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FRUITS ZIPPERが「一発屋」で終わらなかった理由 平日に1万8000人動員できるアイドルに

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FRUITS ZIPPER(写真/Getty Imagesより)

 7人組女性アイドルグループ「FRUITS ZIPPER」が、さいたまスーパーアリーナで3周年記念ライブを開催。平日開催だったにもかかわらず、超満員の約1万8000人を動員したことが話題になっている。乃木坂46ら坂道系アイドルなどと並ぶ存在になり、一部では「もはや国民的アイドルグループ」との声まで上がっている。

 競争が激しいアイドル戦国時代において、なぜ彼女たちは短期間でここまで上り詰めることができたのか。アイドル業界の事情に詳しい芸能記者が「成功の秘密」を解説する。

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平日に1万8000人動員できるアイドル

 FRUITS ZIPPERは、月足天音(つきあし・あまね)、鎮西寿々歌(ちんぜい・すずか)、櫻井優衣(さくらい・ゆい)、仲川瑠夏(なかがわ・るな)、真中まな(まなか・まな)、松本かれん(まつもと・かれん)、早瀬ノエル(はやせ・のえる)の7人組。ファッション誌「Zipper」(祥伝社)の元モデルとしても知られる木村ミサがプロデュースを手がけ、2022年に結成された。

 6月3日、同グループは3周年を記念したさいたまスーパーアリーナ公演「超めでたいライブ-さん-」を開催。終演後、グループのSNS公式アカウントが「【最高の #ふるっぱー 超集合写真】」と題し、ステージ上のメンバーたちと客席のファン(通称ふるっぱー)を収めた写真を公開したのだが、平日の開催だったにもかかわらず、客席は上階の席まで人でびっちり。それもそのはず、当日の動員数は驚異の約1万8000人と発表された。

 同月8日には、安田記念が行なわれた東京競馬場のパドックでトークショーが開催されたのだが、こちらにも多くのファンが押し寄せた。最前列のポジション取りをめぐってファン同士のケンカが発生したとする動画が拡散されたことも話題になっており、それもある意味で急激な人気の高まりを象徴している。また、メンバーの鎮西が人気ロックバンド「Mrs. GREEN APPLE」のボーカル・大森元貴との「交際匂わせ疑惑」を騒がれ、テレビ番組内で疑惑を否定する事態になったが、これも人気の裏返しといえるだろう。

 FRUITS ZIPPERといえば、2022年4月にリリースした2nd配信シングル『わたしの一番かわいいところ』がTikTokを中心に大バズりし、翌年に「第65回日本レコード大賞」の最優秀新人賞を受賞。ただSNSで曲がバズったアーティストは「一発屋」になることが少なくないため、FRUITS ZIPPERも人気が落ちていくのではと見る向きがあった。

 しかし彼女たちの人気はむしろ加速し、「第66回日本レコード大賞」の優秀作品賞にも選ばれた『NEW KAWAII』、人気アニメ映画の主題歌になった『KawaiiってMagic』などヒットを連発。先述したように「平日に1万8000人も動員できるアイドル」にまで成長した。また、永野芽郁の不倫疑惑騒動の影響で打ち切りになったラジオ番組『永野芽郁のオールナイトニッポンX』(ニッポン放送)の後任に抜擢されており、業界的にも彼女たちが「旬のアイドル」と認識されていることがうかがえる。

FRUITS ZIPPERのブレイクはあらかじめ約束されていた?

