『波うららかに、めおと日和』の人気が拡大中 “固定ファンのいる俳優”を起用しなくてもSNSで盛り上がる理由

地上波ドラマがヒットするには、SNSでの盛り上がりが欠かせない今の時代。この春ドラマの中で特にSNSでの支持率が高いのが、フジテレビ系ドラマ『波うららかに、めおと日和』(以下『めおと日和』)だ。
本作は昭和初期の日本を舞台に、交際ゼロで結婚した夫婦のウブな恋愛を描くラブコメディー。主人公であるピュアな新妻・なつ美を芳根京子が演じ、その夫である海軍中尉・瀧昌を本田響矢が演じている。
放送のたびに、SNSでは「#めおと日和」「#なつ美ちゃん」「#瀧昌さま」といったハッシュタグとともに、リアルタイムでたくさんの感想が投稿。第3話が放送された5月8日には、「#めおと日和」がXの世界トレンド1位になったほか、「#なつ美ちゃん」「#瀧昌さま」も毎回のようにトレンド入りを果たしている。
さらに、TVerでの再生回数も好調で、4月24日放送の第1話は1か月を待たずに累計390万再生を突破。以降もコンスタントに200万回以上再生されている。エンタメウォッチャーの大塚ナギサ氏は、この『めおと日和』のネット上での盛り上がりについて、このように説明する。
「注目すべきは、TVerでの“お気に入り登録数”と“いいね数”です。5月23日時点での『めおと日和』のお気に入り登録数は95.3万件、いいね数は第1話が7.6万件、第2話は6.7万件、第3話は5.7万件です。一方、同じくフジテレビ系『続・続・最後から二番目の恋』は、お気に入り登録数が123.8万件と『めおと日和』を上回っているにもかかわらず、いいね数はアベレージで2万~3万件ほど。つまり『めおと日和』は視聴者の満足度が高いということ。それだけ熱心なファンが増えているということでもあり、かつて多くの“OL民”と呼ばれる熱心なファンを生み出した『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)を彷彿とさせます」
SNSでの盛り上がりを狙う場合、元々“固定ファン”を多く抱えている俳優のキャスティングが有効だとはよく言われることだ。それこそSTARTO ENTERTAINMENTに所属する男性アイドルなど、人気ボーイズグループのメンバーが出演するドラマはSNSで盛り上がりやすい傾向にある。
しかし『めおと日和』については、特にそういった“固定ファン”を多く抱える俳優を起用しているわけではない。本田響矢にしても、ゴールデン・プライムタイムの連続ドラマでの準主役は今回が初めてであり、本作でその存在を知った視聴者も少なくないだろう。
ただし、むしろ固定ファンが多い俳優を起用していないからこそSNSで跳ねたとの見方もある。
「アイドルグループのメンバーなど、固定ファンが多い俳優の出演がSNSで盛り上がりやすいのは確かです。熱心なファンはSNSに投稿することで、“推しが出ている番組”を盛り上げようとしますからね。でも反対に、一般の視聴者”がSNSに感想を投稿しにくいという側面もある。人気グループにはそのファンダム内での特有のマナーのようなものがあり、その存在を知らずにSNSで盛り上がってしまうと、熱心なファンから自分が想像もしないような指摘をされてしまうこともあります。面倒事を避けたいがために、“一般の視聴者”が投稿を控えることも多いんです。
しかし『めおと日和』については、そういった熱心な固定ファンを持つ俳優さんが出演していないことが功を奏するかたちで、誰もが気軽に感想を投稿しやすい空気ができている。すでに応援のマナーやルールがある状態ではなく、みんなでゼロから『めおと日和』のファンダムを作り上げようとしている雰囲気もあります」(大塚氏)
前出の『おっさんずラブ』では、OL民という熱心なファンダムが形成され、3シーズンにわたるドラマ版のほか、劇場版も制作される大人気シリーズとなった。『めおと日和』もまた、同様にシリーズ化される可能性を秘めている。
「『めおと日和』の原作である同名漫画は現在も『コミックDAYS』(講談社)で連載中ですし、ドラマ版の物語を広げていくことは決して難しくありません。そして、今まさにファンダムが作られようとしている中で、支持する人々の盛り上がりも加熱していくと思います。また、『おっさんずラブ』の場合、シーズン2がパラレルワールドのような設定だったため、一部のOL民が反発するということもありましたが、『めおと日和』は原作漫画があるので、ファンの期待を裏切るような展開にもなりにくく、ファンも安心して楽しめるはず。今後のシリーズ拡大にも、十分期待できるでしょう」(大塚氏)
中居正広の騒動をきっかけに窮地に追いやられているフジテレビのなかで、この『めおと日和』が明るい話題を提供してくれている。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)