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浜田雅功、15年ぶり俳優復帰報道 俳優業もこなす「演技うまい芸人」が増加中

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浜田雅功(写真:サイゾー)

 ダウンタウンの浜田雅功が、Netflixドラマで15年ぶりに俳優復帰すると報じられた。浜田は売れっ子のお笑いタレントであると同時に、多くのヒットドラマに出演してきた「俳優もできる芸人」の先駆け的存在でもある。近年は浜田のように俳優業をこなす芸人が増加傾向にあり、本職の俳優顔負けの演技派が続々と現れている。

 なぜ演技ができる芸人が増えているのか。その背景や注目の「演技うまい芸人」について、お笑い事情に詳しい芸能ライターに話を聴いた。

筋肉芸人のバラエティ需要が高い理由

浜田らが切り開いた「俳優芸人」の道

 浜田はダウンタウンとして活躍する一方、90年代からTBS系『ADブギ』、同局系『人生は上々だ』、日本テレビ系『竜馬におまかせ!』など数々のドラマに俳優として出演。2010年のテレビ朝日系『検事・鬼島平八郎』を最後にドラマ出演が途絶えていたが、発売中の「女性自身」(光文社)によると、宮藤官九郎氏が脚本を担当するNetflix制作のオリジナルドラマで15年ぶりに俳優復帰することが決まったという。

 主演の役所広司のライバル役だといい、撮影開始は今夏の予定で海外ロケも控えているというから、かなりスケールの大きな作品になりそうだ。

 浜田は演技力の高さに定評があり、『竜馬におまかせ!』の脚本を手がけた三谷幸喜氏は、テレビプロデューサーの佐久間宣行氏のYouTubeチャンネルに出演した際、「お笑いの方で役者といったらもう、この人はトップ中のトップ」と浜田を絶賛していた。

 ただ近年は、浜田に負けないほどの演技巧者の芸人が増加中だ。ドランクドラゴンの塚地武雅、ネプチューンの原田泰造、東京03の角田晃広、ハナコの岡部大、アンジャッシュの児嶋一哉、マキタスポーツら定番の「演技うまい芸人」をはじめ、TBS系『水曜日のダウンタウン』からブレイクしたピン芸人・ひょうろくがNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の追加キャストに抜擢されるなど、新勢力も台頭してきている。

なぜ演技力の高い芸人が増えているのか

 俳優業をこなす芸人が増えている理由について、お笑い事情に詳しい芸能ライターの田辺ユウキ氏はこう分析する。

「お笑いの賞レースが充実してきたことが大きな理由かと考えています。ネタのおもしろさやストーリー性だけではなく、それを表現するための演技力がないと、賞レースで勝ち進むことが難しくなってきました。そのためお笑い芸人たちは、なにかになりきる=演じるということにも力をいれるようになったのではないでしょうか。

 賞レースが主流になった昨今のお笑いシーンでは、勝つためにはすべての面でクオリティの高さが求められるようになりました。ネタだけがおもしろくてもダメ。そういったことから、芸人たちの演技力も年々向上していっているのではないでしょうか。また、そうやって身についた演技力が着目され、俳優としてのオファーにつながっているのだと考えます」

 昨今のお笑い界では、演技自体が笑いの武器になることもあるという。田辺氏が続ける。

「ネタだけではなく、『演技』で笑わせるという方法も見られるようになってきました。たとえば、2022年の『ABCお笑いグランプリ』では、かが屋の演技力が高く評価されました。かが屋のそのネタでは、喫茶店で働く女性店員と彼女に想いを寄せる男性店員(加賀翔)のやり取りが描かれ、客(賀屋壮也)が女性店員にちょっかいをかけ、男性店員と小競り合いに。体の震えが止まらない男性店員ですが、その震えは『10連勤中なので』と働きすぎを理由にするなど小物感いっぱい。しかし女性店員が機転を利かせて、客を追い払います。

