ダウンタウン不在でお笑い界の主役交代へ…千鳥が「大本命」に推される納得の理由

浜田雅功が体調不良で3月に休養を発表し、かねてから活動休止中の松本人志を含め、長らくお笑い界のトップに君臨していたダウンタウンが2人そろってテレビから消える事態になった。これを機に本格的な世代交代が進むと指摘され、お笑いファンの間では「ポストダウンタウン」が誰になるのかと注目されている。
そんななか、各メディアの「ポストダウンタウン」「ポスト浜田雅功」を予想するランキングなどで必ず上位に入っているのが、千鳥の大悟とノブだ。お笑い事情に詳しい芸能ライターの田辺ユウキ氏が、なぜ彼らが「ポストダウンタウン」の最右翼と目されているのかを解説する。
『水ダウ』浜田雅功の“代役”は…ダウンタウン不在の影響と代理MCの有力候補を分析
ダウンタウン不在…次の「バラエティ界の主役」は
ダウンタウンは、松本が「週刊文春」(文藝春秋)の報道に関する裁判のために活動を休止。昨年11月に松本が訴訟を取り下げて裁判は終結したが、いまだテレビ復帰の気配はなく、計画をぶち上げた独自プラットフォームの配信チャンネル「ダウンタウンチャンネル(仮)」の今後も不透明な状況だ。
一方、浜田は医師から「当面、静養することが望ましい」と助言されたことで3月に休養を発表。期限は決まっておらず、以前から深刻な体調不良説が報じられていたことから、こちらも現時点では復帰時期が見えてこない。ダウンタウンは13日開幕の大阪・関西万博のアンバサダーを務めていたが、これも辞退することになった。
松本の活動休止によって浜田がダウンタウンの冠番組などを守ってきたが、浜田の休養後は千鳥、かまいたち、フットボールアワーの後藤輝基らがMCの代役を担当。今後の展開次第では、ダウンタウンの番組が終了、もしくは彼らの冠を外し、新MCの番組に衣替えする可能性もあり、にわかに「ポストダウンタウン」競争が勃発している。
千鳥がポストダウンタウンに推される理由
そんななか、各メディアで「ポストダウンタウン」の最有力と盛んに取りざたされているのが千鳥だ。なぜ千鳥が最も支持を集めているのか、芸能ライターの田辺ユウキ氏はこう解説する。
「千鳥に対する多くの視聴者やお笑い芸人のみなさんの信頼の厚さが、ポストダウンタウンという呼び声につながっている気がします。千鳥は賞レースの審査はしていないものの、ABCテレビ『相席食堂』、ABEMA『チャンスの時間』など、いろんな芸人のロケやネタなどを見て評する立場にあります。3月に終了したフジテレビ系『千鳥のクセスゴ!』はまさにそういう番組でした。
千鳥自身がお笑いの世界で大成功を収めていること、そして千鳥が笑ったり、『おもしろい』と言ったりすればそれに同調・共感する視聴者も数多くいることなどから、芸人としては『そんな千鳥さんに自分たちのお笑いを見て欲しい』と思うのではないでしょうか。特に無名芸人や若手芸人はそこで高評価を得られると、『千鳥が認めた』という肩書きでブレイクの可能性が広がります。視聴者的にも芸人的にも信頼がかなり厚い、という部分で支持を集めているのだと思います」
「ポスト浜田」「ポスト松本」としても、ノブと大悟が支持を集めている。田辺氏は続ける。
「ポスト浜田雅功というところでは、同じツッコミのノブさんが大本命ではないでしょうか。ただツッコミとしてはタイプが全然違います。浜田さんはバイオレンスな言動でボケ芸人をコントロールしますが、ノブさんはワードセンスでボケ芸人を生かします。ノブさんの代名詞的なフレーズ『クセがすごい』はお笑い史に残るものになり、岡山弁丸出しの『○○じゃ』は駆け出しのツッコミ芸人にかなりの影響を及ぼし、一時期、『M-1グランプリ』予選1回戦を見にいくとノブさんみたいなツッコミが多数見られました。また、NSCの授業を取材したときも、ツッコミがノブさん風になっている生徒が多く、先生が『ノブくんみたいになってる』と指摘していました。それくらいのインパクトを与えたという点で、ノブさんがいろんなバラエティ番組を仕切るようになってもおかしくありません。
大悟さんはカリスマ性がありますよね。ただそれも、松本人志さんとはまた違ったカリスマ性です。大悟さんが『おもしろい』と言えば、視聴者的にもそれはおもしろいものなんだと感じさせる、説得力を持っていらっしゃいます。くわえて、志村けんさんにかわいがってもらっていたことも強みだと思います。やはり『あの志村けんが認めた』という事実が、大悟さんの存在をより大きくしているのでは。昭和芸人的な生きざまもそうで、誰も真似できないようなスタイルだからこそ、憧れも強まるはず。お笑い的なところでタイプが違うため、ノブさん、大悟さんがそれぞれポスト浜田雅功、ポスト松本人志というわけではありませんが、レジェンドになれる器ではあると思います」
ダウンタウンに通じる千鳥の「信頼感」
このままダウンタウンが座っていた「お笑い界の頂点」の座に千鳥が駆け上ることになるのか。田辺氏はその可能性についてこう論じる。
「今まであればダウンタウンの名前がキャスティングの一番手に挙がっていたような大型特番も、今、その座は千鳥になっているのではないでしょうか。コンビであれば、千鳥、かまいたち、バナナマン、オードリー、見取り図あたりが、大型特番のメインポジションとして『必ず挙がる名前』になっていると思います。そういうところに名前が挙がるのは、おもしろさだけではなく、共演する芸人やタレントとの関係性、そして番組進行を含む技術的なうまさなど、タレントとして総合力が高いということ。
あと、ダウンタウンの場合『ダウンタウンだったらどんな状況でもおもしろくしてくれる』という信頼感がありました。千鳥も『千鳥だったら大丈夫』と一任できる点で、たしかにポストダウンタウンにハマると考えられます。千鳥の数少ないウィークポイントは、賞レースで上位に食い込めなかったこと。第1期『M-1』で4度の決勝進出はすごいことですが、前述したかまいたち、バナナマン、オードリー、見取り図に比べると成績は劣ります。
一方で、笑い飯を取材したとき、千鳥がテレビで売れたことについて、哲夫さんが『千鳥があれだけテレビで売れてくれたのは自分にとってものすごく大きい。彼らはずっと一緒にやってきたし、おもしろいと思うものが似ていたから』と話していました。千鳥は上位の成績こそ残せませんでしたが、『ミスターM-1』と呼ばれた笑い飯が認める実力の持ち主ということで、今後、ダウンタウンのポジションに就いても異論は少ないのではないでしょうか」
(文=佐藤勇馬)
協力=田辺ユウキ
大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。