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なぜ本田翼は「演技下手」のレッテルを貼られることになってしまったのか

本田翼ら3人が彼氏をシェアするラブコメ開幕 作品ごとに評価が分かれる本田翼の画像1
本田翼(写真:Getty Imagesより)

 女優の本田翼が主演を務める、放送中のフジテレビ系ドラマ『北くんがかわいすぎて手に余るので、3人でシェアすることにしました。』がネット上で賛否を呼んでいる。「あり得ない設定がおもしろい」「荒唐無稽すぎて受け入れられない」といった声が飛び交っているが、それと同時に本田の演技にも注目が集まっている。

 かねてから本田の演技については「下手すぎる」「独特の魅力があって上手い」と賛否が分かれていたが、本作をきっかけに議論が再燃しているようだ。実際、本田の演技は業界内でどのような評価なのか。なぜ世間的に「演技下手」というイメージが浸透してしまったのか。業界事情に詳しい芸能記者が解説する。

久々の主演ドラマ、本田翼の演技の評判は?

 同ドラマは、榊こつぶ氏の同名コミックの実写化。主人公の看護師・浅田南(本田)が、老若男女を虜にしてしまう魅力を持った美青年の「北くん」こと真中北(岩瀬洋志)に恋をし、同じように彼に思いを寄せるパン店の店員・比留間東子(志田未来)、書店員の西野悠(増子敦貴)と共に「33%の会」を結成。愛を3等分してシェアし、4人で暮らすという大胆な設定のラブコメディだ。

 本田のドラマ出演は2024年4月期のフジテレビ系『ブルーモーメント』以来、1年以上ぶり。主演ドラマとしては、2022年10月期のTBS系『君の花になる』以来となる。

 久々の主演ドラマであるだけに放送前からファンの期待が大きかったが、ネット上では演技力を不安視する声も多く見られた。それというのも、本田は『君の花になる』に主演した際に演技力への批判が相次ぎ、SNSで「本田翼の演技」がトレンド入りする事態になってから、世間に「演技下手」のイメージが浸透しているからだ。

 その一方、テレビ朝日系『6秒間の軌跡〜花火師・望月星太郎の憂鬱』や、シーズン3からヒロインを務めたフジテレビ系『絶対零度』シリーズ、同じフジテレビ系『ラジエーションハウス』シリーズなどでは高評価を得ていたことから、SNS上では「決して下手ではない」「クール系の役柄はすごくうまい」などと反論する声もある。

 実際、今作ではどのような評価となっているのか。業界事情に詳しい芸能記者はこう評する。

「『北くんがかわいすぎて手に余るので、3人でシェアすることにしました。』で本田が演じる浅田南は、自慢の美貌を武器に豊富な恋愛経験を積んできた看護師という役柄。ただ高慢な女性というわけではなく、実はお人好しで、大ざっぱな面はあるものの相手を思いやる気持ちがあり、どんなときでも明るくてオーバーリアクションという、本田のパブリックイメージを活かした役柄となっている。

 ただ今回は主演と言えど、タイトルどおり、北くんと彼を好き過ぎる男女3人が共同生活するストーリーで、実質的に4人全員が主人公。生真面目で料理好きな比留間東子を演じる志田未来、本屋で働くクール系男子の西野悠を演じる増子敦貴、そして誰からも愛される北くんを演じる岩瀬洋志と、まったく違うタイプのキャラクターの掛け合いが大きな見せ場。落ち着きのある志田、クールだけどどこか抜けた印象の増子と、本田と同じく自身のイメージに近い役柄を演じており、この3人が北くんを取り合うときのやり取りは息がぴったり。本作はアドリブが多いと4人は語っているが、暴走気味の本田を中心に、それを冷静に止めながらも自分のアピールも忘れない志田と増子という構図は、トリオ漫才のような小気味よさがある。

 7月5日放送の『フジテレビドラマライブ2025・夏』では、本田翼、志田未来、岩瀬洋志の3人が参加。ここでセンターポジションに座った本田は、アンタッチャブルの山崎弘也のツッコミや無茶ぶりに全力で乗りつつ、ちゃんと志田と岩瀬にも話を振るなど見事な座長ぶりを見せた。こうした本田の細やかな気遣いがドラマでのチームワークの良さを作り上げているのだろう」

なぜ本田翼は「演技下手」イメージになってしまったのか

 本作では共演者たちとの掛け合いがうまく機能しているようだが、なぜ本田は世間一般に「演技下手」イメージが浸透してしまったのだろうか。前出の記者はこう指摘する。

「本田は明るくて前向きで、誰に対しても優しくて、ちょっとオタク気質というパブリックイメージそのままの役を演じることが多く、バラエティやCMで見せる素の表情や喋り方と大きな違いがないように見えるので、ドラマの視聴者は役柄としてではなく、本人そのままとして捉えてしまうのではないか。

その結果、まともに芝居をしていないように見えてしまい、演技が下手と判断されやすくなっているのだろう。空気を読むのが得意な本田だけに、制作者が求めていることを敏感に感じ取り、それに忠実に沿った演技をしているのかもしれない。そういう意味では、決して演技は下手ではない。否定的な評価が増えてしまったのは、そういう役柄ばかり当ててしまう制作者側や、作品を選定している事務所に問題があるのかもしれない」

 本田の女優としての実力について、前出の記者はこう続ける。

「本田は自身のパブリックイメージを活かしたコメディ作品への出演が多いが、実はシリアス系の作品のほうが当たり役は多い。たとえば、主演を務めたコミック原作の映画『アオハライド』(2014)は、原作ファンからの評価はいまいちだったものの、本田のひたむきな演技も相まって同世代の女性たちから絶大な支持を集め、大ヒットを記録した。キラキラ系映画の秀作として、現在も根強い人気を誇っている。

 その他にも人気コミックの実写化作品に数多く出演している本田は、原作ファンから批判を浴びせられることが多く、それが『演技が下手』という評価につながっているところもある。しかし、人気コミックを実写化した主演ドラマ『わにとかげぎす』(TBS系)で演じた、自己肯定感の低いヒロインは原作のキャラクターを上手くとらえていて、決して実写化作品に向いていないわけではない。

 さらに『絶対零度』シリーズでは、ドSで格闘技のプロという巡査部長を颯爽と演じ、『ジャパンアクションアワード2019』のベストアクション女優・優秀賞を受賞した。また、映画『新聞記者』(2019)で演じた若手エリート官僚の妻役も堂に入っていた。今回の『北くん~』は共演者との相性の良さもあって、今のところ自身のパブリックイメージが上手く活かされているが、もしかしたら普段のイメージとは正反対の役こそが本田の真骨頂なのかもしれない」

(文=佐藤勇馬)

佐藤勇馬

1978年生まれ。新潟県出身。SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。著書に『ケータイ廃人』『新潟あるある』がある。

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最終更新:2025/07/09 09:00