マジ度が気になる…友近×名取裕子の2時間サスペンス映画『青池春香の事件チャンネル』識者の見立ては?

昭和から平成にかけて人気を博した2時間サスペンス(以下「2サス」)が、まさかの映画化で令和に復活。『テレビショッピングの女王 青池春香の事件チャンネル』が2月6日より全国公開される。

数多くの2時間ドラマに出演してきた女優・名取裕子(68)と、YouTubeの2サスパロディドラマ『友近サスペンス劇場』(2024)が〈全部があの頃の雰囲気すぎて笑いを超えて感動〉〈なに、この安心感〉など、その完成度の高さで驚異の463万回再生(2026年1月時点)を記録する芸人・友近(52)のW主演。共演には風間トオル(63)、中山忍(53)、東ちづる(65)ら2時間ドラマ常連の俳優陣が集結した。

2サスはおおよそ「観光地で巻き起こる殺人事件」「断崖絶壁の上で追い詰められる犯人」といったお決まりの展開で、さらに火サスといえば「ジャ、ジャ、ジャジャーン!」というおどろおどろしい音楽が有名だが、2000年代中期以降、次々にその姿を消した。しかし前述・友近の動画は大人気だし、昨年11月に本作の公開が発表されると、Xでは〈こういうの待っていた!〉と喜びの声も上がるなど、根強いファンがいるのは事実だ。
さらに本作は2サスの代名詞ともいわれる『火曜サスペンス劇場』(日本テレビ系、以下「火サス」)の名作選を今も熱心に再放送し、なんなら新作も手がけるBS日本がアライアンスパートナーに参画。また今回は「2時間サスペンス THE MOVIEシリーズ」の【第1弾】だというから、最初から長く前提の意欲作であることは確かだが、ところで――そもそもなぜ2サスは、その定型が思い浮かぶほどに多くのファンをつけたのか。

「家で楽しむ娯楽がテレビしかない」時代、主婦層を取り込んだ2時間ドラマ
2時間ドラマの先駆けは、『土曜ワイド劇場』(テレビ朝日系)。1977年、「映画館に行けない主婦のためのお茶の間映画館」をキャッチフレーズにスタートした(読売新聞芸能部『テレビ番組の40年』日本放送出版協会より/※当時は90分枠)。
元テレビ朝日局員のテレビディレクター・鎮目博道氏によれば、当時、テレビのメイン顧客は「専業主婦」。自営業でもない限り夫は外で働き、妻は家事がアタリマエという時代である。家にずっといる女性たちが、まるで映画のように楽しめるコンテンツを制作すればウケるんじゃないかという発想だった。
「2時間あると、一回で起承転結のある物語を作ることができる。視聴習慣がつき、シリーズ化すれば継続して視聴率を取りやすいという目論見もありました」(鎮目氏、以下同)
怪談モノや文芸モノなどの試行錯誤がありつつ、『江戸川乱歩の美女シリーズ』(1977〜1994)や『西村京太郎トラベルミステリー』(1979〜2022)といったサスペンスに特化すると視聴率がぐんぐん上昇。好調ぶりを見た他局が我も我もと競ってレギュラー枠を設けると、毎日どこかで2時間ドラマが放送されるほどに隆盛を極め、日本のテレビドラマ文化を象徴するジャンルとなった。鎮目氏は、その頃人気だったサスペンス小説と2時間ドラマの相性の良さを指摘する。

「当時、サスペンス・ミステリ系の小説が幅広い層で流行していたんですよね。横溝正史、西村京太郎、松本清張といった著名な作家の作品がたくさんあって原作が調達しやすかったし、ハラハラドキドキの展開で視聴者の興味を引っ張れる点も2時間ドラマ向き。ヒット作もたくさん生まれ、ゴールデンの枠として名物化しました」
しかし2サスは1970年代〜1980年代にピークを迎えると、徐々に人気が下火になっていく。
「時代の流れとともにメインの視聴者層が高年齢化し、新規ファンを取り込めなかった。働く女性が増え、“家にいてなんとなくテレビを見る層”が減ったうえ、若者には月9のようなトレンディドラマがウケるようになってきた。企画もマンネリで、視聴率は低下の一途。スポンサー集めに苦労するようになりました。元来スポンサーとして価値がある番組は、消費行動に意欲的な若年層が見ているものなんですよね。トドメはビデオやDVDのレンタルサービスやサブスクの台頭です。これら複合的な背景から、2010年代にその役目を終えました」
もともと2時間ドラマの制作は「映画」クオリティ→“回帰”は成功するか
時代に乗ったものは時代の変遷に弱いということでもあり、“オワコン”となった2サス。スクリーンに蘇ったところで商業的な成功は不透明だが、鎮目氏は本作の発表に、「その手があったか!」と膝を打ったという。曰く「2時間ドラマは、もともと映画会社のスタッフが作っていた」ためだ。同氏は、テレビ局と映画会社の切っても切れない関わりを指摘する。

