綾瀬はるか、終活ドラマ『ひとりでしにたい』好調の裏に好感度と共感性

女優の綾瀬はるかが主演する、放送中のNHKドラマ『ひとりでしにたい』が好調だ。「終活」という暗くなりがちなテーマを扱いながら、コミカルで共感性の高い作品に仕上がっており、その背景には綾瀬の好感度と確かな実力があるようだ。
とくに同年代女性からの共感の声が多いが、なぜ綾瀬は男女双方からの高い好感度を維持できているのか。演技力の高さの秘密なども含め、業界事情に詳しい芸能記者が解説する。
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異例の「終活ドラマ」に称賛と共感の声
『ひとりでしにたい』は、カレー沢薫氏による同名コミックの実写化。猫と一緒に暮らしながらアイドルの「推し活」を楽しむなど独身生活を謳歌していた39歳の主人公・山口鳴海(綾瀬)が、おひとりさまのキャリアウーマンとしてあこがれていた伯母の孤独死の知らせに衝撃を受け、それをきっかけに「終活」と向き合ってより良い生き方を模索していく物語だ。
伯母の孤独死の状況はかなりリアリティがあり、焦った鳴海が婚活に乗り出すも、年下の同僚から「結婚すれば安心って昭和の発想ですよね?」と一刀両断されてしまうなど、独身者なら誰しも身につまされるような内容だ。しかし、綾瀬をはじめとしたキャスト陣のコミカルな演技によって決して暗くならず、共感しつつも前向きに「終活」や自身の生き方について考えられるような仕上がりになっている。
とくに好評なのは主演の綾瀬の演技だ。実際、SNS上では
「漫画版のコミカルな雰囲気をうまくドラマに落とし込んでいるし、綾瀬はるかの演技がスゴくハマってる」
「綾瀬はるかさんの本当にアイドルオタなのでは?と思うほどの共感性の高い演技が素晴らしかった」
「綾瀬はるかさんの嫌味なく軽やかでキュートな演技が心地いい」
「斜め上を行った演出に綾瀬はるかがトボけた演技を合わせているのが良い」
といった声が上がっている。業界事情に詳しい芸能記者も綾瀬の演技力を絶賛する。
「『ひとりでしにたい』では、複数の自分自身と対話しながら自問自答したり、同僚の那須田を演じる佐野勇斗や父親役の國村隼と息の合った掛け合いをしたり、ボーイズグループの推し活に興じたりと、コメディエンヌぶりを存分に発揮。一歩間違えると寒くなってしまうシーンもコメディとして成立させているのは、肩肘を張らずに自然と役に入り込む綾瀬の演技力のたまものだろう」
なぜ綾瀬はるかはずっと好感度が高いのか
綾瀬はCM露出の高さを長年維持するなど老若男女問わず好感度が高いが、それもドラマの好評につながっているとみられる。とりわけ、同年代女性からの共感を集めやすいと指摘されているようだ。
前出の記者は綾瀬の好感度の高さの秘密について、このように分析する。
「2004年にTBS系ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』のヒロイン役でブレイクして以来、数多くのドラマ・映画で主演を務め、ヒット作も多数という国民的女優ながらも、変に芸能人然としたところがなく、透明感を保ち続けているのは驚異的なこと。ほんわかとした天然ぶりも人気の秘密だが、通常の女性タレントだとそうしたキャラクターは『あざとい』『ウソっぽい』と批判されがち。しかし綾瀬の天然キャラは、幾度となく共演者やスタッフらの言葉によって『作られたものではない』と証明されており、だからこそあざとさを感じさせず、視聴者に好印象を与える。過去にNHK『紅白歌合戦』で3度にわたり司会を務めているが、天然キャラを炸裂させながらも真摯に取り組む姿勢が老若男女に愛されて好評となった。
プライベートの綾瀬はインドア派で、家で過ごすことが多いという。また撮影現場では、共演者と積極的にコミュニケーションを取るのではなく、楽屋で気の合うスタッフと過ごすほうを選ぶタイプ。綾瀬は芸能人の友達が少ないことを公言しているが、それによって芸能人特有の色がつかず、一般の感覚を失わないことが『共感性の高さ』につながっているのかもしれない。現在交際がウワサされているジェシー(SixTONES)との交際まで、あまり決定的なスキャンダルが出なかったのも、芸能人同士のつながりを重要視しなかったことが影響しているのだろう。だからこそ、熱愛報道に厳しいSixTONESのファンも、綾瀬とジェシーの交際報道を好意的に受け止める人が想像以上に多かった」
作品選びの妙、演技の柔軟さも人気の秘密
さらに、作品選びも好感度や共感性の高さに影響しているという。前出の記者が続ける。
「年齢に応じて、等身大の女性を演じてきたのも同性から愛される理由だろう。連続ドラマ初主演となった2007年のドラマ『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系)では、職場では『大人の女』として振る舞っているが家では『干物女』という女性を好演。2014年の主演ドラマ『きょうは会社休みます。』(同)では、33歳まで彼氏がいなかった女性が酔った勢いで男性と初めて一夜を共にし、そこから人生が大きく変化していく姿をコミカルに演じた。
2018年のドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)では、32歳の若さで部長になったバリバリのキャリアウーマンが子持ちの男性と結婚したことで小学生の娘を持つ専業主婦となり、母親として奮闘する姿を熱演。そして放送中の『ひとりでしにたい』では、39歳で独身の美術館学芸員で、自身で購入したマンションに猫と住むなど自立しているものの、伯母が孤独死したことによって終活を真剣に考える山口鳴海を演じている。事務所の戦略もあるだろうが、実年齢に近い無理のない役柄で同世代女性からの共感性の高い作品に多く出演し、いずれも高視聴率を記録している。この作品選びの的確さも、綾瀬が高い人気をキープしている大きな理由だろう」
綾瀬は「演技の柔軟さ」も大きな魅力のようだ。前出の記者が言う。
「普段のおっとりした雰囲気からは想像もつかないぐらい、仕事に対する情熱が高いことでも知られる綾瀬だが、撮影現場では自我を通すのではなく、監督の意向に沿って役作りをするタイプ。演技に対して凝り固まったこだわりを持たず、作品ごとに監督の世界に染まっていくから、等身大の女性はもちろん、フジテレビ系ドラマ『元彼の遺言状』の敏腕弁護士役や、NHK大河ドラマ『八重の桜』の新島八重のように力強い女性もサマになるし、映画『リボルバー・リリー』(2023年)のハードボイルドな腕利きの女スパイ役にも説得力が生まれる。『リボルバー・リリー』にはアクションシーンがふんだんに盛り込まれているが、ほぼ吹き替えは使わず、綾瀬自身が演じていて身体性が高いのも重要な魅力だ」
芸能界は浮き沈みの激しい世界だが、実力と好感度を併せ持った綾瀬の「国民的女優」の座は今後もしばらく揺らぐことはなさそうだ。
(文=佐藤勇馬)