『THE W』ニッチェおめでとう、審査員粗品、いよいよ『M-1』ですよ……【週刊お笑い雑話】

今週あったお笑い界隈の話題をピックアップ! ライター・新越谷ノリヲと担当編集Sが勝手にしゃべります。お聞き流しのほどを~。
『THE W』ニッチェおめでとう
編集S 『THE W』ニッチェ優勝、マセキに初タイトルです。
新越谷 改めてバカリズムって『R-1』獲ってないんだよなということを思い出しますね。賞レースってやっぱ時の運よね。
編集S とりあえず審査員粗品は置いといて、ネタはどうでした?
新越谷 審査員粗品を置いとくのは難しいよねえ、だいたい言っちゃってるし。
編集S それはそうですけど、全部粗品の言う通りという感じですか?
新越谷 それで言うと、粗品がひとつも面白くないと言ってたパンツ万博。
編集S エレベーターの。
新越谷 なんか面白く見れたんですよね。粗品は叙述トリックという言い方をしてたけど、あの人が「人かイヌか」に興味を引かれたんです。「今度はどっちだろう」と思いながら見られた。
編集S なんででしょう。
新越谷 たぶん、本人たちはあの「人かイヌか」を本当に面白いと思っていて、それを楽しんでやってるふうに見えたんだと思うんですよ。それこそこっちはジャッジするために見てるわけじゃないから、本人たちが楽しそうなら「楽しいもの」として受け取れるというか。だからジャッジである粗品の言ってることもよくわかるんだけど。そういう意味で、とんでもあやはあんまり楽しそうじゃなかった。
編集S エルフも楽しそうでしたけど。
新越谷 エルフの楽しさというか、楽しそうさって今回に限っては、なんか作り物に見えたんですよね。ブラッシュアップされたものといえば聞こえはいいけど、「楽しそう」「盛り上がる」を優先して面白さを捨ててる感じがした。1本目もそうだけど、特に2本目のBGMが流れてきたときに、ああーまたそっちかーと思ってしまった。
編集S 持ち味のような気もしますけど。
新越谷 うーん、荒川がポジティブであることなんてもうとっくにみんな知ってるから、今さらポジティブを押し売りされても笑いにはなりにくいと思うんですよね。エルフが出始めのころって、荒川がギャルなのに意外に芯食ったことを言うというキャラだったと思うんですよ。ネタ的にも、23年の1本目のスマホ配信コントとか、いい感じになってきたと思ってたんですが、勝つためにネタを叩いたことが裏目に出たというか。
編集S それこそ、粗品の言う「シャバい客」を相手に叩いてしまった。
新越谷 だから難しいと思うんですよね。こっちの方向性のほうがファンは増えるし、お笑いファン以外からの支持も増えるだろうし、単独もお祭りムードで客としても満足度の高いものになりそうな気がするわけです。粗品は「王になれる(=『M-1』だって獲れる)」という最高の評価を与えてるけど、それはあまりにもイバラの道だもんね。お笑いファンの唸らせる方向にいくのか、「お笑いあんま見ないけどエルフのライブだけは行く」という女性ファンを集めるのか、そういう選択の話だと思う。究極、演者とファンだけの閉じた世界を閉じたまま広げていくというやり方だってあるし、それは渡辺直美ちゃんがたどった道でもあるし。あとはその選択に自覚的でいられるかどうかという。
編集S うーん、そうですね。ほかに印象に残ったのは?
新越谷 電気ジュースとヤメピは今年、審査員粗品に救われたでしょうね。自信持ったと思う。
審査員粗品
編集S その審査員粗品ですが。
新越谷 はい。
編集S 功罪といいますか。
新越谷 当然、日テレはこうなることを望んで呼んでるんだから、功罪も何もないでしょう。今回、日テレがお茶の間に届けようとした『THE W』がこの形だったというだけ。
編集S あそこまで言うと思ってましたかね。
新越谷 思ってただろうし、ytvと違って点数制じゃないから、ytvほどの残酷ショーにはならないということも見越してたと思う。
編集S 日テレ側は事前に、全組粗品にコメント振るつもりだったみたいですね。どれだけ長くしゃべってもいいと伝えていたと、粗品が放送直後に上げたYouTubeで言ってました。
新越谷 結果、おもしろい番組になったと思うんですよ。ネタと粗品のコメントが1セットで、いろんな種類のお笑いの見方を紹介する番組というか。それこそYouTubeまで全部見ると、改めてお笑いのネタというものの作られ方、見方というのがわかるようになってる。
編集S 粗品の言ってることが全部正しい?
新越谷 作られ方や見方に正しさなんて必要なくて、例えばエルフのワチャワチャ伏線回収のくだりを「トータルテンボス病」って言ってましたけど、おおって思ったもんね。そういう見方があるのかと。
編集S ネイビーズアフロが唐突に刺されてましたけど。
新越谷 それはまあ、ネイビーズが型を持ってるということでもありますからね。
編集S 来年、どうするんですかね。
新越谷 呼ぶしかないと思いますけど。
編集S 呼ぶしかないですよね。
新越谷 いきなりレベルが上がるわけじゃないから、今年と似たようなピリつきになると思うけど、呼ぶしかないでしょうね。
編集S 初期『M-1』のピリつきに似てるんですかね。
新越谷 そうかもしれない。粗品って談志だったんだ。
編集S 「出てってください」とか「殺しに行く」とか言っても平気な談志がいるわけですから、出場者は幸せなのかもしれませんね。何しろ、客席や視聴者を敵に回してまで「君たちはおもしろい」って言ってくれるわけですから。
いよいよ『M-1』ですよ
編集S いよいよ今週は『M-1』ウイーク。審査員も発表されましたね。若林と石田が抜けて、駒場と後藤。
新越谷 9人制だったら、王者クラスなら誰でもいいのかなという気がしますね。審査がブレるということはないと思う。
編集S 敗者復活も去年までと同じルール。
新越谷 これもいいと思います。
編集S 恒例の予想しておきましょうか。まずは敗者復活から。
新越谷 カナメは上がったら本番で漫才できるのかな、と思っちゃうなぁ。泣いちゃってできないんじゃないのかと。
編集S やっぱカナメ応援ですか。
新越谷 ファイナルで見たいのは誰かといえば……誰だろう。なんか今年はわりとフラットというか、その日受けた組がちゃんと行ってくれたらいいなという感じですかね。好きなコンビでいえば例えば炎とか豆鉄砲とかそのへんだけど。
編集S では、優勝予想しときましょうか。1位2位3位と、爪あと枠で。
新越谷 うーん、1位エバース、2位真空、3位豪快キャプテン、爪あとヨネダ。
編集S そういえばヨネダは『THE W』回避して『M-1』ファイナルということで賞賛されてますね。
新越谷 今年に限っていえばそうだけど、実際ヨネダも過去には『W』出てたし、ちゃんと負けてるし、それでレベル云々言うのはちょっとねえ。
編集S そうですねえ。
(文=新越谷ノリヲ)
