『ガンニバル』での冷酷で残酷な演技が光る中島歩 『ふてほど』教師役とのギャップと重宝されるポジション

柳楽優弥が主演を務めるドラマ『ガンニバル』シーズン2が、3月からディズニープラスで配信されている。激しいバイオレンスと目を覆いたくなるような残酷描写が多く、日本の作品とは思えないハイテンションさで好評を博している、
二宮正明による同名漫画を原作とする同作品、供花村(くげむら)という山間地域の小さな村に駐在として赴任してきた阿川大悟(柳楽優弥)が奇妙な事件に巻き込まれ、ついには村を支配する後藤家との凄惨な戦いに飛び込んでいくという物語だ。素手による殴り合いをはじめ、猟銃で人を撃ち殺したり、文字通り“人間を食う”描写が登場したりするなど、とにかくハードなバイオレンスアクションとなっている。
完結編となるシーズン2は、日本のディズニープラスにおいて、過去最速で100万時間視聴を達成。多くの視聴者の心を掴んでいる。
荒々しい登場人物が多い『ガンニバル』のなかでひときわ狂気にあふれているのが、シーズン2から登場した後藤理というキャラクターだ。一族の忌まわしき伝統を守るためには人殺しも厭わない後藤家の面々の中で、特殊工作員のように神出鬼没で現れては、次々と後藤家に逆らう者たちを葬り去る。濡れたボサボサの長髪にメガネとマウンテンパーカーという、いかにも怪しげでワイルドな風貌で、冷酷かつ楽しむかのように反駁者を処刑するサイコパスである。
その役を演じているのが、俳優の中島歩だ。現在36歳の中島は、2024年にTBS系で放送された金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』で、昭和時代の若き中学教師・安森をコミカルに演じたことでも話題になった。
小説家・国木田独歩の玄孫にあたる中島は、日本大学藝術学部在学中にモデルとして芸能活動をスタート。2013年には美輪明宏主演の舞台『黒蜥蜴』のオーディションに合格し、俳優デビューを果たし、翌年にはNHK朝ドラ『花子とアン』にも出演した。
その後、映画やドラマを中心にキャリアを重ね、2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』にも出演。2026年の『豊臣兄弟!』では浅井長政を演じることが決まっている。そのほか、第76回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に選出された中国映画『サタデー・フィクション』や、香港映画の『ANITA』など、海外作品でも活躍している。
今こそ求められる「昭和顔」
『ふてほど』で見せたコミカルな役柄から、『ガンニバル』での狂気的な役柄まで、幅広くこなす中島。追い風を呼び寄せている理由は、その唯一無二の独特な存在感だ。
ドラマ評論家の吉田潮氏は中島について、「バタ臭い昭和の二枚目で、“トレンディ”ではないからこその安心感・安定感がある」と見る。
「キラキラして女性受けする今ふうの“イケメン”ではなく、老若男女がハンサムと認めざるを得ない正統派の整った顔立ち。流行に左右されないルックスで、昭和やそれ以前の時代が設定されている作品にドハマリします。中国映画や香港映画など、顔の濃さがアジア受けするのも頷けます」(吉田氏)
濃い顔面に加え、身長186センチという体躯の良さは黙っているだけでも圧があり、ともすればその“隙の無さ”が俳優としては仇となる。しかし中島は、鈍く静かな佇まいで、その圧を自然に消していると言ってもいい。
「24年のヒットドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)では、主人公を演じた目黒蓮の職場にいる、事なかれ主義の先輩役でした。今期のNHK朝ドラ『あんぱん』では、モデルであるやなせたかしさんの妻・のぶの最初の結婚相手役です。ものすごく目立つ役ではないのに、気がついたらいつも主役を支える立ち位置にいる。自分が自分が、と前に出る欲を感じさせず、何気なくその辺にいるキャラとして溶け込むんですよね」(同)
そんな中島が俳優としての新境地を開いたのは、やはり前述『不適切にもほどがある!』の垢抜けない教師役だ。
「有無を言わせないスペックが前提にあるので、どこか外した役どころでそのギャップが魅力として光ります。二枚目がただただ二枚目の役をやっても面白くない。その意味で、『ガンニバル』で見せる狂気が視聴者の心を捉えるのも納得です」(同)
36歳にして昭和顔の中島。吉田氏は「今後年齢を重ねるにつれて渋みが増すでしょうから、俳優としてはむしろこれから。長く重宝されるポジションを極めてほしい」と期待を寄せる――。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)