『あんぱん』第4回 加瀬亮パパが「4日目で死んだ! 早!」というインパクトの優先とデメリット

NHK朝の連続小説『あんぱん』も第4回。一昨日「早々に死にそうです」と書いたのぶちゃんパパの結太郎(加瀬亮)が死にました。早。そうか、「人間なんてさみしいね」か。
なんというか、ドラマって人なんか簡単に殺せるんだぜ、と改めて突き付けられたような気がするんですよね。モデルとなっているやなせさんが妻と出会ったのは実際には高知新聞社であって、幼少期の「のぶ」とその周辺、つまりは今回死んだ加瀬パパも含めて架空の作り物なわけですが、スタートから4日目で殺してくるとは思わなかった。
もちろん物語としての必然性は感じるんだけど、「4日目」で殺した理由は間違いなく「4日目で死んだ! 早!」というインパクトを優先したということなんだよな。登場から、結太郎という人はほとんど遺言めいたことしか言ってないし、のぶの妹2人と言葉を交わしたのは今日の出掛けでほんのちょっとだけ。
第1話で父を迎えに行ったのものぶ1人だったし、今日、父を駅まで送ったのものぶだけだった。結太郎は「3姉妹の父」ではなく、「のぶの父」としてだけ登場して、死んでいったということです。
これによって、のぶちゃんと妹たちが父の死の悲しみを分かち合うという、ごく当たり前に発生するであろうシーンが濃密に描けなくなっている。加えていえば、ここまでのぶと妹たちとの関係性もほとんど描かれていませんので、この段階で父が死ぬと、「平常運転の朝田家」において3姉妹が幼少期にどんな姉妹だったのか、それがもう二度と描けないということです。大人になった次女には、今をときめく河合優実がキャスティングされているというのに。
そういうデメリットと天秤にかけて「4日目で死んだ! 早!」というインパクトが優先された。それがいいとか悪いとかでなく、わりと乱暴というかラフなこともやってくるぞ、という中園先生からの宣言を受けた回だったと思います。
振り返りましょう。
画面の外の風景、映っていない人の思い
世界をまたにかける商社マンである結太郎、今回の出張は朝鮮の京城だそうです。ソウルですね。次に帰ってくるのは1カ月先。のぶちゃん(永瀬ゆずな)もゲンナリですが、まあこの程度の「さみしいね」は慣れたものなのでしょう。ママからお弁当を渡されると、学校へと向かいます。
昨日「守っちゃる」と約束した嵩(木村優来)とは急接近した様子。2人連れ立って通学しています。のぶちゃんいわく、嵩の今日のお弁当は「とびきりしゃれちゅうやっか」だそうです。言葉の意味はよくわからんが、とにかくホメているのでしょう。素直に「しゃれてる」でいいのかな。
「今日のお弁当は、おばさんが作ってくれたんだ」
昨日、嵩の母である登美子(松嶋菜々子)は家を出ました。嵩は「ちょっと高知に用事に行った」と思っているけれど、おばさんこと育ての親となる千代子(戸田菜穂)は、登美子が再婚するために家を出て、もう戻らないことを知っています。
だから、思うところがあったんだろうな。普段はお手伝いさんに作らせているお弁当を、今日は嵩のために自分で作ったということが、この嵩のセリフひとつから想像できるわけです。展開はラフでも、こういう画面の外の風景とか、映っていない人の思いを丁寧にすくい上げてくる描写はいいですね。さすが中園氏、実に信用できる。
登美子がもう戻らないことを知っているのぶも、思わず言葉を失ってしまいます。
「お父ちゃんがひと月出張に行くだけでこんなにさみしいのに、嵩はどうなってしまうがや」
あ、ナレーションが心の声もやるんですね。びっくりした。2人は学校まで駆けていきます。のぶちゃん、お弁当振りすぎ。ぐちゃぐちゃになっちゃう。
「暴力によって守られる」ことへの抵抗
2人仲良く外の石段でお弁当を食べることにした嵩とのぶちゃん。そこにいつものイジメっ子4人組が冷やかしに来ますが、のぶの「守っちゃる」が発動。リーダー格であるマッシュルームカットともみ合いになり、のぶ自身が振り上げていた下駄によるカウンターを食らって目の上をカットしますが、腕っぷしだけでマッシュを投げ飛ばしてしまいます。
路傍の石に後頭部を痛打したマッシュは流血。そのまま3人で嵩パパの病院に駆け込むのでした。
幸い、マッシュのケガは大したことない様子。突き飛ばされて後頭部に頭を打った人は死ぬのがドラマの定石ですが、とりあえずひと安心です。
その後、母親の羽多子(江口のりこ)とともにマッシュの意外にデカい家に謝りに行ったのぶですが、「ケガさせたことは謝ります、けんど、弱いもんイジメするのが悪いがや!」と啖呵を切って見せるのでした。というか、のぶママはバタコって名前なのね。
ここで描かれたのは、正義と暴力のお話。『アンパンマン』のテーマにもかかわってくる部分ですね。翌日、嵩は「もう僕を守るのはやめてほしいんだ」と告げ、再びひとりでお弁当を食べる決意を示すのでした。
「女の子に守られると、よけい惨めになるから」
のぶとマッシュのバトルシーンを振り返ってみると、嵩が「惨めだ」感じている様子は描かれていません。その後の治療シーンでもバタコさんに「おばさん、のぶちゃんを叱らないで」と堂々と主張しています。おそらくこの「惨め」は、のぶを説得するための方便であって、やっぱり暴力沙汰に対する嫌忌の念のほうが強いんだろうな。というか、『アンパンマン』の話なので、それくらいの浅い裏読みはしたくなるところです。
選ばれし者の恍惚と不安
今日イチのシーンはやっぱり、医者の寛(竹野内豊)が朝田家に赴いて結太郎の死を伝える場面でしょう。
たぶんだけど、朝田家には電話がない。おのずと、主治医であり家に電話もある寛に第一報が入ることになる。彼が庶民より優秀かつ裕福であったことが、このつらすぎる役割を背負う要因になっているわけです。
思わず背を正して待ってしまったね。寛がどんな言葉で彼らにこの超絶悲報を伝えるのか。竹野内豊54歳、どんな芝居を見せてくれるのか。
「結太郎さんが、帰りの船の上で、心臓発作をこいて……息を引き取られたそうです」
江口のりこバーン、吉田鋼太郎バーン、浅田美代子バーン、厳粛な宣告のトーンと、それを受ける大人俳優たちの顔面、いやぁ、ドラマを見てるなぁという満足感にあふれる、そういう質量を感じるいいシーンでした。永瀬ゆずなちゃん、俳優続けるならこのときの現場の空気感、ずっと忘れないでほしい。
という感じで、楽しいですね『あんぱん』。嵩くんが鉛筆画を洗濯バサミに挟んで乾かしていたのは謎でしたが、フフフと流しておきましょう。
(文=どらまっ子AKIちゃん)