松岡茉優、大手事務所から独立で気になる今後…多部未華子の活躍で見える「安心の理由」

女優の松岡茉優が1日、所属していた大手事務所系列の「ヒラタフィルム」を退社すると発表した。今後は芸能事務所「Don-crew」とエージェント契約を結んで活動していくという。大手を離れての再出発ということで、一部では「メディア露出が減ってしまうのでは」と危惧する声もあるが、彼女の今後はどうなるのか。業界事情に詳しい芸能記者が解説する。
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円満退社であればいいが……
松岡は自身の公式サイトで「私がヒラタグループに所属して今年で22年になりました」と切り出し、「30歳になりこれからの人生を考えた時、浮かんできたのは挑戦したい、でした」としたうえで、「自分のことを信じて、まだ見ていないものを見に行きたいと思いました」と退社を表明。事務所や関係者に感謝しつつ、今後については「株式会社Don-crewとエージェント契約を結び、大切にしていることをこれからも変わらず大切にして日々に感謝し、努めていきます」と説明した。
完全な円満退社であることをうかがわせているが、そうとも言い切れない要素もある。
松岡はデビュー以来、大手事務所「ヒラタオフィス」に所属していたが、近年の組織再改編で系列事務所への移籍を繰り返した。これについて一部では、かつて男性との「自転車2人乗り」写真がスクープされ、それが仕事のオファーに影響し、マネージャーから厳しく叱責されたことで不信感を持ち、事実上の「事務所内独立」になった結果だとも報じられた。以降も「独立説」が噴出するなど、事務所との軋轢を感じさせる報道が散発的にあった。
もし大手のヒラタグループと「ケンカ別れ」したとしたら、キャスティングなどにも影響が出そうで今後が心配になる。
業界の内外で高評価の理由
これほど心配の声が集まっているのは、松岡が多くのファンを持ち、なおかつ業界内でも好感度が高いからだ。松岡の評価について、業界事情に詳しい芸能記者は言う。
「8歳で芸能界入りした松岡は、デビュー前からテレビ東京系の子ども向け番組『おはスタ』が大好きで、番組の女子アシスタント『おはガール』になることが目標だった。その夢は2008年、13歳のときに叶うことになる。おはガールになったことで知名度を上げていくが、本格的な女優活動はおはガール卒業後の2010年からで、女優としてのブレイクのきっかけになったのは2013年のNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の入間しおり役だった。
ヒロインの天野アキが所属するアイドルグループのメンバーで、熱血タイプのリーダー格を演じて評価を高めた。アイドル役が板についていたが、それもそのはず、松岡は熱烈なモーニング娘。ファンで、ことあるごとにハロヲタであることを公言している。さまざまなメディアでモーニング娘。愛を語っているが、その的確さは評論家さながら。そうした分析力が役作りに活かされているのは間違いなく、役を掘り下げる力は早くから業界内で評判だった」
『あまちゃん』で頭角を現した彼女は、実力派女優へと成長していく。前出の記者が続ける。
「2015年、自身にとって連ドラ初主演となった『She』(フジテレビ系)では、ジャーナリスト志望の才女をクールに演じ、効果的にモキュメンタリーを取り入れた斬新な作風も相まって深夜枠ながら話題を呼んだ。それを皮切りに同年の『コウノドリ』(TBS系)、2016年の『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』(テレビ東京系)、『水族館ガール』(NHK)など話題作への出演が続き、どれもタイプの違うドラマながらしっかりと役に入り込み、演技力の高さを見せつけた。
ブレイクの決定打となったのは主演映画『勝手にふるえてろ』(2017)で、24年間恋愛経験ゼロでオタク気質のOLをリアルに演じ、数多くの映画賞に輝いた。さらに2018年には、世界的に評価された映画『万引き家族』に出演し、風俗勤めで一家の家計を支える主人公家族の次女を生々しく演じて、前年に続き数多くの映画賞を獲得。演技派女優としての地位を確立した。
硬軟織り交ぜた役者としての振り幅もさることながら、おはガール時代に磨いたバラエティへの対応力も抜群。お笑い特番『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ系)などでMCを任されることも多く、どの仕事に対しても全力で取り組む姿勢が、老若男女問わず愛される理由。またインタビューに臨む際の準備も怠らないことでも有名で、一つひとつの仕事に真摯に向き合うからこそ、常にオファーが絶えないのだろう」
独立後も活躍「前例アリ」
それだけの逸材となれば、もし事務所独立を機に露出が激減してしまうようなことがあればもったいない。そのような恐れはあるのか、前出の記者はこう指摘する。
「彼女がデビューから所属してきたヒラタグループは俳優ファーストで知られ、現在も長谷川博己や宮崎あおいら人気実力ともに評価の高い俳優がいるが、所属タレントの移籍・独立にも寛容。最近では2024年に20年間ヒラタグループに所属していた多部未華子が独立したが、今クールの連続ドラマ『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系)で主演を務めるなど、以前と変わらず仕事は順調。それに松岡が触発された可能性もある。
松岡がエージェント契約した『Don-crew』は小規模な事務所ながら、上野樹里、大原櫻子、水川あさみとエージェント契約しており、それぞれがしっかりとした作品選びでマイペースな活動を続けている。ずっとヒラタグループのエースとして獅子奮迅の活躍を続けてきた松岡だが、昨年の結婚により、プライベートを大切にしながら、もっと自分主導の活動をしたかったのかもしれない。キャリアが長いのでベテランの風格も漂うが、今年2月に30歳になったばかりでまだ若い。さらなるステップアップを目指す頃合いとしては、ベストな時期なのかもしれない」
直近の独立組である多部は主演ドラマに加え、日本マクドナルド、花王などの大手企業のCMでも活躍。この前例を見れば、松岡の独立は問題なさそうだ。エージェント契約を結んだ事務所が上野樹里、水川あさみといった人気女優と契約していることもポジティブな材料となる。縛りがなくなったことで、仕事へのこだわりの強い彼女がより自分の理想を突き詰めていくことも期待できそうで、今後も目の離せない存在となりそうだ。
(文=佐藤勇馬)