キンタロー。「ふざけて生きてもいい」と気楽にさせる唯一無二の笑い 「変顔」が異次元進化した理由は

お笑いタレントのキンタロー。が、5月27日発売の写真週刊誌「FLASH」(光文社)で袋とじグラビアに登場。ふだんの彼女からは想像できないような色っぽい艶姿を披露した。約11年ぶりのグラビア挑戦となったが、これは彼女の話題性や注目度の高さあってこそで、近年の再ブレイクを象徴している。
なぜキンタロー。は再ブレイクできたのか。他の追随を許さない異次元のものまねで突っ走っている彼女は今後、どこを目指していくのか。お笑い事情に詳しい芸能ライターが彼女の「スゴさ」を解説する。
ものまねの異次元進化で再ブレイク…きっかけは「変顔子育て」
今回のグラビアについて、キンタロー。は自身のSNSで「11年越しにまた袋に閉じられました。怖いもの見たさで是非開けてみてくださいね!!」などと発言。「夏のホラーをいちはやくフラゲだぞ!!!」と自虐したが、形のいい美ヒップを大胆に露出した告知ショットはネット上で大きな話題になった。
キンタロー。は11年前にも袋とじグラビアに登場しており、それだけのブランクがありながら再び起用されたのは、間違いなく彼女が「再ブレイク中」だからだろう。
キンタロー。といえば、2012年末ごろに当時AKB48だった前田敦子の誇張ものまねでブレイク。しかしブームが去ると人気は急降下し、いわゆる「一発屋」と認識されるようになった。2015年にものまね番組のディレクターだった男性と結婚し、2020年に第1子、2021年に第2子を出産したことで、一時はお笑いの第一線から遠ざかったような印象すらあった。
だが、2022年にTBS系『水曜日のダウンタウン』で「北京オリンピックで見た天才子どもトランペッター」というものまねを披露したところ、あまりにも振り切れた顔芸や動きに出演者たちが大爆笑。ネット上の視聴者の間でも「お腹が痛くなるくらい笑った」「ものまねの概念を超えてる」などと話題になり、これが再ブレイクのきっかけとなった。
もはや原型がないレベルにまでデフォルメされたものまねは幅広い層に支持され、とくに『スーパーマリオ』シリーズの敵キャラとしておなじみの「ドッスン」のものまねは子どもたちにも大ウケ。常軌を逸した変顔によって、女子中高生などからも「キンタロー。が面白い」との声が多く聞かれるようになった。
現在はものまねの枠を超えた「キンタロー。の芸」としか言いようがない独自の世界を築いており、唯一無二のポジションとジャンルを構築している。
ちなみにキンタロー。は最大の武器である変顔について、昨年出演したラジオ番組で「顔芸で子どもを笑わせながら育児をしていたら、コロナ禍で変顔をやりすぎてタガが外れてきた」と明かしており、この育児スタイルが顔芸の進化と再ブレイクにつながったようだ。
キンタロー。の芸は「ふざけて生きてもいいんだ」と気楽にさせる
なぜ彼女は再ブレイクすることができたのか。どこかスゴいのか。お笑い事情に詳しい芸能ライターの田辺ユウキ氏はこう分析する。
「私がキンタロー。さんをスゴいなと思う理由は、どんな場面、状況であっても『笑わせることをやめないところ』です。たとえば、2024年6月放送の『ロンドンハーツ』(テレビ朝日)の企画『女性芸能人スポーツテスト2024』では、映画『トゥームレイダー』のアンジェリーナ・ジョリーのものまねをしながら100回以上も腹筋をしました。普通に100回以上、腹筋するだけでも大変なのにものまねを付け加えるなんて、まさに『体を張って笑いをとる』を表していたと思います。
ちなみにキンタロー。さんに昨年インタビューをしたとき、この企画について聴きました。すごくきつい体力勝負だったにもかかわらず、SNSではキンタロー。さんの腹筋のやり方が『正しくない』と叩く投稿がたくさんありました。キンタロー。さんはそのことについて、『私の腹筋はビリーズブートキャンプで学んだもの。私の腹筋がダメというなら、それはビリー隊長を叩いているのと一緒ですから!』と熱弁されていて、私も笑っちゃいました」
体を張ったガチンコ対決のような場面でも彼女はとにかく「ものまねでふざける」ことをやめない。それが再ブレイクの大きな要因になったようだ。田辺氏は続ける。
「キンタロー。さんのどんな場面でも笑いを取る姿勢は徹底していて、2024年9月放送の『千鳥の鬼レンチャン 400m走&息止めガマン』(フジテレビ系)でも、『スーパーマリオ』シリーズの敵キャラ・ドッスンのものまねをしながら、水中息止め対決にチャレンジし、勝利していました。ふつうにトークしていることがほとんどなく、今年5月放送の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の『個人事務所芸人』に出演されていましたが、そこで久しぶりに『まともに喋っているキンタロー。』を見た気がします。
なんでもキンタロー。さんは、真面目に喋らなきゃいけないときは、ソワソワしちゃうのだそうです。歌番組でも、普通に歌唱すると上手く歌えないから必ずなにかのモノマネをするとおっしゃっていました。そうやって常に、楽しくふざけている姿が、見る者を明るくさせるのだと思います。キンタロー。さんを見て『あっ、ふざけて生きてもいいんだ』と気楽にさせるといいますか。2020年代はコロナ禍もありましたが、そういう暗くて重いムードをキンタロー。さんは弾けた笑いで吹き飛ばした。それが再び脚光を浴びるようになった理由である気がします」
日本以外でも通用する? 海外進出の可能性
以前のような一過性のブームではなく、完全に「キンタロー。」という自分だけのジャンルと芸風を確立した彼女。今後どのような道を進んでいくのか、田辺氏はこう展望する。
「ゆりやんレトリィバァさん、渡辺直美さん、とにかく明るい安村さんなど多才なピン芸人が次々と海外進出しています。キンタロー。さんもいずれ海外に渡るのではないかと考えています。実際にキンタロー。さんにインタビューした時、海外進出の可能性について尋ねると『もともと海外志望なんです』と語っていらっしゃいました。
ただ、かつてテレビ番組の企画でカナダへ行ってネタを見せたとき、人生で一番スベったそうで、そこで『自分は通用しない』と感じてしまったそうです。さらに自分の芸がものまね中心ということもあり、海外のコメディファンに伝わりづらいのではないかという不安もあって、なかなか踏み出せないと語っていました。
しかしキンタロー。さんは、日本のお笑い界ではすでに確固たる地位を築いています。2024年から『R-1グランプリ』に再チャレンジするようになり、『THE W』にも挑んでいますが、キンタロー。さんの中には、自分のキャリアでやり残していることとして『賞レース獲得』があると思います。賞レースで満足いく結果を残すことができれば、次は海外に目を向け、さらなる高みを目指す可能性は十分あるのではないでしょうか」
(文=佐藤勇馬)
協力=田辺ユウキ
大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。
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