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「純子の部屋」純子の「デジタル時代の生歌サバイバル」#4

フォロワー240万人超ゆりにゃはなぜ純子式を選ぶ? “最先端”ボイトレ

フォロワー240万人超ゆりにゃはなぜ純子式を選ぶ? 最先端ボイトレの全容の画像1
「純子部屋」純子(左)とゆりにゃ(右)ツーショット

 ミュージシャン、アイドル、タレント、役者、声優と、多くの人たちが“歌”で自己表現を追求する日本のエンタメ業界。歌唱からさまざまな活躍やバズが生まれる一方、テクノロジーの進化とトレンド至上主義によってエンタメは飽和状態ともいえる。これからは、演者も運営も制作者も、グローバルな視点を広げ、時代を考察し、鍛錬を積んだ“本物”だけが生き残ることができるだろう。

 指先ひとつで音楽も歌も半自動的に生まれるこのAI時代で、人間が、歌が、声が、世界のエンタメ業界にどのような価値を生み出すことができるのか。そして世界に通ずるエンタメを確立していくために、我々ができることは何なのか。本企画では、声楽家であり歌唱指導者である「純子の部屋」純子が、声楽家としての鋭い観点と知見、愛ある偏見で、日本エンタメの今と未来を過激に考察していく。

 第4回目は、前回に続きインフルエンサーのゆりにゃが登場。華麗なダンスとパーソナルジムをプロデュースするまでに至る筋トレ愛というあくなき身体への探求は、一人ひとりの身体の使い方を重視した歌唱指導を行う純子先生と共鳴する。そんな二人が思う、歌唱と身体の関係性とは?歌唱上達のために大切な呼吸や身体の共鳴とは? 体感的視点と専門的視点で、その真髄に迫る。

ゆりにゃの美と狂気の限界突破術

ボイトレはスポーツ!汗だくになる純子式・歌唱指導

———改めて、ゆりにゃさんは純子先生の教え子の一人として、歌唱指導を受けているそうですね。ゆりにゃさんの“歌唱面”にはどんな印象を受けましたか?

純子 まず、ゆりにゃちゃんは元々歌が上手い人なんや、ということです。これまでダンスや筋トレを積み重ねてこられたっていうのもあるので、身体の使い方がわかるというか、長けてるんやと思います。

 あと、大体の場合は「この子の歌唱は今後こうなっていくだろう」という経験に基づいた成長推測をある程度立てて、それに向けて指導していくのですが、ゆりにゃちゃんの場合は「どっちの方向にでも行けるやん」っていう面白さがあります。まさにそれを感じたのが、初回のレッスンで緑黄色社会の「Mela!」を歌ってもらった時です。インスタのストーリーにもアップされていたのでゆりにゃちゃんのファンの方は見てくれているかと思うんですけど、身体の後ろを使って高音をバチッと決めたんです。それがめちゃめちゃ良かった。太一さん(※ゆりにゃのマネージャー)がちょうどその部分をカメラで押さえてくれていたのも素晴らしいし、私の言いたいことが全部そこに詰まってましたね。

——歌唱面でのポテンシャルもかなり高いと。

純子 そう思いますね。だからこそ、もっとレッスンしてみたいなって思いました。90分のレッスンも10分しか経っていないような感覚でした。私、教えてて楽しくなる子は一瞬で終わっちゃうんですよ。

ゆりにゃ 本当にそう! あっという間すぎて、まさに秒です。「もう終わるのか」って悲しい気持ちになりました…。

———ゆりにゃさんがこれまで培われてきた身体能力が歌唱面でも発揮されている、ということですが、ゆりにゃさんご自身も歌唱レッスンを通して身体の変化みたいなものは何か感じましたか?

ゆりにゃ 純子先生のレッスンを受けてみて、ボイトレってスポーツなんだなって思いました。身体を使う分、筋肉の代謝も上がっているからか、元々汗を全くかかないタイプなのに、レッスンの最初から最後まで汗が止まらなくて…。

純子 え、元々汗かかないんですか!?

ゆりにゃ はい。サウナに行ってもかかないし、激しく踊っていてもかかないから、そのせいで昔ダンスの先生に「ちゃんと踊ってないでしょ!」って怒られたこともあります。

純子 えー!知らんかった!とはいえ、ダンスで使う筋肉と歌で使う筋肉というのは全く違うもので、ダンスが上手い人でも歌が苦手っていう人は多いです。そんな中で、どちらの筋肉もあって、どちらの筋トレにも食らいついていけるっていうのは、かなりレアなオールラウンダーやなと思いますね。しかも、それでめっちゃ汗をかいてくれたっていうのが嬉しい…!

