ZARDが歌う主題歌が忘れられない『名探偵コナン 水平線上の陰謀』

ヤマザキ春のパンまつりと同様に、すっかり春の風物詩となっているのが『金ロー』名物の「コナン祭り」です。4月18日(金)公開の劇場アニメ『名探偵コナン 隻眼の残像』に合わせ、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では3週連続で劇場版『名探偵コナン』をオンエアしています。
第2週となる4月11日(金)は、シリーズ第9弾『名探偵コナン 水平線上の陰謀』(2005年)です。豪華客船内で起きた怪事件に、コナンたちが挑みます。ちなみに『水平線上の陰謀』は興収21.5億円。ここ数年のようなメガヒット作ではありません。ある意味、通常運行の『名探偵コナン』です。
ZARDが歌う主題歌「夏を待つセイル(帆)のように」がスマッシュヒットした『水平線上の陰謀』の見どころを振り返りたいと思います。
ゲストキャラなし、本来の『名探偵コナン』
クルージング中の豪華客船内という密室状態で起きる殺人事件と真犯人探し。アガサ・クリスティ原作の『ナイル殺人事件』を思わせる、いかにもミステリー作品らしい舞台設定です。『水平線上の陰謀』が公開された2005年は、ちょうど日本テレビ系の人気シリーズだった2時間ドラマ『火曜サスペンス劇場』が24年の歴史を終えた年でもあります。
殺人ミステリーと忌まわしい因縁を浄化させるような人気歌手が歌う主題歌が流れるエンディング。『名探偵コナン』は『火曜サスペンス劇場』の後継作品でもあるようです。
今回、江戸川コナンや毛利蘭たちは、財閥令嬢の園子に招待され、豪華客船「アフロディーテ号」での船旅を楽しみます。蘭の父親・毛利小五郎、阿笠博士、灰原哀、少年探偵団も一緒です。
少年探偵団が蘭や園子と一緒に、船上で隠れんぼをして遊んでいたところ、園子が何者かに拉致監禁されてしまいます。さらには船内で殺人事件も発生。コナンたちは乗船している600人の乗客たちの中から犯人を探し出すことになります。
黒ずくめの組織は今回の事件には関係せず、公安警察の安室透、FBIの赤井修一もまだ登場しません。ゲストキャラがいない分、レギュラーキャラクターたちがしっかり活躍します。普段はへっぽこ探偵の毛利小五郎や少年探偵団たちも存在感を見せています。本来の『名探偵コナン』を楽しみたい人には最適なエピソードでしょう。
久々のヒットだったZARDの主題歌
テレビ放送では少ししか流れないかと思いますが、エンディングを飾る主題歌「夏を待つセイルのように」を歌っているのはZARDです。TV版『名探偵コナン』(日本テレビ系)のオープニング曲だった「星のかがやきよ」との両A面シングルとしてリリースされ、ZARDにとって久々のヒット曲となりました。
ZARDのボーカル坂井泉水さんは、2006年に「グロリアス マインド」をレコーディングした後に入院生活に入り、再始動を目指しながらも2007年5月に40歳の若さで亡くなっています。病院の敷地内で転落死を遂げるという謎めいた最期でした。
ZARDのヒット曲の数々に励まされてきたファンにとっては、映画のイメージに合わせて坂井泉水さんが作詞した「夏を待つセイルのように」も忘れられない1曲でしょう。
Jポップ系と相性のいいアニメスタジオ
アニメ化されて30年近くになる『名探偵コナン』だけに、ZARD以外にも、倉木麻衣、小松未歩、愛内里菜、三枝夕夏、そしてB’zといった人気アーティストたちとのコラボ曲が次々と生まれてきました。ビーイング系だけでなく、スピッツ、ポルノグラフィティ、福山雅治、最新作ではKING GNUといった大物たちも劇場版の主題歌を担当しています。
製作会社である「トムス・エンタテインメント」は、かつての「東京ムービー」です。大人向けアニメの先駆け『ルパン三世』(日本テレビ系)や、杏里が歌う主題歌「CAT’S EYE」が大ヒットした『キャッツ・アイ』(日本テレビ系)などでおなじみの会社です。おしゃれなJポップ系のアーティストたちとの相性のいいアニメスタジオだと言えるでしょう。
ちなみに『名探偵コナン』の音楽を担当してきたのは、刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)のテーマ曲でもおなじみだった大野克夫氏です。劇場版の音楽も、大野氏が長年にわたって務めてきました。キャッチーな楽曲も、『名探偵コナン』が幅広い世代に支持されている大きな要因となっています。
人気歌手が歌うことがタブーだったアニメ主題歌
アニメの主題歌を人気歌手が歌うようになった遍歴は、日本のアニメ作品が市民権を得るようになった歴史でもあります。
1970年代までアニメ番組は「テレビまんが」と呼ばれ、ジャリ番(子ども向け番組)として芸能界では格下扱いされていました。アニメや特撮ドラマの主題歌は、レコード会社では「童謡」などと同じ扱いとなっており、そのため堀江美都子や子門真人といったアニソン歌手に任されることがもっぱらでした。
人気歌手がアニメの主題歌や挿入歌を歌うことはタブー視されていた時代が、1980年代までは続いていたわけです。その後、大きく成長を遂げたアニメ産業は日本を代表する文化となり、CDが売れない時代となった今では、人気アーティストたちがこぞって人気アニメとタイアップしたがるようになっています。
主題歌自体も、ずいぶんと洗練されたものです。主人公の名前や必殺技を連呼する「テレビまんが主題歌」で育った昭和世代にとっては、隔世の感があります。
「夏を待つセイルのように 君のことを ずーっと…ずっとずっと思っているよ」
ZARDの歌声はいつまでも若々しいままです。また、江戸川コナンも小学生のまま年を取りません。アニメの作品世界と違い、現実世界は自分も含めてずいぶんと変わったことを感じる今日このごろです。
(文=映画ゾンビ・バブ)