“令和の最強女性芸人”横澤夏子 みちょぱやゆうちゃみよりも多い出演本数と重宝される理由

令和の売れっ子女性芸人といえば、ヒコロヒー、やす子、ぼる塾、3時のヒロインあたりが思い浮かぶが、活動の多彩さという点で他の追随を許さないのが横澤夏子。インパクト面では冒頭であげた芸人たちに劣るにもかかわらず、近年の活躍ぶりには目を見張るものがある。
民放キー局の制作スタッフが、その“出ずっぱり”の状況を俯瞰する。
「“気づけばテレビに出ている”という印象です。レギュラーは『王様のブランチ』(TBS系)、『ぽかぽか』(フジテレビ系)、『ノンストップ!』(同)など長尺番組ばかりですし、『有吉の壁』『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)、『プレバト!!』『バナナサンド』(TBS系)など、偏りなく各局の人気番組に出ている。2024年の番組出演本数は、みちょぱ、ゆうちゃみ、朝日奈央、大久保佳代子ら、名だたる売れっ子女性タレントより上でした。
重宝される理由は、一言でいうと安心感。持ちネタの一人コントで毒を吐くことはありますが、バラエティや情報番組では尖ったコメントを言うことはなく、むしろ番組をスムーズに進めるサポート役に回れるし、下ネタもないのでファミリーがターゲットの番組にもぴったり。NHKへの出演が多いのも信頼の証です。子どもが3人いるうえベビーシッター資格を持っていて、育児関連の発信にも信頼がおける」
さらに横澤は『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』優勝、『THE W』準優勝、『R-1ぐらんぷり』ファイナリストなど、芸人としての腕も折り紙つき。子育て、過去の婚活、趣味の卓球、出身地の新潟、大ファンの朝ドラなど、トークのレパートリーも広い。さらに時代の風も味方した。“近年ならではの事情”を、前出の制作スタッフが明かす。
「近年はどんな番組でも、出演者が男性ばかりになるのは避けたい。ギャラが1人分で済むピンの女性芸人は、横澤のほかいとうあさこ、大久保佳代子、丸山礼あたり。横澤はキャラ的には柳原可奈子と似ていて、“女性が女性をイジる”というネタも完全に被っていますが、柳原が産休で仕事をセーブしたタイミングで、その枠を横澤がさらっていった感はあります」
CMでも引っ張りだこ
そんな横澤はCMでも引っ張りだこだ。大手広告代理店関係者が、横澤の“便利さ”を挙げる。
「横澤はインスタのフォロワー数が100万人を超えており、1000万人超えの渡辺直美は別格として、女性芸人ではトップクラス。電子請求書発行システム、美容液、パスタソース、紙おむつなどのCMに起用されてきましたが、1本あたりの出演料は2000万円以上と言われています。
CMで人気の最大の理由はSNSのフォロワー数の多さでしょうが、芸風も関係していそうです。というのも、彼女は“あるあるネタ”を得意としているので、その目線の鋭さは、宣伝する商品の信頼感に繋がりますし、『細かすぎて』では一人芝居をしているので、CMのプランにもハメやすい。実際、彼女のCMにはクスっと笑えるようなものが多いですよね」
横澤夏子のポジションを押し上げた、テレ朝の深夜番組
まさに八面六臂の活躍を続ける横澤。ポジションを確固たるものにしたのが、今やママタレ界の頂点に立つ藤本美貴とMCを務める『夫が寝たあとに』(テレビ朝日系)だという。エンタメウォッチャーの大塚ナギサ氏が、同番組の“ちから”を解説する。
「元々テレビ朝日深夜の『バラバラ大作戦』水曜3部の番組として深夜2時台の17分枠で放送されていたところ、視聴者からの反応も大きく、放送から半年で土曜深夜0時台に30分番組として昇格、さらにその半年後には火曜深夜0時台の1時間番組に拡大されました。
人気が爆発した背景には、TVerなどの見逃し配信で観ている主婦層が多いことがあります。主婦が深夜にリアルタイムで視聴するのは困難ですが、TVerであれば家事の合間に楽しむことができる。今の時代にフィットした番組だと言えるでしょう。
番組内容は、子供を持つタレントがゲストで登場することが多く、日常を紹介したり、テーマトークを繰り広げたりするのがメインですが、必ずしも毎回新たな切り口で攻めているわけではありません。家事や子育てなど、似通ったテーマの中で、それぞれの考え方の違いが少しずつ浮き彫りになっていく形ですが、家事や子育ては普遍的なテーマで、子育て世代の母親は常に入れ替わるため、テーマは再生産可能。何より、横澤さんのざっくばらんで親しみやすいキャラが受け入れやすかったのは大きいと思います」
ママタレント界カリスマ的存在である藤本美貴と同様に、横澤夏子の存在感もまた、より大きなものになっていきそうだ。
「横澤さんは、自身の働きかけで所属する吉本興業の劇場である『大宮ラクーンよしもと劇場』に託児所を作った実績があり、他の劇場にも託児所を作っていきたいと話すなど、実行力がある。いわば“男社会”である芸人の世界で、このような影響力を発揮できる女性芸人は貴重で、後輩芸人たちへの影響力も大きい。
また、横澤さんの夫は一般の会社員で、芸能関係者ではないということも興味深いポイントです。横澤さんは、同期であるニューヨークや鬼越トマホークのYouTubeで定期的にトークをしているんですが、そこでよく登場するのが、横澤さんの夫は『あまりおもしろくない』という話題。つまり横澤さんは芸能界と異なる一般的な男性の価値観を理解しているということでもあります。芸能界でサバイブしてきた藤本さんとは違った部分で、ママタレント界のカリスマになっていくかもしれません」(大塚氏)
横澤の快進撃はまだまだ続きそうだ。
(取材・文=木村之男)