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東野幸治の“緊急参戦”で再評価された『サンデー・ジャポン』のキャスティングセンスと番組Pの思想

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東野幸治(写真:サイゾー)

 お笑いタレント・東野幸治が長年MCを務めたフジテレビ系『ワイドナショー』(フジテレビ系)の終了からわずか1週間後の4月6日放送のTBS系『サンデー・ジャポン』に緊急参戦して話題となっている。

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 両番組はこれまで裏番組同士としてライバル関係にあっただけに、何とも意外性のあるキャスティングだが、番組冒頭にMCの爆笑問題・太田光が「ワイドナショー、始まりました!」とボケると、東野は「終わった。終わった。先週終わった!」とツッコミを入れて、すかさず太田が「節操ないね!」と返した。

 ライバル局からの“移籍”をジョークにし、サンジャポ流の歓迎を見せた格好だ。

 芸能ジャーナリストの平田昇二氏は語る。

「『サンジャポ』のMCを務める太田さんと『ワイドナショー』のMCを過去に担当していた『ダウンタウン』の松本人志さんはまだ2人がトガッていた時の因縁などもあり、不仲説や共演NG説が業界内でも長らく囁かれ続けていました。

 実際、共演を避けていた時期もあったようで『笑っていいとも!』の最終回特番の際には松本さんと『とんねるず』の石橋貴明さんの共演よりも、松本さんと太田さんの鉢合わせの方に肝を冷やした業界関係者も多かったです。

 しかし、その後は太田さんの妻で所属事務所の社長でもある太田光代さんの尽力などもあり、関係性は改善して特番などで共演する機会もありました。とはいえ、『サンジャポ』と『ワイドナショー』については人気芸人がMCで時事ネタを扱う裏番組同士ということで出演者、番組スタッフとも意識し合っていたでしょうし、松本さんの後を受けてMCを務めていた東野さんも当然、『サンジャポ』の存在は気にしていたはずですからね」

 そんな中、4月6日放送の『サンジャポ』に出演した東野は、番組内でフジと中居正広氏の問題を巡る真面目な議論に参加し、真剣な表情を見せる場面も。

 とりわけ“東野らしさ”が出たのは、吉本興業のオンラインカジノ問題に話題が移った時のことだ。

 吉本芸人の実名報道を引き合いに「吉本は名前を出したでしょ。『タイタン』はどうすんの?」と、『爆笑問題』の所属事務所の名前を出して斬り込み、これには太田も「出さないです。出さないです」としどろもどろに。

 この2人のやり取りにインターネットやSNS上では「東野さんの攻め方、『サンジャポ』に合いすぎ」や「東野がサンジャポになじみすぎていて違和感ゼロ」といった声も見受けられたが……、民放テレビ局の番組プロデューサーは明かす。

「今回は東野サイドが(番組に)出たがったというのが経緯のようです。それでも、“裏番組だったMCが翌週に登場”という構図を即座に作ってみせた『サンジャポ』の対応力はさすがでした」

 こうした絶妙なキャスティングセンスは、これまでにも『サンジャポ』の武器として業界内外からは評価されてきた。

 過去にはYouTuberでありながらタレントとしても活躍するフワちゃんを、彼女がメディアに出はじめた2019年にさっそくレギュラーに起用。

 また、ミュージシャンの清春が政治を語る場を作ったり、女性枠では“数学全国統一模試1位”の名門大学出身アイドル・塩見きらや“ミス東大2020グランプリ”に輝いた現役の東大院生である神谷明采などユニークな肩書のタレントを起用。

 同番組の出演をキッカケにブレークを果たしたタレントも少なくない。

「『サンジャポ』はクセの強い新人や文化人など、出演者の“型破りさ”を恐れず、むしろ活かす演出が得意。ネット文化との親和性も高く、リアルタイムでの反応がすぐに話題になる。結果としてゲストの知名度や好感度を一気に押し上げることにも繋がっています」(テレビ誌ライター)

 こうした巧みなキャスティングの裏には、番組プロデューサーによる独自の選考哲学があるようだ。

 同番組のチーフプロデューサー・久我雄三氏は、過去のインタビューで「出演者は事前に必ず1時間程度、実際に会って話す」と明言しており、たとえ有名な文化人やインフルエンサーであっても、単に話題性だけで判断しないというスタンスを貫いているという。

 むしろ重視するのは、その人の“背景”であり、「どんな子どもだったか」や「いじめられた経験はあるか」、「恋愛は長続きする方か」など個人の内面まで丁寧に掘り下げ、視聴者がその人物に少しでも共感できるような“人となり”を見極めたうえで、出演を決めていると明かしている。

「視聴者の9割に反発されても、1割が深く共感してくれればそれでいい。そういう考え方でキャスティングしているという話を聞いた時は衝撃でしたね。つまり“最大公約数”ではなく、“最小共感数”に賭けるスタイル。だからこそ尖ったゲストや異色の文化人でも平気で起用できる。これは他局などにはなかなか真似できない芸当です」(前出のテレビ誌ライター)

 東野の緊急参戦は、そうした『サンジャポ』の哲学と制作力の結晶とも言えるかもしれない。

 同番組は『ワイドナショー』の終了により、ますます“カルチャー融合型バラエティ”として日曜日の話題を独占していきそうだ。

東野幸治の呪い

(取材・文=サイゾーオンライン編集部)

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最終更新:2025/04/16 22:00