———汗が止まらないほどアクティブな歌唱レッスンという…。それが純子先生ならではの歌唱レッスンだなと思います。

純子 私のレッスンでは、仰向け、うつ伏せ両方の“歌筋トレ”があるんですけど、どちらも床に寝た姿勢から始めます。なので、教え子たちも私も汗をかくし、ボイトレ中は年中サウナ状態です。初回のレッスンでは、ゆりにゃちゃんがめっちゃ可愛いニットを着て来てくれていて、その姿のまま筋トレさせちゃったんですよね。それもあってか、2回目は練習着で来てくれました。

ゆりにゃ はい、動きやすい服装にしました(笑)。

純子 そうやってレッスン内容に合わせて服装にも修正をきちんとかけてくれるのも、ゆりにゃちゃんの良いところですよね。ボイトレってただ立って歌うだけ、というイメージを持ってる人が多いと思うんですけど、私のレッスンでは身体を動かすところから始めて、それで持ち時間が終わった場合は、次回までにはスムーズに終えられるように、少しでも運動に慣れてもらいます。時間に余裕があれば楽曲をやろうか、っていう流れでやってます。料理でいうと、念入りに下ごしらえをするっていうイメージですね。それに応えてくれる姿を見られるのは、教師冥利に尽きます。

歌えて良かった——音楽が喜びになる「音楽療法」のチカラ

——身体の使い方という点で、ゆりにゃさんはこれまでもダンスや筋トレを通してご自身の身体に向き合ってこられたと思います。身体を鍛え、向き合うことが大切だって思えたきっかけって何かあるのでしょうか?

ゆりにゃ 私は12歳の頃から精神病を患っていて、気分の浮き沈みが激しすぎて1年間活動休止した時もあったんですけど、3年前くらいに身体を鍛えたり動かしたりするようになってから、精神病がかなり改善されていったんです。何十年も抱えてきた心の病だから治らないと思っていたのに、今ではほぼ治ったといえるくらい。

 ダンスをしてる時や筋トレをしてる時って悩みを忘れられる瞬間なので、悩みを忘れて自分を最大限に発揮する場所や時間が、私には必要だったんだなっていうことに気付けました。体を動かすことは、私にとって安定剤みたいなものですね。

——悩みを忘れて自分を最大限に発揮する時間…。それは歌っている時にも感じられましたか?

ゆりにゃ 歌もそうです。歌ってる時って楽しいし、ストレス発散にもなるし、多分脳から幸せホルモンが出てるんだと思います。

純子 レッスン中のゆりにゃちゃんってすっごく良い表情をしていて、私大好きなんですよ! 課題に対して上手くできた時に、お互いに「今できたよね!」って感じて、言葉がなくても喜びが伝わり合う瞬間があるんですけど、それってどれだけ鮮明に録画していても残らない、その場の一瞬でしか味わえない代物なんですよね。

ゆりにゃ うんうん、あの瞬間めっちゃ嬉しいです。

純子 それに、実際に音楽療法っていうものもあります。だから、ゆりにゃちゃんが幸せホルモン感じてるって言ってたのもそこに通じるんじゃないかなって思います。

ゆりにゃ え、音楽療法ってはじめて聞きました。そういうのがあるんですね。

純子 そうなんですよ。私は音楽療法士の資格も持っていて、ボランティアで自閉症、認知症、発達障害の人たちに対して、ピアノやタンバリン、マラカスなどを使ってその人に合わせた療法を実践しています。

———音楽療法士としてのスキルを活かした活動もされてるんですね。実際に音楽療法を受けた方々にはどんな反応がありましたか?

