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都市伝説じゃない…永野芽郁の違約金は本当に20億円!? 芸能人スキャンダルとCM契約の裏側を弁護士が解説

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「CMの出演料は1000万円」という記事もあるが、それだったら割に合わなくないか。(写真:Getty Imagesより)

 芸能人が何かしらのスキャンダルを起こすたびに、ネットニュースでは必ずと言っていいほど「CMの違約金が発生して賠償地獄!」といった記事が掲載される。

 しかし、その後、復活したタレントが「あのときは違約金で大変でした」と語っているケースはあまりない。

 これはマスコミが大げさに伝えているだけで、実際にはそんなことは起きていないのではないか? 弁護士に「芸能人と違約金」について解説してもらった。

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◾️永野芽郁の違約金はCM1本あたり1億円!?

 4月に「週刊文春」(文藝春秋)が報じた永野芽郁と田中圭の不倫騒動は、いったんは沈静化するかに見えた。しかし、事態はさらに拡大し、ここにきて坂口健太郎が一般女性と同棲生活を送っている最中に、永野と三角関係に陥っていたことが新たに発覚した。

 この報道により、永野のキャリアは大きな打撃を受けた。彼女がパーソナリティを務めていたラジオ番組は降板となり、2026年放送予定のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』からも出演辞退を余儀なくされた。

 さらに追い打ちをかけるように、広告契約を結んでいたクライアント企業が次々とタイアップ記事やCMを取り下げる事態となり、スポンサー離れが深刻化しているそうだ。

「日刊ゲンダイDIGITAL」の「永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?」という「いかにも」な記事によると、過去の事例からみても違約金はCM1本あたり最低1億円。全体で少なく見積もっても13億円、場合によっては20億円に達する可能性があるという。

 しかし、本当にこれほどの高額な違約金が発生するのだろうか? 山岸純法律事務所の弁護士・山岸純氏に、その実態を聞いた。

■日本の法律は「金銭賠償」が原則

——芸能人が不倫や不祥事を起こした場合、契約上の違約金は本当に発生するのでしょうか?

山岸純(以下、山岸) ありえます。

——えっ、本当なんですか? マスコミが大げさに報じているだけかと思っていました。

山岸 そもそも「違約金」というのは、法律上は損害賠償と同義です。日本の法律では、何らかの損害が生じた場合、その補填は基本的に金銭で行うのが原則です。例えば交通事故を想像してください。事故で車が壊れたり、怪我で腕を骨折したりすれば、修理代や治療費、仕事を休んだことによる収入減などを「損害」として加害者に請求できます。こうした損害を立証し、賠償を求めるのが基本的な流れです。

——なるほど。損害を証明する必要があるわけですね。

山岸 そうです。ところが実際には、損害を一つひとつ立証するのは非常に大変です。そこで「万が一こういう事態になった場合は、損害金として○○円を支払います」と、契約であらかじめ取り決めることができます。これが「違約金条項」です。交通事故のような突発的な出来事には適用しにくいですが、芸能人とスポンサー企業との間で結ばれる出演契約には、この条項が明記されていることが多いのです。

——つまり、契約した時点で金額が決まっているんですね。

山岸 その通りです。例えば永野さんが出演していたCMが、不倫報道によって放送中止になれば、その商品のイメージは大きく傷つきます。販売が落ち込み、次のCMもすぐには用意できない。結果として企業の売り上げが減り、実害が生じます。こうしたリスクをあらかじめ想定し、違約金が設定されているのです。したがって、13億〜20億円という数字も決して荒唐無稽ではありません。

■億単位の賠償金は本当に支払うのか?

——となると、億単位の違約金も法外な金額ではないのですね。

山岸 はい、十分ありえます。問題は「実際に支払うかどうか」です。本人が支払いを拒否すれば、スポンサーや制作会社が裁判を起こすことになります。裁判では「どれだけの損害が発生したか」を立証する必要があり、それが認められれば、1億円単位の違約金も「高額ではなく妥当」として通用します。

——立証できるかがポイントなんですね。

山岸 そうです。ただし、想定される損害額からあまりにもかけ離れている場合は、公序良俗に反するとして一部無効になる可能性もあります。とはいえ、芸能人契約は長年の慣習に基づいて精緻に作られており、裁判所でも通用する内容が大半だと思います。

——過去には国分太一さんのとき、「50〜60億円の賠償金」と報じられたこともありました。あれも現実的にありえるのでしょうか?

山岸 ありえます。契約していたCMの本数や影響度合いによりますが、国分さんほどのクラスであれば、その程度の損害額になってもおかしくありません。もっとも、実際に支払えるかどうかは別の問題で、現実的に支払える範囲で金額が設定されることが多いです。

——なるほど。それでは、実際に違約金を支払った例はあるのでしょうか?

山岸 裁判例として表に出ることはほとんどありません。大半は示談で解決されるため、公にならないのです。

——これは、ハリウッド俳優の話でよく聞く「懲罰的損害賠償」とは違うのですか?

山岸 違います。懲罰的損害賠償は英米法の考え方で、加害者に「二度と同じ過ちを繰り返させない」ために高額賠償を課す制度です。刑罰的な意味合いを持っています。

——有名な例だと、マクドナルドで客が「コーヒーが熱すぎる」という理由で訴訟を起こして、3億円を受け取った事件がありますよね。

山岸 その事件では、治療費や休業補償に加えて、マクドナルドに「今後は安全管理を徹底せよ」というメッセージを込めて懲罰的損害賠償が課されました。こうした制度は日本の法律には存在しません。

——それでは、日本では「とんでもない金額」になることは?

山岸 基本的にありません。日本では、違約金はあくまで契約違反による損害をカバーするための仕組みです。過大であれば無効になる可能性もあります。したがって、欧米のような天文学的な金額にはなりません。ただし、芸能人の不祥事による億単位の違約金は、決して誇張ではなく、現実に即したものといえるでしょう。

永野芽郁、危惧される「広末涼子の二の舞」

(取材・編集=サイゾーオンライン編集部、文=桃沢もちこ)

桃沢もちこ

1993年生まれ、愛知県出身。東京都在住のフリーライター。社会問題からトレンド、著名人のインタビュー、体験レポなど幅広いジャンルで執筆。

桃沢もちこ
最終更新:2025/09/28 14:00