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『波うららかに、めおと日和』人気も「見逃し配信はFOD」民放自社配信だけという目論見

『波うららかに、めおと日和』人気も「見逃し配信はFOD」という不安材料 「自社配信だけ」に懸念される視聴者離れの画像1
芳根京子(写真:Getty Imagesより)

 この春の地上波テレビにおける連続ドラマの中で、回を追うごとに人気が拡大しているのが、フジテレビ系『波うららかに、めおと日和』(毎週木曜よる10時~)だ。

「目新しい設定」と「朴訥なフレッシュさ」

 西香はちの同名漫画を原作とする本作は、昭和初期を舞台に、芳根京子演じる純粋な女性と本田響矢演じる海軍中尉の新婚夫婦による初々しい姿を描く。異性との交流に慣れていない2人のピュアな恋愛模様に、多く視聴者がのめり込んでいる。

 TVerのお気に入り登録者数は、5月26日の時点で約99万。初回放送時点では20万にも届かない数だったのに、飛躍的にファンが増えていることが分かる。放送前から話題だったTBS系日曜劇場『キャスター』をすでに抜き去り、110万を超えるフジテレビ系『続・続・最後から二番目の恋』とTBS系『対岸の家事 ~これが、私の生きる道!~』に迫る勢いだ。

 また、TVerにおける5月15日放送第4話の「いいね」の数は約4万6000件。5月13日放送の『対岸の家事』第7話の「いいね」が約2万1000件であり、2倍以上の「いいね」がついていることとなる。まさに『波うららかに、めおと日和』には熱心な視聴者がついていると言えるだろう。

「FOD」という不安要素

 ただし、今後は不安材料もある。というのも、第1話から第3話は、TVerで長期間の無料視聴が可能だが、第4話以降はTVerでの無料視聴期間が放送から1週間限定。つまり今後はTVerで後追いするのが難しくなるというわけだ。

 昨今は、地上波ドラマが放送期間中にサブスク配信されるのも当たり前となっているが、『波うららかに、めおと日和』の第4話以降は、フジテレビの有料サブスク「FOD」でのみ配信されている(最新話を除く)。当然、フジは『波うららかに、めおと日和』によってFODの加入者増加を促したいという目算はあるだろう。実際、2022年に放送された川口春奈主演『silent』がヒットした際には、同作を配信していたFODの加入者数が一気に増えたということもあった。

ただし、自社配信だけでの展開は“賭け”でもある。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏が、そもそも論として「民放の自社配信サービス」の位置づけを解説する。

「民放による自社の配信媒体は、若手の挑戦の場という位置づけも担っています。FODはオリジナルドラマがたくさんあるのが大きな特徴で、ドラマに強いフジ・メディアHD子会社・共同テレビの若手育成にもつながります。ただどうしても低予算になるのは事実で、オリジナルドラマだけで会員を増やすのは難しい。そこで、地上波の人気ドラマを会員獲得のための導線として機能させる。そのため、地上波ドラマのスピンオフを配信だけで展開したり、放送よりも早く配信したりといった形で付加価値をつくっているわけです」

 自社配信サービスでは、他社のプラットフォームと組むケースも多い。TBS・テレビ東京・WOWOWの合同配信サービスであった「Paravi」はU-NEXTの子会社となり、同サービスに組み込まれた。日本テレビは、かつて「日テレオンデマンド」という配信サービスを行っていたが、現在はHuluだ。テレビ朝日は、KDDIとの合弁事業「TELASA」やサイバーエージェントとの合弁事業「ABEMA」で番組を配信し、さらに「テレ朝動画」というサービスもある。そうしたなか、FODについては他社プラットフォームとは組まない、独立系の配信サービスを保っているが――。

「自局のコンテンツがメインであり、さらに地上波の人気番組から誘導しなければならないとなると、もはや自転車操業です。しかも自局コンテンツということは、NetflixやAmazonプライムビデオに比べると予算が少なく、見劣りする。

 結局、問いただすべきは“毎月お金を払ってもらわなくてはいけないほどのコンテンツがあるのか”ということに尽きます。複数のサブスクに加入している人も多いなかで、テレビ局のサブスクは選んでもらえるレベルなのか。仮にヒットした地上波ドラマがあったり、話題性の高いオリジナル作品があったりしても、それを観たら解約してしまう人も多いのではないでしょうか」(同)

 Netflix、Amazonプライムビデオ、ディズニープラスなど、世界的に支持されているサブスクサービスでは、継続して契約させるために多額の予算をかけたコンテンツを大量に投入している。“しょせん”日本のテレビ局が手がけるサブスクサービスには、なかなか真似できないことだ。

「やはり地上波テレビ向けのコンテンツとネット配信向けのコンテンツは、別物なんですよね。地上波は老若男女に支持されなくてはいけませんが、配信向けのコンテンツは特定の層に強烈に刺さる必要がある。そういう意味では、『地上波の番組をネット配信に使い回そう』とか、『ネット配信は地上波番組の二次利用先』と考えている限りは、自社のサブスクサービスは絶対に成功しません。

さらに、テレビ局は導線の作り方が苦手です。というのも、テレビ局は基本的に『番組をつくって放送すれば見てもらえる』という思い込みが強い。一方配信コンテンツは、制作はもちろんPRにおいてもなんとかして見てもらおうという創意工夫を凝らします。そういう部分で、他社と手を組むのは選択肢として有効だろうと思います。あくまでも、ネット配信はネット配信として、地上波とは切り離して考えないと本当の成功はないでしょう」

 Xには、『波うららかに、めおと日和』のためにFODの有料サービスに加入しているという声がある一方で、〈FODに入るしかないの!?〉と否定的な声もある。自社配信にこだわるがあまり、ファンの取りこぼしにならないといいが……。

『波うららかに、めおと日和』が『日本一の最低男』超え

(取材・文=サイゾーオンラン編集部)

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最終更新:2025/05/29 12:00