渦中のフジテレビ、かつての「世界名作劇場」YouTube無料配信好調で今後はアニメ強化路線が加速なるか

近年はYouTubeチャンネルを介して昔ヒットした往年の人気アニメ作品を期間限定で楽しめる機会が増えている。
そんな中、日本アニメーションが今年6月に創業50周年を迎えることを記念し、4月15日までの期間限定で『小公女セーラ』を全話無料配信して反響を呼んでいる。
1985年にフジテレビ系で全46話が放送された同作は、「世界名作劇場」シリーズの中でも名作の呼び声が高い。
80~90年代のアニメ事情にも詳しい芸能評論家の三杉武氏はこう語る。
「原作は児童文学の『小公女』ですが、2年ほど前に放送されて社会現象にもなったドラマ『おしん』の影響もあってか、主人公のセーラがほぼ全編にわたって壮絶なイジメを受けながらも健気に耐え忍ぶ姿が当時かなりの話題となりました。昭和天皇もご覧になっていたといった逸話もあるほどで、感動的な大団円となる最終回は最高視聴率27.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。下成佐登子さんが歌う主題歌『花のささやき』とエンディングテーマ曲『ひまわり』は作詞をなかにし礼さん、作曲を『青春時代』などで知られる森田公一さん、編曲を服部克久さんといった豪華メンバーが手掛けており、今もアニソンの名曲として多くの人に愛されています。ちなみに、アニメは海外でも放送され、とくにフランスでは視聴率20%を超えるほどの大きな反響を呼びました」
そんな同アニメの最終回である第46話が4月1日に配信されると、インターネットやSNS上では感動や喜びの声とともにこんな意見も見受けられたという。
「当時、『小公女セーラ』をはじめとした『世界名作劇場』シリーズが放送されていたフジの問題に関する第三者委員会の調査報告が発表されて間もないタイミングということもあってか、『フジも昔はこんな素晴らしいアニメを放送していたのに』や『フジ上層部は小公女セーラを見て心を入れ替えろ』、『バラエティーとかもういいから世界名作劇場のような良質なアニメを流せ』などといったコメントも見受けられました。『小公女セーラ』を子供時代に見ていた40代以上の視聴者を中心とした意見だと思いますが、当時のフジは『世界名作劇場』以外にも『タッチ』や『ドラゴンボール』、『キテレツ大百科』などの人気アニメをゴールデンプライム(GP)帯に放送していましたからね」(スポーツ紙の放送担当記者)
さすがに今のご時世、民放キー局がアニメ作品をGP帯に大量に放送するというのは無理筋だろうが、意外にも同局の局員はこう明かす。
「ウチの局にかぎってはあながち非現実的な話でもないかもしれません。ウチは過去に『ONE PIECE』の劇場版の特別バージョンを大晦日に放送したこともありますが、ドラマもダメ、バラエティーもダメと近年番組視聴率が苦戦している中、気を吐いているのは『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』、『ONE PIECE』、『鬼滅の刃』などのアニメ作品くらいのものですからね。それに加えて、今回の世間を揺るがす大問題を受けて清水賢治さんが新社長に就任しましたし、今後はますますアニメ依存が加速するだろうと局内ではもっぱらです」
周知の通り清水社長といえば、『世にも奇妙な物語』や『ショムニ』シリーズなどのドラマほか、『Dr.スランプ アラレちゃん』や『ドラゴンボール』、『ちびまる子ちゃん』などのアニメ作品をプロデュースし、大ヒットさせた立役者として知られている。
「清水社長のアニメ業界とのパイプは相当太いでしょうし、ドラマやバラエティーよりもアニメの方が世界的な市場で勝負ができるぶん、コンテンツビジネスも含めてより大きな実入りが期待できますからね。実際、『ONE PIECE』も『鬼滅の刃』も世界的な人気コンテンツになっていますし、すでに『ソニー・ミュージックエンタテインメント』や『エイベックス』グループなども以前からアニメに力を入れていますし。それに何よりもアニメのキャラクターはスキャンダルや不祥事も起こしませんし、ハラスメントの心配もありませんから(笑)」
清水社長を筆頭とした新たな経営陣により再生を誓うフジにアニメ黄金期が到来する日も近いかもしれない。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)