『松島トモ子 サメ遊戯』松島トモ子がサメと戦う河崎実最新作、主演俳優・木下彩音は何を思う……?

1年半ほど前のことである。当時の最新作『電エースカオス』の公開を控えた河崎実監督に話を聞いた。そのバカでかい声でさんざんバカ映画への愛情を語り尽くした取材の最後に、河崎監督はこんなことを言っていたのだ。
「だって、次の映画は松島トモ子だから。『サメ遊戯』ってタイトルで。ブルース・リーで『死亡遊戯』ってあったでしょ? 今回は松島トモ子がサメと戦うんだよ。ハハハハ。松島トモ子ってライオンとヒョウに食われたじゃない。でも生きて帰ってきて、今度はサメと戦うっていう。狂ってるよね。松島トモ子、78歳だよ。ワハハハハハ!」
まさしく荒唐無稽。目の前で爆笑している、とうに還暦を過ぎた男の爆笑をただ呆然と眺めるしかなかったのを、よく覚えている。
その『松島トモ子 サメ遊戯』が完成した。実際に、松島トモ子がサメと戦っていた。78歳の松島トモ子だけではない。なぜかタイムスリップして、若かりし頃の松島トモ子もまた、サメと戦っていた。
ライオンとヒョウに食われた松島トモ子がサメと戦う映画、それが形になっているという事実に不思議な興奮を覚えた。登場したサメは世界中のどのサメ映画に出てくるサメとも似ていない、そして間違いなく河崎実印のサメだった。奇作、怪作、珍作、どんな形容もこの映画には似合わない。「河崎実のサメ映画」以外の何物でもない作品が4月4日、全国のスクリーンで公開されることになる。
公開に先駆けて、『サメ遊戯』の犠牲(?)となった主演俳優に話を聞いた。若き松島トモ子を演じたのは、木下彩音。その大きな瞳に、未体験の「河崎組」現場はどんなふうに映ったのだろうか?
──この企画のオファーを受けたとき、どんな映画だというお話でしたか?
木下 もともとライオンに噛まれたとかヒョウに噛まれたとか、そういうお話はニュースとして知ってはいたんですけど、そのお話をおもしろく、コメディとして若い世代の人に知ってもらいたいとおっしゃってました。
──松島トモ子さん、テレビなどで見たことはありましたか?
木下 私はなかったんですけど、家族に話したらみんなめっちゃ知ってましたね。お母さんとか。
──クランクイン前、脚本を読んだ印象は?
木下 はい、えーと……。
──河崎監督の映画なので、好き勝手に言っちゃって大丈夫だと思います。
木下 あの、すごいなぁって思いました。撮影に入るまでは、どうやって撮るんだろうっていう疑問のほうが大きかったですね。
──河崎監督の過去の映画はご覧になりましたか?
木下 はい。B級映画というんですか。見て、逆に怖くなりました。コメディとか、そんなに振り切ってやることが今までなかったので、どのくらいの程度やったらいいんだろうって。
──撮影に入ってみて、印象的だったことは?
木下 台本をいただいたときは、サメがどんなサメかわかってなかったんですが、現場で会ってみたら意外とかわいらしくて。私、サメ映画がすごく好きで、サメ映画に出られることがうれしかったんですけど、実際フタを開けてみたらすっごいコメディじゃん、っていうギャップはありましたね。
──あ、サメ映画好きなんですね。じゃあサメに食べられる役は夢だったとか?
木下 あはは。でも、サメと共演できたのはうれしかったです。
──あれはご自身の中で、サメと認められますか? 大丈夫ですか?
木下 はい! サメにしました! サメです!
回ってるのにしゃべってくる
──河崎監督の撮り方は特殊だとみなさんおっしゃっていますが、どう感じましたか?
木下 けっこう(カメラが)回ってるのにしゃべりかけてくるというか。テストのときに熱くなっちゃって役者のセリフを先に自分で言っちゃったりとか……。
──驚きますよね?
木下 でも、そうやって本番になったら「やっぱりここはこう!」みたいな感じで、その場でアイディアをくださる感じだったので、つながったときにどうなってるんだろうとは思いました。撮って止めて確認して、というのではなく、監督の中でたぶんひらめいたものがあるから、そこで都度訂正しながら撮っていく感じで、それは特殊だなって思いました。
──撮影の指示以外で印象に残っていることはありますか?
木下 監督、ずっと笑ってるんです。現場のどこにいても監督の声が聞こえてくる。お話をさせていただいても、すごいポップで、元気をもらえる方ですよね。こんなに明るい現場ってないなっていうくらい。
木下彩音にとってのお芝居の楽しさ
──映画やドラマだけでなく、バラエティ、グラビアやモデルなどさまざまな活動をされていますが、役者の仕事の楽しさはどんなところに感じていますか?
木下 いちばんは、私を知らなかった方にも知ってもらえることだと思います。新しくこの作品きっかけで知りましたと言っていただけることが多くて、それがうれしいですね。人に認知していただけることが楽しくてお芝居の仕事をしてるかもしれないです。
──それでいうと、今回はカルトなおじさんが大量に木下さんを知ることになりそうです。
木下 そうですね(笑)、また全然違うジャンルの方に知ってもらえたらうれしいです。
──見たことがない層の客席になると思います。
木下 舞台挨拶が楽しみです!
──では最後に、『サメ遊戯』のアピールをお願いします。
木下 はい。あの、すごい特殊な映画だったので、共演者の方も普段やってるお仕事と違って、振り切ってる感じが……。
──戸松遥さんなんて、むちゃくちゃでしたもんね。
木下 そうなんです! すっごい振り切ってるお芝居をみんながされていて、みんながおもしろくしたいなって思った作品で、そういう思いが詰まってると思うので、見ている方にも楽しんでいただけたらなって思いますし、B級映画っていうジャンルを知らない方にも広めてもらえたらうれしいなって思います。
(取材・撮影・文=新越谷ノリヲ)
●木下彩音(きのした・あやね)
生年月日/2000年2月21日
身長/156cm
出身地/京都府
趣味/ポムポムプリングッズ集め、御朱印集め、ホットヨガ、中国ドラマ鑑賞
特技/水泳、中国語(※勉強中)

●『松島トモ子 サメ遊戯』
監督:河崎実
キャスト:松島トモ子、岩井ジョニ男、ゆうぞう、戸松遥、岩井志麻子、輪湖チロル、ぐんぴぃ、ジョシュ・バーネット、木下彩音ほか
脚本:小野峻志(「野球どアホウ未亡人」監督」)・河崎実
主題歌:「おんな鮫追節」 唄:永野希
制作:株式会社BBB、サイバーダイン株式会社、有限会社リバートップ
配給:エクストリーム
(2024年/日本映画/カラー/ステレオ/ビスタサイズ/DCP/71分)
©「松島トモ子サメ遊戯」製作委員会2024
https://gameofshark.com/
4月4日、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿ほか全国ロードショー