『R-1グランプリ』全ネタ振り返り! 「頭がいい」と勝てない大会に?【新越谷ノリヲトーク】

ライター・新越谷ノリヲと担当編集Sが勝手にしゃべります。お聞き流しのほどを~。
『R-1』おもしろかった
編集S 『R-1』おもしろかったですね。
新越谷 おもしろかった。おもしろかったけど、ちょっとあんまり気持ちよくないです!
編集S ほう?
新越谷 まあいいじゃないですか、広瀬アリスの前髪すごかったですね。
編集S すごかった。審査員2人追加はどうですか? 友近とさっくん。
新越谷 友近はもちろん、さっくんというのはワクワクしましたね。さっくんだ! と思いました。
編集S では、ネタを振り返りましょう。
新越谷 そうしましょう。
ヒロ・オクムラ
編集S トップはヒロ・オクムラですね。今夜も星が綺麗。
新越谷 『M-1』敗者復活もよかったし、期待度は高いです。
編集S どうでした?
新越谷 文字量押しで来たわりに落ち着いて始まったので、安心しました。男性で、やましたみたいなテンポで来られるとしんどいなと思っていたので。
編集S やました、『THE W』の。達者ですよね。
新越谷 ヒロ・オクムラも、達者だなーという印象でしたね。いわゆるサークルクラッシャー、オタサーの姫の女の子の顔もすぐ見えたし、「僕はこう見えて」から「お姉ちゃんと妹いるから」までの間の使い方とか、自信持ってやってるからちゃんと的中して気持ちよかった。
編集S 展開もありましたよね。
新越谷 結果、面接だけで3人がバラバラになっちゃうのもよかった。滑舌もいいし表情もいいし、あとは、鼻血とか過呼吸とか、あのへんの小ネタの飛距離かなーという感じですかね。でもいいトップだったと思います。
チャンス大城
新越谷 チャンスさんは飛距離と構成のバランスがさすがだなーと。
編集S 「私を笑わせて」というスタートも大胆というか。
新越谷 得意技を惜しみなく出すぞという宣言ですよね。ゆきおとことの鉄板エピも惜しみない。あと「私の大城くんに何をするの!」って、あとから出てきたリンダが「大城くん」って呼んでるのもおもしろかった。
編集S ずいぶん長い間、舞台からいなくなってましたよね。
新越谷 約20秒だった。なんというか、チャンスさんの集大成であって、チャンスさんの頭の中を見せてもらったようで、実は全然何を考えてるかわからないという、その絶妙なところに落とし込んできた感じがするんですよね。パブリックとエゴの中間でありながら、閉じていない感じ。いいものを見せてもらったなぁと思いました。
田津原理音
編集S 田津原、ウケてましたね。
新越谷 実に品行方正。すごいウケてたし、点数も出てました。
編集S なんか不満そうですね。陣内じゃん、とか言いたい感じですか?
新越谷 言いたい感じですねえ。
編集S それはよくない?
新越谷 いいんだけど、説明書の中でやってることのハチャメチャさと、ネタそのものの周到さが合ってないというか、裏切りの予感がないんですよね。最初からいろいろ見えちゃってるから、そのパッケージの中でしか暴れられない感じがして。もちろん、ものすごく優秀なネタではあると思いますけど。
編集S テレビ見ながら「シャバい」って言ってましたね。「これ、シャバい」って。
新越谷 それは言っちゃダメ。
ハギノリザードマン
編集S まんまローズヒップ。
新越谷 よかったと思うー。年齢がちょうどよくなって、「怪しい若者が変なことしてる」から「いいおっさんがくだらないことをしてる」にうまくシフトできてる感じがしました。
編集S それこそワクワク感ありますよね。
新越谷 発想としてはあるあるなんだけど、全部、小さいものを大きくしてるんですよね。ナゲットとかばんそうこうとか、大きいっておもしろいんだというのは発見だった気がします。ラストの哀愁もバカみたいで大好き。
編集S 大きいっておもしろい、確かにそれは発見ですね。
ルシファー吉岡
編集S ルシファー、7回目だって。去年は強かったですね。
新越谷 去年の1本目がそうとうよかったんで、ハードルは上がってたと思う。
編集S どうでした?
新越谷 おもしろかったです。おもしろかったんだけど、爆発するネタじゃないんだよなぁという印象なんですよね。ずっとおもしろいし「これくらい経営傾くぞ」もすごいパンチラインだと思うんだけど、おもしろさと笑いの量が比例しないんですよね。ちょっと感心しちゃうし、尊敬しちゃう。
編集S それはいいことなんじゃ?
