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本多圭の『芸能界・古今・裏・レポート』

“ナスD”だけじゃない!繰り返されるテレ朝の不祥事と沈黙する「ドン」

テレビ朝日
テレビ朝日(写真=写真ACより)

 3月24日、東京ドームに隣接する「IMMシアター」で吉本興業主催の『東西南北寄席』が開催された。博多華丸・大吉、中川家、タカアンドトシ、そしてサプライズゲストとして登場したオードリーの計4組が漫才を披露。その後のトークコーナーでは、タカアンドトシとオードリーの春日俊彰が「ナスDの演出はパワハラだった」と笑いを誘い、観客の笑いをさらった。

「フジ騒動さえ……」有名女優も憤慨

 “ナスD”とは、テレビ朝日の名物ディレクター・友寄隆英氏の愛称だ。既報の通り、同氏は、パワーハラスメントと経費の不正使用により降格処分を受けたが、テレ朝の局員による横領事件は表沙汰になったものだけでもこれで5件目。業界内では、“テレ朝は横領の温床”と揶揄されている状況だ。

 友寄氏は、2017年に放送されたバラエティ番組『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』にて、自ら全身黒塗りの姿で登場し話題を集めた。

 番組で訪れたのは、ペルーの先住民の村。タトゥーの染料として用いられる果実「ウイト」の果汁を全身に塗ったことで、体がナスのような色に染まり、“ナスD”と呼ばれ、人気を博した。2020年4月には冠番組『ナスDの大冒険TV』がスタートし、同年7月にはエグゼクティブディレクターに昇格するなど、順調な出世を遂げた。

 しかし、テレビ朝日は3月19日、「会社経費の不適切な使用やハラスメント行為など重大なコンプライアンス違反が発生した」とし、友寄氏に懲戒処分を下し、「視聴者や関係者の皆様の信頼を裏切る結果となったことを深くお詫び申し上げます」とのコメントを発表した。

 テレ朝は名前を公表していなかったが、すぐに友寄氏だと特定された。彼がスタッフに対して人格否定を繰り返していたのは、業界では周知の事実だったという。

 “ナスD”として注目を浴びた姿も、実はCGで黒く加工していたものだった。本人が「黒い方がネットでバズる」と主張し、部下に加工を指示していた。そうした演出が成功したことで彼は勘違いし、やがてパワハラに走るようになったのだ。

 友寄氏の不祥事はそれだけではない。私的な会食費など、約517万円を不正に受領していた。要するに横領である。

繰り返される“横領事件”の構図

 友寄氏だけではない。前述した通り、これまでにもテレ朝幹部の“横領事件”は繰り返し報道されてきたが、今回もまた同じ構図が繰り返された。そこには、視聴率を取った人間が優遇される“視聴率至上主義”が根底にあるのだろう。

 2006年には、『川口浩探検隊シリーズ』や『TVのチカラ』などで知られたプロデューサーK氏が不正な経理操作により懲戒解雇された。筆者は当時、銀座6丁目の高級クラブ「K」(現在は閉店)で、ビートたけしの事務所「オフィス北野」(現在は独立)の社長・M氏と飲んでいた。M氏が向かいの団体客に挨拶しに行き、その中には中山秀征や元男子バレーボール選手の河合俊一の姿もあった。M氏によると、挨拶相手はテレ朝のKプロデューサーで、同行していたのは制作会社の幹部たちだったという。

 店の関係者によれば、彼らは毎晩のようにKプロデューサーを囲んで銀座のクラブを飲み歩いていた。中山や河合も常連だったという。

 K氏は架空の外注費を計上し、制作会社に海外旅行費を負担させたり、銀座や六本木のクラブで接待を受けたりしていた。その額は1億8000万円に上るとされる。

 2013年には、人気番組『銭形金太郎』などを担当していた編成局員が、約1億4000万円を横領したとして解雇された。2017年には『相棒』などを手がけていたドラマ制作部長が不倫報道を機に、飲食代約559万円(計605件)を私的流用していたことが発覚し、部長職を解任された。

 2022年には、『報道ステーション』成功の立役者とされ、組織トップにまで上り詰めた亀山慶二社長が飲食費など約60万円を私的に流用していたことが発覚し、辞任に追い込まれている。こうした背景から、「テレ朝は“横領の温床”」という声も上がっていた。

 一方で2009年に社長、2014年に会長となった早河洋氏は、局内でこれだけの問題が噴出してきたにもかかわらず、いまだに処分を受けず、“テレ朝のドン”として君臨している。フジテレビの前会長・日枝久相談役(3月27日に退任)と何ら変わらない。81歳になってなお権勢を振るう早河会長が退任しない限り、視聴率至上主義による不祥事はなくならないだろうという指摘は局内外から根強くある。

 今年、開局以来初となる視聴率三冠王を達成したテレビ朝日。しかし、その成果も、こうした企業体質の上では空しく響くばかりだ。

(文=本多 圭/ジャーナリスト)

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本多圭

ジャーナリスト。1948年、東京生まれ。明治学院大学中退。TBS臨時労働者雇用闘争を経て、「週刊ポスト」の専属記者。その後フリーになり、芸能、医療分野などを手がける。芸能取材歴は40年以上。著書に『ジャニーズ帝国崩壊』『スキャンダルにまみれた芸能界のトンデモない奴ら』。

最終更新:2025/04/06 22:00