『M-1グランプリ』2位芸人の系譜──今、なぜ注目を集めているのか

9日放送の『かまいがち』(テレビ朝日系)に、おいでやす小田、バッテリィズ・エース、元和牛の水田信二、さや香・新山が出演。MCのかまいたちも含めて『M-1グランプリ』(同)で2位を経験している芸人が集結し、おいでやす小田にドッキリを仕掛けるという企画が放送された。
また12日の『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)では、バッテリィズ、小田のほか昨年の『M-1』で史上初の連覇を果たした令和ロマンの松井ケムリ、4位のエバースらが出演し「2位のあり方を考える会」という企画が放送されている。
毎年、その覇者をブレイクに導いてきた『M-1』だが、にわかに注目を集めている「2位」という存在。では、歴代の『M-1』2位芸人はその後、どんな足跡をたどっているのか、ここで振り返ってみたい。
雪辱を果たし王者に
過去20回行われている『M-1』で2位となった後に雪辱を果たし、見事に『M-1』王者となった漫才師は、意外にも3組しかいない。
最初にリベンジを果たしたのは2002年大会でますだおかだの後塵を拝し、2位に甘んじたフットボールアワー。吉本主導で始まった『M-1』の王座を早くも松竹芸能に“流出”させた形になったが翌03年に見事優勝の座をつかんでいる。その後フットボールアワーは06年にも2度目の優勝を目指して『M-1』にエントリーし、またしても2位となっている。
そのフットが優勝した03年と05年、そして09年と3度にわたって2位になっているのが笑い飯である。特に09年大会ではファーストステージに「鳥人」で審査員・島田紳助から100点を引き出すなど、誰もが優勝を確信する出来を見せたが、最終決戦の「チンポジ」で失速。パンクブーブーに優勝を譲っていた。
そんな笑い飯がついに戴冠したのが、旧『M-1』の最終年となった10年大会だった。9年連続ファイナル進出と、まさに『M-1』の顔役だった笑い飯だが、この年はスリムクラブとの接戦を制して有終の美を飾ることになった。
新『M-1』復活初年となった15年大会で2位に入ったのは銀シャリだった。10年にファイナルに進出し5位、『M-1』休止中の11年と13年に『THE MANZAI』(フジテレビ系)で決勝進出、12年には『キングオブコント』(TBS)でも決勝に進出するなど安定した実力を発揮してきた銀シャリだったが、この年は惜しくも敗者復活組のトレンディエンジェルにまくられて2位に。しかし、翌16年には最終決戦で和牛、スーパーマラドーナという関西の盟友を下して優勝を果たしている。
3年連続2位という苦悩
その16年に加えて翌17年はとろサーモン、18年は霜降り明星の優勝を真横で見送ることになったのが、昨年3月に解散した和牛だった。和牛は19年にファーストラウンドで敗退すると、出場権を残したまま『M-1』からの引退を表明。後のNGK大トリ、上方漫才大賞の受賞も確実視されるコンビだったが、その解散に『M-1』での未勝利が影響していたことは想像に難くない。ちなみにこの3度の2位、そのすべての最終決戦で松本人志は和牛に投票している。松ちゃんの中では、和牛が『M-1』スリータイムスチャンピオンだったということだ。
王者以上のブレイク
時に、1位より輝く2位を生み出してきたのも、また『M-1』だった。
04年、まるで彗星のように『M-1』2位をきっかけにメディアに躍り出たのが、南海キャンディーズだった。気持ち悪いメガネと巨大な女という特異なルックスに加え、山里亮太はワードツッコミというジャンルを生み出し、しずちゃんのワイルドかつ愛嬌あふれる存在感はバラエティを席巻、優勝したアンタッチャブルと同等か、それ以上のインパクトを残している。
08年、最終決戦を前にMCの今田耕司に「自信は?」と問われて、「なきゃ立ってないですよ、ここに」と即答した春日俊彰。オードリーというコンビの輝く未来が約束された瞬間だった。優勝こそNON STYLEに譲ったものの、その翌日から今日にいたるまで、オードリーは一度も沈むことなく売れ続けている。ブレイク当初は「じゃないほう」だった若林正恭もMCとしての地位を固め、ラジオでは東京ドームイベントで配信を含め16万人を動員。昨年の『M-1』では初の審査員席も経験している。
19年に2位となったかまいたちも、王者以上のブレイクといっていいだろう。同年、優勝したミルクボーイが在阪にこだわったこともあり、直後から東京での『M-1』需要を一手に引き受けていたかまいたち。23年にはフジテレビ系の超大型特番『27時間テレビ』でMCをつとめ、今や千鳥と並んで“天下”にもっとも近い場所にいるのは、誰もが認めるところだろう。
雪辱の権利が残るのは5組
『M-1』で2位を経験し、まだ結成15年以内という『M-1』エントリーの権利を残しているのは、おいでやすこが、オズワルド、さや香、ヤーレンズ、バッテリィズの5組。ユニットとして20年に2位に入り、以降の『M-1』に出場していないおいでやすこが以外は、今年もエントリーしてくる可能性が大いにありそうだ。特に、昨年不出場だったさや香の再挑戦には期待したいところである。
そのほか、01年2位のハリガネロックは解散し、07年のトータルテンボスは『THE SECOND』(フジテレビ系)に参戦しつつも悠々自適、10年2位のスリムクラブも元気そうだ。
果たして今年の年末にはどのコンビが「2位」になるのだろうか?
(文=新越谷ノリヲ)