『しあわせな結婚』松たか子×名脚本家の化学反応が止まらない!「ハズレなし」でヒット連発の理由

阿部サダヲと松たか子が共演する放送中のテレビ朝日系ドラマ『しあわせな結婚』が好調だ。とりわけ松の演技に称賛の声が集まっており、改めて女優としての実力の高さが浮き彫りになっている。
本作に限らず、近年の松は「ハズレなし」状態で作品がヒットしている。松の演技力の高さやヒット作続きの理由について、業界事情に詳しい芸能記者が解説する。
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SNSでも絶賛の嵐となった『しあわせな結婚』
『しあわせな結婚』は、NHK大河ドラマ『光る君へ』などで知られる大石静氏が脚本を手掛けた、夫婦の愛を問う令和のホームドラマ。1・2話の見逃し再生数が500万回を突破(TVer DATA MARKETINGにて算出、期間:7月17日~7月27日)し、TVerをはじめ、NetflixやTELASAでもランキング1位を獲得するなど配信プラットフォームのトップを独占した。
今作は、敏腕弁護士でテレビでも人気の主人公・原田幸太郎(阿部)が、番組出演中に倒れて入院した際にミステリアスな高校の美術教師・鈴木ネルラ(松)と運命の出会いを果たし、独身主義を貫いてきた幸太郎が彼女と電撃結婚するというストーリーだ。
といっても通常のホームドラマではなく、ネルラは元婚約者が死亡した15年前の事件にかかわっている疑いがあり、サスペンス要素も強くあることから、先の読めない展開となっている。
ネルラはふつうなら現実離れしたキャラクターに見えるが、松の繊細かつ大胆な、かわいらしくも不気味な、多面性を持った演技でリアリティが生まれ、視聴者は思わずドラマに引き込まれてしまう。
実際、SNS上でも
「ネルラが過去を告白したシーン、ほんわか空気から一瞬にしてミステリアスで恐怖すら感じる演技で、背筋が凍った……。さすが松たか子としか言いようがない、天才」
「阿部サダヲと松たか子は毎回当て書きだと思わせるほど、この人しかいないって演技するよなぁ。ほんとすごい」
といった絶賛の声が多く飛び交っている。
実力で培った多彩な演技の引き出し
松の演技力の高さについて、業界事情に詳しい芸能記者はこう評する。
「二代目松本白鸚を父に持ち、芸能一家に生まれた松たか子だが、決して親の七光りではなく、デビュー当時から演技力は非凡だった。木村拓哉とW主演を務めた1997年のフジテレビ系ドラマ『ラブジェネレーション』では、等身大のOLを違和感なく演じ、ただの夢物語ではない説得力のあるラブストーリーに昇華させ、同世代の女性から共感を得た。木村と3度目の共演を果たした2001年の同局系ドラマ『HERO』(同)では、格闘技ファンで酒豪の検察事務官をコミカルに演じ、コメディエンヌとしての才も発揮。映像作品と並行して舞台にも力を入れ、蜷川幸雄や三谷幸喜、野田秀樹や串田和美など、名演出家との仕事で演技に磨きをかけていった。
実力で認められて国民的女優に上り詰めた松は、2007年にミュージシャンの佐橋佳幸と結婚したが人気は衰えることなく、話題作への出演が続いた。中でも主演映画『告白』(2010)では、娘を殺されて復讐を企てるシングルマザーを凄まじい気迫で演じて新境地を開き、『第34回日本アカデミー賞』の優秀主演女優賞を受賞。映画『夢売るふたり』(2012)では阿部サダヲ演じる夫と共謀し、寂しい女たちを結婚詐欺に引っ掛ける小料理屋の女将をバイタリティたっぷりに演じて、数多くの女優賞を受賞した。このように幅広い役柄を演じる松だが、これみよがしに演技力を見せつけるのではなく、常にナチュラルな演技で役に説得力を与え、ミステリーからコメディまで作品の世界観に上手く染まっている」
前出の記者は『しあわせな結婚』の演技についても絶賛する。
「『しあわせな結婚』では、父が缶詰メーカーの創業社長という資産家の家に育ち、かつてはイタリア留学をしていたこともある美術教師の鈴木ネルラをエキセントリックに演じている。阿部サダヲ演じる原田幸太郎とスピード婚するが、夜の営みのせいで股関節を痛めて奇妙な歩き方をするシーンや、口の周りに食べかすを付けてクロワッサンを爆食するシーンなどは、コミカルでありながらどこか品の良さを感じさせる。この上品さは自身の出自も影響しているだろう。また夫にウソをつくときの冷酷な表情や、過去の秘密を語るときの切迫感のあるしゃべり方はミステリアスで、ドラマに奥行きを与えている。硬軟織り交ぜた演技は、円熟の域に達しているといっても過言ではないだろう」
近年の松たか子が「ハズレなし」の理由
松といえば、近年は2021年の主演ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)や2020年の映画『ラストレター』、今年2月に公開された映画『ファーストキス 1ST KISS』など、決して出演作は多くないものの、そのすべてが「ハズレなし」の高評価に結び付いている。
なぜ当たり役ばかり引き寄せるのか、前出の記者はこう分析する。
「松が女優として、大きな飛躍を遂げたのが2017年のTBS系ドラマ『カルテット』。サスペンス、恋愛、ヒューマン、コメディなど様々な要素が渾然となったドラマで、元プロ演奏家で専業主婦の巻真紀を鮮やかに演じた。同作の脚本は坂元裕二だが、その後も二人は『大豆田とわ子と三人の元夫』や映画『ファーストキス 1ST KISS』でタッグを組み、いずれも高い評価を獲得した。
今年も主演を務めたTBS系スペシャルドラマ『スロウトレイン』が野木亜紀子、『しあわせな結婚』が大石静と、大御所脚本家が手掛けた作品への出演が続いている。それぞれ当て書きなのかは分からないが、松が主演だからこそ、脚本家もインスピレーションが湧いているのは間違いなく、それが『当たり役』が続いている要因ではないか。その大御所たちの脚本に対して、期待を裏切らない演技で応える松は、今後も令和を代表する名女優への道を突き進んでいくだろう」
(文=佐藤勇馬)
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