中居正広が消えて新装開店の『タミ様のお告げ』、お手軽な街頭インタビュー中心構成で『月曜から夜ふかし』の…

中居正広の引退によってわずか6回で終了した、TBS系バラエティ番組『THE MC3』。中居、ヒロミ、東野幸治がMCを務めたが、現在、放送枠はそのままに『タミ様のお告げ』とタイトルを変え、ヒロミと東野の2人がMCを務める形で継続している。なんとか衣替えを図ったものの、早くもその内容には不安が漂っているようだ。
『THE MC3』から引き続き“日本一「余計なお世話」バラエティ”というコンセプトの同番組は、さまざまなテーマでアンケートを実施し、その結果をスタジオの出演者たちがウォッチするという内容。ゲスト出演者が「これなら自分がランクインするだろう」というランキングを考案し、実際に調査。結果は街頭インタビューとともに発表され、出演陣がリアクションする。
たとえば、4月14日放送回の前半では、後藤真希が「衝撃を受けたアイドルは?」というテーマを考案。昭和から令和にかけての人気アイドルたちの映像とともにランキングが発表された。また、番組後半では「タミ様女子がおじさん認定する瞬間」というテーマで、若い女性を対象にアンケートを実施し、その結果を発表した。スタジオでは、ヒロミ、東野のほか、ゲストの間宮祥太朗、田中樹らが、自らが“おじさん”かどうかについてトークを展開した。
「街頭インタビュー」に潜む「不適切編集」
芸能人にスポットを当てるだけでなく、社会的なトレンドにも注目する『タミ様のお告げ』だが、“アンケート”という手法に不安要素があるのは否めない。というのも昨今、街頭インタビューで構成する番組における“不適切編集”が大きな問題になりやすいのだ。
日本テレビ系『月曜から夜ふかし』では、3月24日放送回において、街頭インタビューに応じた中国出身の女性が「中国ではカラスを食べる」と発言したかのように編集した内容を放送。しかしこれは、制作スタッフが意図的に編集したものだったことが発覚し、謝罪に追い込まれたうえ、同番組は放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会の審議入りとなった。
フジテレビ系『チャンハウス』も、街頭インタビューでの意図時な編集にまつわるトラブルが、「女性セブン」(小学館/2025年4月17日号)で報じられている。「令和の小学生の間でどんな子がモテる?」というテーマで行われた街頭インタビューで、1人の小学生が自身の恋愛観を語ったが、その内容の一部が切り取られて強調・編集されていたという。インタビューに答えた小学生サイドから番組へ抗議があり、社内調査の結果、不適切な編集があったと判明したという。
行き当たりばったりの街頭インタビューは、確実に「面白い」ものが撮れるかどうかがわからない。仮に制作サイドの思うような撮れ高が上がらなかった場合に、不適切な編集に陥りやすい側面があるのだ。外注の制作会社が請け負っているケースも多く、面白いVTRを作らないといけないというプレッシャーも不適切編集に拍車をかける。局側と制作会社との間で情報共有が行き届かず、チェックが甘くなることもある。街頭インタビューは不安材料が多いのだ。
なぜ、「街頭インタビュー」メインの番組が増えているのか
不適切編集の危険性があるにもかかわらず、街頭インタビューはなぜ重宝されているのか。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は、「お金がない時の手軽な演出」であることに加えて、「SNS時代」のパラドックスを指摘する。
「芸能人をロケに出せばお金がかかりますが、街頭インタビューは外注のスタッフが稼働するだけでいい。彼らは時給ではなく、一番組にいくらという費用なので、街頭インタビューがとれるまでかかる時間が1時間でも5時間でも局が支払う金額は変わりません。撮れ高がなかった時に、恣意的な編集をしてしまうスタッフがいるのは容易に想像ができます。しかもSNS時代には面白い素人のほうがウケや共感性が高く、バズる可能性も大きい。
一方で、制作側の感覚がズレていることが往々にしてあります。番組として盛り上げようと思って茶化した結果、相手を傷つけ、SNSで炎上するケースもある。今はテレビ映像もあっという間に切り抜かれるので、相手にとってデジタルタトゥーにならないように細心の注意が必要です」(鎮目氏)
SNSでのバズりを狙った結果、「炎上」するリスクも大きくなるということ。ただし勝手な編集をすれば、インタビューされた側から苦情がくることは想像できそうなものだが……。
「業界としてよくないところは、“放送”=“送りっ放し”という考え方がいまだに根強いところです。つまり、自分たちが放ったものが、今の世の中でどう受け止められるか、またどう波及するかに想像が至らない。『夜ふかし』の件も、テレビ番組に関わる人たちは、“あーあ、やっちゃったな”という程度の他人事感だと思いますよ。
ただ本来は、数年前の映像が今掘り返されることも当たり前の時代において、コンプラだってどんどん厳しくなるなか、“あの時あの番組はこうイジっていた”といったことがいつ指摘されるかわからない。面白くなるから、刺激的な議論を呼べるからといった発想は非常に危険です。安易な演出は絶対にやめたほうがいい」(同)
街頭インタビュー主体の『タミ様のお告げ』がいかにして面白い番組を作っていくのか。制作スタッフの手腕が試されている。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)