ビートたけしはなぜ許される? 芸能人の政治的発言が増えている背景

2月8日に投開票が行われた「衆議院選挙2026」は自由民主党が単独で総定数の3分の2を超える316議席を獲得する大勝に終わった。
そんな中、今回の選挙投票期間中には芸能人による政治的な発言も話題となった。
元BOØWYのメンバーでミュージシャンの高橋まことはXで《高市なんて落選してただのオバさんに戻りゃいいだけ》、《まぁ頭の悪い奈良の民がね〜》など奈良県出身の高市早苗首相を連日にわたって批判して炎上し、後日に謝罪。
お笑いコンビ・ウーマンラッシュアワーの村本大輔は自身のnoteに《高市早苗読め》と題した記事を投稿。
Xでも高市首相の写真とともに、《この選挙は狼が白ヤギのフリしてやってくる。手を白く塗り、「消費税だよ開けておくれ」と言って信用させて家に入れてもらい中に入ったら憲法改正を迫る狼だ》や《牙を剥き国民を二分するような政策をやると言ったじゃないですか、と。悪い狼はいつも消費税を利用し騙し当選してから本当の野望を果たす》などと投稿して注目を集めた。
また、俳優・橋本愛は同月3日に自身のThreadsを更新し、《本当にしんどい》や《どうしてまっとうなことを言葉にするのにこんなにも勇気が必要なんだろう 戦争しない・させない、差別しない・させない 選挙行かなきゃ 微力だろうと0じゃない、1は既に1以上の最大数の規模を孕んでいるから》と今回の衆院選への思いを綴った。
さらに、ミュージシャンのGACKTや元「TOKIO」の長瀬智也らも自身のSNSで投票を呼び掛けるアクションを起こしたが、放送作家はこう語る。
「芸能人による政治的発言といえば、2020年頃から小泉今日子さんがSNSで時の政権を批判する投稿などを繰り返して話題になりましたね。そもそも、『芸能人が政治を語る』という流れはビートたけしさんや島田紳助さん、上岡龍太郎さんら大物MC による政治や社会ネタを題材にした番組が放送されていた昭和後期の頃からありました。その後、芸能人のマルチタレント化が進み、お笑い芸人や俳優、モデルなんかが情報番組のコメンテーターをするようになると加速していったわけですが、SNSの普及により一気に増加した格好です」
もっとも、芸能界においては前述のような番組のMCを務める一部の大物芸能人を除き、芸能人が政治に口を出すことがタブー視された時代もあったという。
芸能事務所の幹部は明かす。
「ひと昔前の芸能界では『政治と宗教には積極的に関わるな』というのが“業界の常識”になっていました。無論、特定の政党を応援したり、政治信条を持つこと自体は個人の自由です。そして1960年代から70年代にかけてのフォークソングブームの背景に学生運動や反戦運動の影響も少なからずあったことは否定しません。とはいえ、芸能人はイメージ商売ですし、基本的にタレントが芸能活動をするうえで政治的発言を口にしたり、自身の政治信条を表明したりする必要はないですし、デメリットの方が大きいという判断です。それこそヘンに色がつくと仕事の幅を狭めたり、無用なアンチファンを増やしたり、場合によっては本人の意図しない形で広告塔として利用されたりするリスクもはらんでいますからね」
そのうえで、次のように続ける。
「たけしさんをはじめ、政治や社会ネタを題材にした番組のMCを務める一部の大物芸能人たちも、番組で取り上げる個々のニュースや事象についての感想や持論は口にしても特定の政党や政治団体を持ち上げたり、批判したりするような発言は極力避けているはずです。番組を盛り上げつつも特定の政治的な色がつくことを避けるだけのトーク力やコメント力を持ち合わせていますよね」
こうした背景もあり、仮にタレント本人が政治的発言を望んでも、マネージャーや所属事務所のスタッフら周囲がそれを制したり、説得を試みるケースが大半だったという。
さらに、そうした“政治的発言”の中には選挙への投票を呼び掛けるという、普通に考えれば有権者として至極真っ当なアクションも含まれていたとか。
「今回の衆院選でいえば、藤木直人さんや谷まりあさんのように総務省から正式にオファーを受け、きちんと仕事として選挙啓発のイメージキャラクターを務めているようなケースは別ですけど、芸能人のマネージメントや管理をする立場からしてみれば、自社のタレントが選挙の投票を呼び掛けるという行動ですら心地の良いものではないですね」(同芸能事務所幹部)
芸能ビジネスを展開する立場としては、所属タレントには兎にも角にも出来得る限り政治には関わってほしくないというのが本音のようだ。
前出の放送作家はこう補足する。
「芸能人に限らず、我々のようないわゆる裏方の人間に関しても声高に政治的な発言をしたり、政治信条を公にしたりするのは仕事上プラスにはならないという意識はありますよね。その一方で、ここまでSNSが普及していると芸能事務所としても所属タレントの一つひとつのSNSの投稿まで管理や把握はしきれないでしょう。まして個人事務所やフリーで活動している芸能人ともなれば周囲のスタッフの大半はいわば雇われの立場でしょうし、雇用主の本業以外の行動を制したり、苦言を呈したりはし難いでしょうからね。それに、ママタレントを筆頭に今は芸能人が当たり前のように私生活を売り物にする時代ですし、芸能界と一般社会との距離感も近づきつつあります。そういう意味では、ひと昔前に比べると政治的発言もタブー視されづらくなっているのかもしれません」
今後も芸能人による政治的発言が世間の注目を集める機会は増えていきそうだ。
(取材・文=三杉武)