石橋貴明、過去のセクハラ行動の裏で今も芸能界で語り継がれる「とんねるず」の功績

とんねるずの石橋貴明が大きな岐路に立たされている。
芸能界を引退した中居正広氏とフジテレビを巡る性加害問題が世間の耳目を集める中、第三者委員会による調査報告書の公表を受けて、石橋の過去にもスポットが当たることとなった。
調査報告書では重要な類似事案の一つとして10年以上前、会食に参加したフジの女性社員が有力な番組出演者と2人だけにさせられ、セクハラ被害を受けた事案が記載されていたが、「週刊文春」(文藝春秋)はこの「有力な番組出演者」が石橋だと報じた。
この報道を受けて石橋はコメントを発表して「深酒していたためか、覚えていないのが正直なところ」としつつ、「不快な思いをさせてしまったことを、大変申し訳なく思っています」と謝罪した。
インターネット上では「この言い訳は言っちゃいけないヤツ」、「政治家の『記憶にございません』と同じ」などといった批判や「昔のモラルはめちゃくちゃだったんだから仕方ない」といった擁護する意見もあり、さまざまな声が飛び交っている。
そんな中、「石橋個人への評価と、とんねるずとしての功績は切り分けるべき」といった意見もなくはない。
「確かに石橋と木梨憲武が築いた“とんねるずブランド”は単なるお笑いの枠を超えていますからね。特に音楽での功績を高く評価する向きも多い。これまで植木等やドリフターズ、さらにはザ・ぼんち、ビートたけしらレジェンドが開拓した芸人→歌唱という流れが確かにありましたが、作詞家の秋元康氏の後ろ盾を得たとんねるずのブレイクは印象的でした」(芸能事務所マネージャー)
1984年にリリースした「一気!」は当初こそ注目されなかったものの、口コミとメディア露出で徐々に注目を集め、最終的にはオリコンランキングで19位にランクイン。その後の「雨の西麻布」では同ランキングトップ5入りし、約22万枚のセールスを記録する大ヒットに。
芸能ジャーナリストの竹下光氏は語る。
「とんねるずといえば、他にもオリコンシングルランキングで1位を獲得した『ガラガラヘビがやってくる』をはじめ『情けねえ』、『がじゃいも』、『一番偉い人へ』などのヒット曲を世に放っています。また、音楽ユニット野猿としても活動し、とんねるずとしては91年に『情けねえ』で1回、野猿として99年から2年連続で2回『NHK紅白歌合戦』にも出場しています。18年3月に『とんねるずのみなさんのおかげでした』が前身番組も含めて約30年の歴史に幕を下ろした最終回では、とんねるずの2人が『情けねえ』を熱唱し、当時はかなり話題になりましたね」
また、一般人を巻き込んだ“素人芸”を取り入れた企画の数々も印象深い。番組制作会社スタッフはこう話す。
「一般人に無理をさせるような演出ではなく、自分たちが体を張って笑いに変える形での“素人いじり”のスタイルは、のちのリアリティ番組や街ブラ系バラエティの原型なのかもしれません。それに、『とんねるずのみなさんのおかげです』で放送された『仮面ノリダー』など、手の込んだ“パロディ”企画も多く、今なお他の番組に影響を与え続けています。時代的にそのまま再現するのは難しいですが、あの空気を作った功績は大きいですよ」
現在、石橋はがんの治療に専念しており、芸能活動を休止中。
復帰の目処は立っておらず、今回の報道により石橋のみならず、とんねるずがテレビから完全に消える可能性も否定はできない。
「今も昔もセクハラは断じて許されることではありません。だだその一方で、現実的にはセクハラのみならず、パワハラなども日常的にまかり通っていた10年以上前のテレビ業界での話ですし、石橋さんが報道に迅速に対応して罪を認めて謝罪したことなどもあり、“大炎上”には至っていない印象です。加えて、元々好感度を武器にしているようなタイプのタレントでもないですからね。とはいえ、ここまで明確に『過去にセクハラをした人』といったイメージがついてしまうと、今後のテレビでの活動については少なからぬ影響が出てきそうではありますよね。テレビ業界自体の有り様も昔とは変わってきていますし」(前出の竹下氏)
果たして石橋が今後どのように過去と向き合い、どのような形で表舞台に戻ってくるのか。
そして、「とんねるず」という“伝説”が、これからの時代にどんな風に語られていくのか注視していきたいところである。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)