「基本的に、テレビ局は親会社や関連会社に映画会社があります。ただ、邦画界は2000年代前半ごろまで不調で、映画会社には仕事がないスタッフが溢れていたんですよね。そうした人材を起用して贅沢に作られたのが2時間ドラマでした。
逆に今は地上波に枠がなくなり、スタッフや俳優が力を持て余している状態。しかも、映画の方がコンプラ面やスポンサーの顔色を伺う必要がない分、内容面も攻めやすい。地上波で半端な勝負に挑むより、劇場用に作って、終映後には配信で稼ぐビジネスの方が面白いものを作れる幅は大きいと思います。しかも本作は、セルフパロディのような形。“あるある”を楽しむエンタメコンテンツとして、2サスの新たな提案ではありますよね」
映画館に「テレビコンテンツ」が増える裏事情
久しくテレビ離れが叫ばれる一方で、バラエティ番組『有吉の壁』(日本テレビ系)発のアドリブ劇『有吉の壁 劇場版アドリブ大河 ~面白城の18人』(2026)や、鬼ごっこがモデルのゲームバラエティ番組『run for money 逃走中』(フジテレビ系)を原作としたフィクション映画『逃走中 THE MOVIE:TOKYO MISSION』(2024)など、地上波の人気企画が続々とスクリーンに進出している。
鎮目氏は「この流れは加速するのでは」と見る。
「今、局はオリジナルIPの開発や作品展開チャネルの多様化に必死です。また映画メディアがフィルムからデータに変わり、日本中の劇場がシネコンになった影響で、スクリーンに作品をかけるハードルが下がっている。ドラマの劇場版というだけでなく、局の保有する財産――人気バラエティ番組や、強いIP――を“映画”という形で再活用する挑戦は増えていくと思います」
2サスにハマった元高校生の証言「ダラダラ見ていられる様式美」
ドラマ評論家・吉田潮氏は、鎮目氏が述懐した”2サスが人気となった理由“を実感してきた一人。高校時代、「ダラダラ見ていられる様式美」にハマったという。
「見慣れてくると、最初の5分で犯人がわかる(笑)。視聴者も『この人が犯人だと思った!』とか言いながら見るんです」(吉田氏、以下同)
自分の予想が当たるかどうかを見守るだけのような視聴スタイルは、伏線張りまくり&考察させまくりの現代作品にはない、“あの頃”特有の楽しみ方でもある。
「2サスは、テレビをつけっぱなしにしている家で、なんとなく見るのがちょうどいいレベルで作られていたんですよね。難解なトリックもどんでん返しもいらない。展開が単純で、『やっぱり!』と言いながら、溜飲を下げて見終えたい。その『やっぱり』までを楽しむ時間なんです(笑)」
ドラマが弱い日テレがすがりたい、“最終兵器”としての「火サス」

さて冒頭にも触れたが、本作は『火サス』の日テレを親会社にもつBS日テレが関与しており、主題歌は同番組でお馴染みの竹内まりや「シングル・アゲイン」。2サスファンの郷愁を刺激する体制に思えるが、吉田氏は「日テレはドラマや映画が弱い」ことを指摘し、やや慎重な見方を示す。
「テレ朝は『科捜研の女』(1999〜)や『相棒』(2000〜)などシリーズものが強いうえ、映画にも力を入れているし、フジは『踊る大捜査線』(1997〜)を起点に、映画化をベースにしたドラマ作りが基本。TBSも直近は『東京MER〜走る緊急救命室〜』(2021)をヒットさせ、今年劇場版第3作が公開予定と勢いづいています。
その点日テレは、印象的な作品がない。秋元康脚本『あなたの番です』(2019〜2021)とかバカリズム脚本『ブラッシュアップライフ』(2023)のような、実力派が“仕掛け”に重きをおくドラマ作りには力を入れてきたけど、いずれも単発ヒットどまり。脚本家もシリーズも育てないんですよね」
吉田氏は、日テレの制作体制にも疑問の目を向ける。
「二次利用の権限を持つべく制作・著作を自社にしすぎて制作会社が離れたうえに、質より人気タレントの起用優先という短絡的な傾向がありました。ドラマも旧ジャニーズ勢を起用すればファンが見てくれるので、最低限の視聴率が担保されるという考えのキャスティング。それが、ジャニー喜多川の性加害問題があって(元ジャニーズ勢の出演に)スポンサーが難色を示すと、どうやってドラマをつくっていいかわからない。旧ジャニーズの人気に頼りすぎた結果、制作の力が弱るという“ツケ”が回っている感が否めません」
その他日テレのドラマが弱い理由には、“枠のイメージがない”ことも挙がる。たとえばTBS『日曜劇場』、フジ月9、NHK朝ドラ・大河など、各局に代表的なドラマ枠があるが、日テレは『火サス』以降、ピンと来ないまま。それでは、強い『火サス』をモチーフにした企画なら集客も見込めるかというと、吉田氏は「未知数だからこそ、注目はしたい」と話す。
「ちょっと見たさはあります(笑)。『2時間ドラマといえば』というコント集のような作りで、『あるある!』と盛り上がる企画としては面白い。けれど、今どれだけの人がお金を払って見に行くのかな? という気はしてしまう」
「2サス」はスクリーンで長寿シリーズになりうるのか。第1弾となる本作の反響がその後の運命を決定づけそうだが、いかに。
『テレビショッピングの女王 青池春香の事件チャンネル』
2026年製作/110分/
配給:イオンエンターテイメント、ホリプロ
全国劇場公開日:2026年2月6日
監督:白川士
脚本:渡辺典子
企画統括:菅井敦
出演:友近、名取裕子、風間トオル、加藤諒、中山忍、東ちづるほか
https://2h-movie.com/aoikeharuka/
(c)2026テレビショッピングの女王『青池春香の事件チャンネル』製作委員会
(取材・構成=吉河未布 文=町田シブヤ)