 なぜ彼女たちはこれほどの大ブレイクを手にすることができたのか。業界事情に詳しい芸能記者はこう分析する。

「彼女たちが所属するアソビシステムは原宿を拠点としたイベント制作に端を発し、出演者のマネジメントやプロモーションまで手掛ける中で、芸能事務所としても発展。原宿カルチャーを世に届ける存在として、きゃりーぱみゅぱみゅ、新しい学校のリーダーズらを輩出し、世界的にも評価の高い『KAWAII CULTURE』の一翼を担ってきた。2022年に『原宿から世界へ』をコンセプトに、アイドルプロジェクト『KAWAII LAB.(カワイイラボ)』を発足。その第一弾のアイドルグループがFRUITS ZIPPERだった。

 総合プロデューサーの木村ミサ氏は青文字系ファッション誌『Zipper』の読者モデルとして世に出た後、かねてから興味のあったアイドルプロデュースに関わるべく、2014年から2017年までアソビシステム所属のアイドルグループ『むすびズム』のメンバー選定やコンセプトに携わり、自身もリーダーとして活動。その後もアソビシステムが手掛けるアイドルユニット『IDOLATER』のアドバイザーなどを務めた。そうした実績をアソビシステムの上層部に買われ、KAWAII LAB.を託されたのである。

 最初にバズった『わたしの一番かわいいところ』は初めからTikTokでのバズりを狙っていて、作詞・作曲は数多くのアイドル楽曲を手掛けるヤマモトショウ氏、振付はかつてアイドルグループ『PASSPO☆』のメンバーとして活躍した振付師の槙田紗子氏が担当するという鉄壁の布陣だった。プロデューサーの木村氏を含め、メジャー・インディーズの垣根を超えて『原宿カルチャー』『KAWAIIカルチャー』のプロフェッショナルが集結し、これまでの知見を総動員して作ったアイドルグループなのだから、あらかじめ成功は約束されていたと言っても過言ではないだろう」

若い女性らライト層とコアなアイドルファンの支持を総取り

 ただ、さすがにここまで一気にブレイクするとは、メンバーも運営側も思っていなかっただろう。この急激な人気の高まりの秘密について、前出の記者が続ける。

「インディーズからスタートしたFRUITS ZIPPERだが、早い段階でヒット曲を出したことで、アイドルファン以外からも注目を集めることになった。さらに『原宿カルチャー』『KAWAIIカルチャー』を愛する世代に訴求力のあるメイクや衣装を意識することで、若い女性からの人気も獲得。その結果、ライブ会場の観客はどんどん女性の割合が多くなっていき、テレビ露出が増えるにつれて、学生、夫婦・カップル、家族3世代など、幅広い層のファンが集まるようになった。

 それでいてメンバーのアイドル性の高さ、楽曲と振り付けのクオリティによって、メジャーになると離れがちなコアなアイドルファンの心もつかみ続けているのが、他のアイドルグループにはない強み。楽曲的にもしっかりと戦略を立て、『わたしの一番かわいいところ』のヒット以降、同系統の曲を出しつつ、違うタイプの曲も織り交ぜていったことが、一発屋で終わらず、今も人気を拡大し続けている大きな理由だろう」

 さらに、前出の記者はメンバーの「下積みの長さ」にも注目する。

「FRUITS ZIPPERは過去に別のアイドルグループに所属していたり、女優やタレントを経験していたりと、なにかしらの下積みを経て苦労してきたメンバーが多い。仲川瑠夏は3歳のころから芸能活動を始め、高校卒業後に複数のグループに所属するも鳴かず飛ばず。月足天音は高校時代にHKT48のメンバーになり、コア層からの人気は得たものの、一般的な知名度は低いまま活動を終了した。

 櫻井優衣は中学時代からいくつものアイドルグループを渡り歩き、ソロデビューもしたが、やはりコア層からの支持だけにとどまっていた。加入前からタレントとして活躍していた鎮西寿々歌のようなメンバーもいるが、下積みの長かったメンバーが多い。だからこそ『わたしの一番かわいいところ』のヒットに満足することなく、一発屋で終わるかもしれないというプレッシャーに押しつぶされることもなく、今も上昇気流に乗り続けているのだろう」

(文=佐藤勇馬)

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佐藤勇馬

1978年生まれ。新潟県出身。SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。著書に『ケータイ廃人』『新潟あるある』がある。

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最終更新:2025/06/10 09:00