 このネタでは、男性店員=加賀、客=賀屋なので、主要人物の女性店員は“透明人間”でした。しかし、女性店員の姿がちゃんと見えてくるほど、2人の演技のうまさが光っていました。そんな抜群の演技力に対し、審査員の山内健司さんは「『演技おもろい』という新しいジャンルになっていた。あと、ボケました?」とコメントしたんです。つまり、はっきりとしたボケを組み込まなくても、人間の内面や生理現象を演技として見せるだけで笑いが成立することをあらわしていたのです」

識者が挙げる注目の「演技うまい芸人」

 お笑い賞レースの盛り上がりやネタの変化が「演技うまい芸人」の増加に影響していたようだ。お笑い界への造詣が深い田辺氏に演技力の高い注目の芸人を挙げてもらった。

「一般的にあまり俳優として活躍しているイメージはありませんが、ロバートの秋山竜次さんはものすごく演技が上手い。秋山さんは“形態模写”のタイプですが、役への没頭度がすさまじい。私は2020年に秋山さんをインタビューしましたが、そのときの取材内容は、秋山さんがさまざまなクリエイターに扮する企画『クリエイターズ・ファイル』のキャラクターの一人、世界的なファッションデザイナーのYOKO FUCHIGAMIについてでした。

 秋山さんはYOKO FUCHIGAMIについて語るとき、そのキャラクターを完全に憑依させるんです。最初の30分くらいは秋山竜次としてしゃべってもらっていたのですが、こちらが『ここからはYOKO FUCHIGAMIの話で』と振ると、『じゃあYOKO FUCHIGAMIになりますね』と言い、完全に人格を切り替えてしまいます。そこからは、私の前にいたのは紛れもなくYOKO FUCHIGAMIでした。そうやって完全にキャラクターになりきるという点では、秋山竜次さんは相当すごい方だと思います。ただ、それを『演技』と考えるかどうかは難しいところですが」

 秋山はNHK大河ドラマ『光る君へ』などにも出演しているが、今後さらに「憑依型の俳優」として覚醒していく可能性がありそうだ。田辺氏は他にも注目の「演技うまい芸人」がいると語る。

「演技力という部分では、同じくロバートの山本博さんがすばらしいです。映画『アンダードッグ』(2020年)は、助演男優賞の候補にならないのが不思議なくらいの名演でしたから。同作で山本さんは、ボクシングの元日本ランカー(森山未來)に挑む売れない芸人ボクサー(勝地涼)のセコンドにつく、先輩ボクサーを演じました。最初は売れない芸人ボクサーの態度に反発していましたが、ボクシングに本気でのめり込んでいく彼と接し、山本さん演じる先輩ボクサーの気持ちにも火がついていきます。

 山本さん自身もボクシングのライセンスを持っていることもあって役に感情移入しやすかったはず。胸を熱くするような見事な助演で、同作は決して目立ったヒットになりませんでしたが、それでもその年を代表する傑作で、それはメインキャストの熱演によるものが大きいですが、山本さんの俳優としてのポテンシャルの高さも見逃すことはできません。

 あと、かもめんたるの岩崎う大さんは、俳優がお笑いをやっていると言ってもいいくらいうまい。劇団かもめんたるを主宰し、『岸田國士戯曲賞』の候補にも挙がったほどですから、屈指の演劇人であることは確かです。2013年の『キングオブコント』の優勝ネタである『白い靴下』では、人をイラつかせる下っ端男を演じましたが、喋り方がまさにそういう雰囲気を醸し出している。コントの中で語られますが、その下っ端男が『偉いお坊さんに蹴られた』という経験を持つことに納得できてしまうんです。岩崎さんは、そういうおかしなエピソードも『こいつならやりかねない』と感じさせるキャラクター作りをしてくる。特に『台詞回しの達人』であると思っています」

(文=佐藤勇馬)

協力=田辺ユウキ
大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。

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佐藤勇馬

1978年生まれ。新潟県出身。SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。著書に『ケータイ廃人』『新潟あるある』がある。

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最終更新:2025/05/16 09:00