると脅された」「放送局に対して、退所した芸能人を出演させないよう働きかけがあった」「芸名の権利は事務所にあるとして、退所後に改名させられた」といった回答があった。公正取引委員会は、こうした行為が独占禁止法上、問題となる場合もあると指摘。旧ジャニーズをめぐる騒動に加え、これが業界の「忖度見直し」の一つの契機になった可能性がありそうだ。
今後は俳優として再び飛躍か
地上波復帰に加え、1975年公開の名作映画を大胆にアレンジする草なぎ剛主演のNetflix映画『新幹線大爆破』にメインキャストの一人として出演することが決定。のんは、1975年版で千葉真一さんが演じた運転士役を務める。
これから大きく未来が拓けそうなのんの評価や今後について、前出の記者はこう力説する。
「『あまちゃん』のときから演技力には定評があったが、まだキャリアの浅いフレッシュな年齢だったからこその輝きがあったのも事実。ブレイク後に出演した映画『ホットロード』(14)、『海月姫』(14)でも原作漫画を裏切らないキャラクターになりきっていたが、それからドラマ・映画ともに出演作がなくなったため、未知数なところが多かった。
その後、のんはアート方面での活躍が目覚ましく、後に主演映画『Ribbon』(22)を自ら監督するなどクリエイターとしても頭角を現した。2023年7月13日、30歳の誕生日に、肩書きの『女優・創作あーちすと』を『俳優・アーティスト』に改めたことからも、アーティストとしての揺るぎない矜持がうかがえる。
それに比例するように演技の幅も広がり、アラサー女性を自然体で演じた『私をくいとめて』(20)、女性でありながらさなかクンを違和感なく演じた『さかなのこ』(22)、のんをモチーフにした原作漫画の主人公を自ら演じた『天間荘の三姉妹』(22)など、さまざまな映画で個性的な役柄を巧みに演じている。また、アニメ映画『この世界の片隅に』(16)でも主演を務め、初の声優挑戦とは思えないほど印象的な演技を見せた。年齢と共に表現力の幅を広げ、精神的にも大人になっただけに、過去のしがらみから脱して活躍の場が拓けたことで、今後は俳優として大きな飛躍が期待できるでしょう」
(文=佐藤勇馬)