新越谷 単独とかだったらそっちのほうがいいんだろうけど、『R-1』を勝つにはちょっと見る側の感情が複雑になりすぎる感じがするんですよね。特に今回の『R-1』って、シンプルイズ必勝みたいな雰囲気があった気がするんですよ。なんでそういう流れになったのかはちょっとわからないけど。
編集S ポップじゃないわけじゃないですもんね、ルシファーのネタも。
新越谷 ポップではあるけど、バカではない。古民家カフェの例えもめちゃくちゃ知的だし。
編集S あ、バッテリィズの影響ですかね。
新越谷 それもあるかも。ないかも。
吉住
編集S 新越谷さんの優勝候補。
新越谷 はい、そうです。今でも優勝候補です。
編集S 気持ちよくない原因はこれだ。
新越谷 優勝しちゃうと思ったんですよ。ネタ終わった瞬間に。点数低くてびっくりした。
編集S そんなに。
新越谷 いわゆる、入りは「天使と悪魔」じゃないですか。自分の中に二面性があって、それが顔を出して自身を葛藤させるという、ピン芸人が最初に作ってみるパターンというか。今さらそれをやるんだ、って意外だったんだけれども。
編集S それだけでは終わらなかった。
新越谷 吉住のコントって、芝居が強すぎて架空の相手を食っちゃうところがあったんですよね。それがまず、この「天使と悪魔」の時点で強烈なキャラが吉住本人に向かっているので、対立軸が成立してる感じがして気持ちよかったんです。それが本人を侵食していくのもドラマチックだったし、本人はキャラが弱いまま架空の男と対面しているので、そこの関係性にも無理がない。無理がないところから無理を生じさせていく。
編集S なんか熱いな。
新越谷 最後の落語のくだりまで、ファンタジスタでセンスオブワンダーだったと思うんだよなぁ。これで勝てなかったらグレードダウンしていくしかないんじゃないの。どうすんだろ、来年。
編集S どうするのがいいんでしょう。
新越谷 知りませんよ。応援するだけです。
さや香 新山
編集S 『M-1』出なかった新山。
新越谷 とりあえず、ファイナルにたどり着いただけですごい。
編集S おもしろかったですよね。
新越谷 おもしろかった。「僕、大学時代チアガールと付き合ってたんですよ」って急に言い出したところとか、爆笑してしまった。新山の体力が続くなら30分くらい聞いてられると思いました。
編集S あんまり伸びなかったですね。
新越谷 これは逆に、伸びないかなーと思いましたね。やっぱちょっと怖いんだよな。押しが強いから圧が怖い。この圧が石井に向けられてるうちはいいけど、こっちにこられるとちょっとうっとおしいというか、うるさい。
編集S 愛せないということですかね。
新越谷 そういうことだと思う。要するに、井口との比較なわけですよ。新山は胸板も厚いし、顔もいいじゃないですか。井口はちっちゃくて顔も変だから愛せるけど、新山はもうちょっと慣れないと愛せない。そういう感じ。
編集S まあ、慣れですよね。
友田オレ
編集S 結果、トップ通過です。
新越谷 ああ、これはしょうがないなと思っちゃったなー。
編集S これはシャバくなかった?
新越谷 シンプルに、タレント性というか、パッケージとしての完成度が高すぎて手も足も出ないという感じ。
編集S 歌もうまいし。
新越谷 歌もうまいし、発想に余裕がある感じがしたんですよね。「苦手で嫌い」とか「家に帰りたくなる」とか、もっと飛距離は出せるけど、このネタではこのへんに落とし込む、という明確な意図を持って作られてるネタな感じがする。23歳でしょ、貫録すら感じたもん。
編集S 納得の結果ですか?
新越谷 納得です。
マツモトクラブ
新越谷 おもしろかったー。こういうのでいいんだよって感じ。
編集S ですよね。『R-1』ってこういう感じだったな、と思い出しました。
新越谷 でも、これもバカじゃない。頭がいい。
編集S バカなら勝てる、という基準になってるんですかね。
新越谷 そういうわけでもないと思うんですよね。田津原のも頭いいんだけど、点数入ってるじゃないですか。会場ウケの影響もあるとは思うけど、今回の『R-1』はちょっと傾向がよくわからなかったという印象だったんです。
編集S 審査員の得点もバラけてるんですよね。最高得点を付けたのが、ザコシはチャンスさん、さっくん野田クリ小藪が友田オレトップで、次点がさっくん田津原、野田クリがハギノ、小藪さんはハギノと吉住、バカリはルシファートップで、陣内が唯一、田津原をトップにしてる。で、マツクラのところで友近97、バカリ88、陣内89というギャップも出てる。なんだったんだろう、この大会。
新越谷 よくわかんないけど、通して友田オレが頭ひとつ抜けてたことは間違いないと思うんで、まあよかったんじゃないでしょうか。審査員7人に増えたのはめちゃくちゃよかったし。最終決戦も納得だったし、特にもう言うことないです。
編集S そうですね。『R-1』嫌いになってないですか?
新越谷 全然なってないよ。来年も楽しみです。
(文=新越谷ノリヲ)