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『あんぱん』第67回 ちゃんちゃらおかしい新聞社で妄言を振りかざす今田美桜が不憫すぎる

今田美桜(写真:サイゾー)
今田美桜(写真:サイゾー)

 もう、まったくわからんのですよ。高知新報が夕刊を出すことになった。そこまではいいんです。

『あんぱん』期待はあっさり裏切られる

 遊軍記者でありながら朝刊1面の紙面割を担当するなどデスク的な役割を担っている東海林(津田健太郎)が、その夕刊の編集長になるという。「人員は3名」ということで、東海林は直属の部下である岩清水(倉悠貴)とのぶさん(今田美桜)を指名する。

「はい! 精一杯がんばります!」

 そう言って、満面の笑みを浮かべるのぶさん。これは何を喜んでいるの? 高知新報が夕刊を発行して、その担当になったことがどうしてそんなに嬉しいの? 昨日は朝刊1面に記事が載りましたよね。記者にとって朝刊1面こそが花形ですよね。その夕刊がどんなものになるかも、そもそも申請が通るかもわからないのになんでウキウキなの? 東海林に指名されたから? それだと別の意味が出てきちゃうよ?

 この笑顔はもう、「ポジティブなことが始まる」という記号でしかないんですよね。根拠のないミスリードなんです。物語の意味として「夕刊を担当することがポジティブである」と言っているのではなく、「のぶが笑顔だから、夕刊への配属はポジティブなのである」という設定の押し付けなんです。もちろん今田美桜に罪はないけれども、こいつ気味が悪いよ。何笑ってんのよ。

 そんで編集局に戻ったら、一同はほかの記者に「ええにゃあ、遊軍記者はヒマで」とか言われている。どっちなんだ、ヒマなのか、ヒマじゃないのか。なんで東海林は昨日までやってた記事へのダメ出しやレイアウト作業を今日はやってないのか。「申請も通ってないがぞ」なら、今日のあんたたちの仕事は何なんだ。

「なんか、露骨に風当たりが強いがですけんど」と岩清水。これも、「風当たりの強い小さな部署である」という記号、設定の押し付けです。東海林と岩清水が忙しいのかヒマなのか、それくらいは決めてくれ。

 私たちの理解を置き去りにして、ドラマはどんどん進みます。

 風当たりが強いので、編集局を出ることにした東海林。倉庫を片付けて、そこを夕刊の編集部にすると言います。倉庫というのは言うまでもなく、今すぐ必要ではないがいつか必要になるであろう物を置いておく場所であって、そこにはたくさんの荷物が山積みにされていたわけですが、その荷物を片付けて、東海林たちはその中央に陣取ることになります。

 倉庫にあった大量の荷物はどこへやったのか。それを移動する空間があるなら、最初からその空間を新しい編集部にすればいいじゃない。もうむちゃくちゃだよ。なんでこんな「新聞社」の描写の解像度が低いのか。子どもが書いてんのか。

 そうしてむちゃくちゃな段取りで立ち上がった新編集部で、のぶさんキメ顔です。

「記者は、どこまでいっても世の中に問い続けるしかないがやないでしょうか」

 ああー、しんどい、今日は過去イチしんどいぞ。第67回、振り返りましょう。

誰が何を言ってんだよ

 新聞は戦中、戦争を煽り続けていたのに、戦争が終わったら手のひらを返した。そのことについて東海林は忸怩たる思いを抱えているし、自分に愛想が尽きている。終戦から半年たって、その半年の間に東海林がどんな記事を書いてきたのか全然わからないので、その発言の評価や信憑性については置いておくとしても、言っていることはよくわかります。だから、これからは嘘偽りのない生の声を拾っていく。たいした決意です。