純子 中には不機嫌なままの人もいるし、反応はさまざまなんですが、小さな赤ちゃんの人形を抱いた認知症のおばあちゃんに「赤とんぼ」や「この道」などを弾き語りすると、音の方を向いて明朗な滑舌で一緒に歌ってくれたことがあって、それがめっちゃ記憶に残ってます。あと、肢体障害と知的障害がある子どもの施設にも行くんですけど、とある中3の男の子がいて、その子は一人では動けないし話せないんですが、ピアノを弾くとたちまち目が変わります。ちゃんと聞いている合図を出してくれるんですね。

 その一瞬で人の人生が劇的に何か変わるのかというと必ずしもそうではないのですが、その人の記憶の断片に“音楽”という小さな思い出がひとつ、またひとつと蓄積されていけば、「歌えて良かった」「聴けて良かった」という喜びが刻まれていくのではないかと信じて続けてます。いつか、刑務所で歌ってみたいですね。音楽に触れられる機会の少ない人たちに、どんな形ででもいいので、何か発信していけたらなとずっと思っています。

喉はまだまだ未知の領域!常に最新情報を取り入れた高度な歌唱指導を

———これまでの本連載においても、度々歌と身体のつながりについて言及されてきましたが、ここで改めて、なぜ歌唱の成長に身体の使い方を学ぶこと、身体を鍛えることが大切なのか教えてください。

純子 まず、歌の大元となるのは“呼吸”です。歌といえば“声を口から出すもの”と思われがちですが、そもそもは呼吸の流れをもとに、身体の動きを知り、身体内の共鳴を使って体外へ発するエネルギーです。例えば、REC時の波形は音を視覚化した状態で見て、共有できる一番シンプルな図です。波形が歪みすぎると音が割れるのですが、共鳴の上手い人はピアノの生演奏でもfやpの扱いが非常にうまいです。1/fゆらぎを持つ宇多田ヒカルさんの歌なんかは、まさにそうですよね。

 楽曲のジャンルは千差万別なので、この波形が一番いい!とかはないですが、クラシックのコンサート会場やドームクラスになってくると後頭部や後ろ姿も見られますから、マイクがあろうがなかろうが360度共鳴させられる発声を、どの子たちにも指導しています。

ゆりにゃ 全身が楽器みたいなイメージですよね。純子先生が「頭蓋骨から音を放射線状に響かせて、共鳴させることができる」っておっしゃってたのですが、歌って頭のてっぺんから足のつま先、指先まで集中して意識しながら奏でるものなんだなって思いました。

純子 そうなんです! それをボディマッピングっていいます。ダンスでは鏡を見ながら練習すると思うのですが、歌の練習ではだいたい鏡を見ないじゃないですか。だからこそ、頭の中から身体の隅々まで意識を巡らせることが大切で、レッスン中もその子の口元じゃなくて、歌いながらダンスをする時に身体のどこが共鳴しているのか、きちんと肩甲骨から肘関節、肘関節から手首、指の第一関節での動きまでコントロールしながら動けているかなど、口以外の部分を見ながら指導しています。

ゆりにゃ うーん、歌って奥深いですね。

純子 喉の器官というのはまだまだ解明されていない部分であって、コロナ禍にはオランダの研究チームが喉の奥に新しい器官を発見したというニュースもありましたが、それも、新しい臓器なのか、唾液腺の一部なのかというところで止まっています。(参考元:https://www.cnn.co.jp/fringe/35161316.html

 医者でさえ未知の領域な上、近年では動画配信サイトでもエビデンスの不明な不確かな情報が氾濫しています。そういうものに対して、私は自分で効果があったと思える、エビデンスありきの歌唱法を提唱しています。

 “ラーメン屋の親父歌唱法”、”げっ歯類歌唱法”などなどオリジナルの歌唱があって、名前は変ですが、この方法でメジャーになった子たちもちゃんといます。死ぬまで勉強し続けなアカンなと思っています。

 とはいえ、常に高度な歌唱指導を行うのが私の務めなので、音声分野へ知見のある先生のもとへ頻繁に訪れては、欧米での耳鼻咽喉学会での研究結果や論文を仕入れ、常に最新の情報へアップデートした高度な指導を提供することに努めています。

色眼鏡なしに“自分の声”で歌えるアーティストになってほしい

——純子先生のレッスンを通して“歌唱”という新しい分野に一歩を踏み出したゆりにゃさんですが、歌というのが新しい武器となって、ゆりにゃさんのさらなる活動に良い影響を与えそうでしょうか?

ゆりにゃ 歌を歌うことで、新しい自分に気付けたなと思ってます。お仕事の幅も絶対に広がると思いますし、何より新しいことにチャレンジすることで、ファンの子たちがめっちゃ喜んでくれると思います。自分の知らない世界に乗り出していくのがすごく楽しみです。

純子 つい先日チバニャン(https://x.com/ChibaNyan_Music)さんとのお仕事でゆりにゃちゃんのRECディレクションへ帯同させていただきました。ひとまずはこちらの完成を楽しみにしつつお忙しいとは思いますが“ちゃんと歌が歌えるアーティスト”として活動していくことも視野に入れていただきたいなと思ってます。

 推しだと歌が上手く見える、という色眼鏡がかかるので認識されていないと思いますが、声楽という視点から見ると、“自分の声で歌える子”というのはなかなかいないです。それはそれでひとつのエンタメビジネスとしては成立していると思いますが、玄人が見ても上手い子というのは出てきて欲しいと思うし、ゆりにゃちゃんはそういう存在になれると思います。なので、一刻も早くオリジナル曲でサブスクを出してほしいですね。そして「私が歌唱指導を担当してます!」って堂々と言いたいです。

ゆりにゃ うーん、でもそれはまだ早いなって思ってます。3年くらい練習してから出したいですね。

純子 鋭い! 歌というのは半年ごとに上手くなっていくもので、その頃には自分でもハッキリとわかるくらいの変化が出てきます。3年後なら6段階成長した姿をお見せできると思うので、メインの活動にはならないとしても、ぜひ歌を披露する活動はやって欲しいなと思いますね。そのために微力ながら応援、サポートしていきたいです。

ゆりにゃ お互い高め合っていきたいですよね。純子先生にはいつも刺激をもらえるし、自分の知らなかった才能みたいなものを引き出してくれるのがめっちゃ上手だなって思います。だから、レッスンを受けていてめちゃめちゃ楽しいです!

純子 やったー! 太一さんがアイドルオーディション合宿の最後に「今回の合宿で最も得たことは、純子先生と出会えたことですね」って言ってくれたんですよ。それがめっちゃ嬉しかったです。

ゆりにゃ マジでそう! 純子先生に出会えて良かったです。オーディション時もそうだし、自分が実際にレッスンを受けてみても思ったけど、一人ひとりの個性を引き出してモチベを上げて、その子に自信をつけてもらうっていうのが、もう純子先生のライフワークって感じがする。そのために生まれてきたんじゃないかって思うほどです。

純子:粛々とその使命を全うしたいと思います。

アイドル世界進出への必要な投資
関西アイドルが解禁したライブの熱狂

プロフィール

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ゆりにゃ

ゆりにゃ
YouTube、TikTok等で活動するインフルエンサー。162cm・40.5kgというスレンダー美ボディと、SNSで公開するダンス動画や努力を惜しまない日々の体験管理、筋トレ姿が人気を博し、総フォロワー220万人超。パーソナルトレーニングジム『CHANCE GYM』のプロデュース、本格派コスプレイヤーなど多岐に渡って活動中。

宮谷行美

音楽メディアにてライター/インタビュアーとしての経験を経た後、現在はフリーランスで執筆活動を行う。坂本龍一『2020S』公式記事の執筆や書籍『シューゲイザー・ディスクガイドrevised edition』への寄稿の他、Real SoundをはじめとしたWebメディアでの執筆、海外アーティストの国内盤CD解説などを担当。

宮谷行美

「純子の部屋」純子

声楽家、教員。大阪音楽大学音楽学部声楽科卒業。
音楽科一種教員免許取得。学生より学外コンクールへ精力的に参加しKOBE国際学生音楽コンクール初入賞。その後中国音楽コンクール銀賞、サンテレビ賞、中国国際音楽コンクール国際部門1位(杭州にて)他多数。安藝榮子、R・ハニーサッカー、中川牧三に師事。主に宗教声楽・現代音楽・オペラからアニメ・ゲーム音楽まで取り扱うジャンルは多彩で、個性的な見た目とは相反する実直で技巧的、的確な表現方式を得意とする。
演奏活動に加え多種多様な後進の歌唱指導にも力を入れアーティスト、タレント、俳優、アイドル、YouTuber、TikToker、2.5次元ミュージカル俳優等の育成輩出、プロモーションに携わる。
ファーストサマーウイカ、おじゃす、矯正ちゃん、Kolokol、Axelight、AVAM、サクヤコノハナ、Quubi、yosugala(汐見まとい)、INUWASI、PRSMIN、Merry BAD TUNE.、YOLOZ、ありぃくん(uijin・作詞家・プロデューサー)、ゆりにゃ(TikToker、YouTuber)等多数指導。
大阪を拠点とし全国へ出張を重ね声楽をベースとした様々なジャンルの歌唱指導へ柔軟に対応しながら個性を伸ばすレッスンを展開している。

X:@matinee_poetic

「純子の部屋」純子
最終更新:2025/03/16 18:00