 一方ののぶは昨日今日、速記を覚えたからという理由で記者になっただけなのに、「記者はどこまでいっても」とか言い出してる。この時点で「誰が何を言ってんだよ」って話なんですよ。こっちはおまえが新聞を読んだことがあるのかどうかも知らないよ。ここは「のぶはしっかりとした考えを持っている」という表現をやりたかったところなんだろうけど、実際にはクソズブのド素人が半可通ぶってマスコミ論を語り出すという、愚の骨頂と呼ぶべきシーンとなっております。

 さらに、自分も教師として子どもたちに間違ったことを教えてきたから「東海林さんと同じ」だという。

 同じじゃねーじゃん。同じじゃねーんだよ。正反対なんだよ。

 おまえがやるべきことは、戦後も子どもたちと向き合い続けて、子どもたちの幸せとは何か、大人が子どもたちに遺してやるべき日本という国はどんなものか、自分が教師として間違ったことを教えてきたと感じたなら、その経験を未来にどう生かすか、今子どもたちに何を伝えるべきか、それを自分自身に問い続けることなんだよ。子どもが好きなんだろ? 楽しく体操を教えたかったんだろ? その資格がないってこの人は言うけど、そうやって悔恨をほっぽり出して遁走してきたやつに「記者として世の中に何かを問い続ける」資格なんかあるわけないんだよ。

「記事を書くのが恐ろしい」とか言ってるけど、それは「子どもたちと向き合うよりは恐ろしくない」「自分の過去の所業と向き合うより楽チンだ」と言ってることになるからな、わかってんのか。

 とかそんな感じで東海林に怒鳴り散らしてほしかったところですが、泣いたぞ東海林。なんだこいつ、酔ってんのか? 「気合の入った記事」だぁ? 見せてみろ、その気合の入った記事を。あの意味不明なお芋さん返却ボーイをどう感動的な記事に仕立て上げたのか、少しでもドラマ書きのプライドがあるなら創作してみろってんだよ。日和ってんじゃないよ。

 何がムカつくって、この東海林とのぶのやり取りを邪魔の入らない倉庫でやりたいがためにむちゃくちゃな段取りで舞台を設定しておいて、その内容がアンポンタンの極みみたいな妄言であることなんですよ。「たいしたきっかけもなく教師になって、何の覚悟もなく教師を辞めた」という主人公周辺の一連の縦軸が、『あんぱん』というドラマにウンコのように貼りついて悪臭を放ち続けているんです。もう何を言っても「ウンコがなんかしゃべってんな」としか思えないところまできてしまった。みんな大好き今田美桜ちゃんをウンコにした罪は重いぞ、ちゃんと事務所と本人に謝ってほしい。

一方そのころ

 嵩(北村匠海)はマンガ家への第一歩を踏み出そうとしているようですし、メイコ(原菜乃華)は、まさかとは思うけど歌手になりたいとか言い出すのかな。まあがんばればいいんじゃないの、知らんけど。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子。1977年3月生、埼玉県出身。

幼少期に姉が見ていた大映ドラマ『不良少女と呼ばれて』の集団リンチシーンに衝撃を受け、以降『スケバン刑事』シリーズや『スクール・ウォーズ』、映画『ビー・バップ・ハイスクール』などで実生活とはかけ離れた暴力にさらされながらドラマの魅力を知る。
その後、『やっぱり猫が好き』をきっかけに日常系コメディというジャンルと出会い、東京サンシャインボーイズと三谷幸喜に傾倒。
『きらきらひかる』で同僚に焼き殺されたと思われていた焼死体が、わきの下に「ジコ(事故)」の文字を刃物で切り付けていたシーンを見てミステリーに興味を抱き、映画『洗濯機は俺にまかせろ』で小林薫がギョウザに酢だけをつけて食べているシーンに魅了されて単館系やサブカル系に守備範囲を広げる。
以降、雑食的にさまざまな映像作品を楽しみながら、「一般視聴者の立場から素直に感想を言う」をモットーに執筆活動中。
好きな『古畑』は部屋のドアを閉めなかった沢口靖子の回。

X:@dorama_child

どらまっ子AKIちゃん
最終更新:2025/07/01 14:00