『水曜日のダウンタウン』スベリ-1ドリームマッチは芸人に夢を与えたか……【週刊お笑い雑話】

今週あったお笑い界隈の話題をピックアップ! ライター・新越谷ノリヲと担当編集Sが勝手にしゃべります。お聞き流しのほどを~。
「スベリ-1」というレッテル
編集S 先週の話題は『水ダウ』スベリ-1一色でしたね。
新越谷 いろいろしゃべりたくなる企画ではありますよね。どんな角度からも味がするという。
編集S どんな角度の話からやりましょうか。
新越谷 まず前半のフィーリングカップルのくだりが、シチュエーションコメディとして完璧すぎる。いわゆる売れっ子たちにとって、目の前に並んでるのは「カレー味のウンコたち」なわけですよね。誰を選んだとて地獄、という構図が一発で理解できる。だいたいが「スベリ芸人」なのに私たちが知っているという時点で矛盾をはらんだ存在なわけですよ。普通に考えてスベる=売れない=知らない、になるはずなのに『水ダウ』自身が過去の企画で「スベリ芸人」という資産を作ってしまっているからこそ、この企画が成り立ってる。最初から矛盾と必然があるわけで、そんなのおもしろくなるに決まってる。
編集S なるほど。
新越谷 でも、赤チームと青チームは縁遠く、かけ離れた存在なのかといえばそんなことはなくて。芝やぴんくや井口は互いに「昔一緒にやってた連中」が一緒のタイミングで売れたってよく言ってるけど、青チームの芸人だって彼らにとっては同じ「昔一緒にやってた連中」なわけですよ。15年前には存在しなかった赤と青の境界が、今はテレビのド真ん中に引かれている。それどころか、コウメ太夫なんてそのころには唯一「赤」の側にいた芸人ですからね。
編集S そういえばそうだ。コウメだけ売れてて他は誰も売れてない時代があった。
新越谷 コウメが売れたことでSMAはbeachVを作って、そこから王者がバンバン出てる。あそこに出てる人たちは、その歴史をリアルタイムで目撃してる。もちろん平子と永野も見てる。だから、誰がどれだけ辛辣なことを言っても、「エンジンが死を匂わせてた」なんて今のテレビじゃ到底聞けないようなフレーズが出てきても笑いになる。実は輪の中にいないのは蓮見とガクで、MCとほかの8人は同じ輪の中にいるという景色が見えてくる。
編集S なるほど。
新越谷 蓮見はそれを察して、自分の役割を瞬時に理解したんでしょうね。小堀に対する悪態が鋭利だったのはそういうことで、芝のエンジンとか、井口とゆきおとことか、そういうところに、企画としては見えちゃいけない絆みたいなものが見えてくるんだけど、蓮見が「線を引き直す存在」として機能していく。ガクも最後の最後で、売れてる側が指名を乞う側になるというこのコメディの設計図をわかりやすく伝えている。まだ企画は前半だけなのに、ここまでホントに完璧におもしろいものが見れてしまっている。
セブンスターとコーラ
編集S 特に好きだったネタとか、あります?
新越谷 好きだったというか、おお、と思ったのはやっぱり芝と小堀なんですよね。
編集S 小堀のボケが上手い、とスタジオでも驚きの声が。
新越谷 それもそうなんだけど、井口と蓮見は自分がいつもやってることの中でスベリ芸人を使ってるわけです。井口の漫才なんて、それこそスタジオが「太だ」って盛り上がるくらいウエストランドの漫才だし、蓮見は当て書きコントで名を上げてきたようなところすらありますからね。テレ朝の深夜でやってた春日とかロッチに当て書きしたワンシチュのコントなんて才能が爆発してましたし。
編集S そうですね、いわば蓮見の必殺技でもある。
新越谷 でも、芝は違うんですよね。モグライダーのコントではない。芝は、普段やってないんです、こういうコントは。
編集S ああ。
新越谷 ともしげはこれができないから。
編集S できないですね、覚えられないし、噛むし。
新越谷 逆に言えば、芝はネタ書きとしてこっちがこれだけできるということは、誰も知らなかったわけですよ。モグライダーにこういうネタは1本もないし、1本もないから、芝には蓮見みたいな「ネタを書かせてみよう」という仕事はこない。芝にとって、こういうコントを書いてテレビでやるというのは初めてだったんじゃないですかね。
編集S それはそうかもしれない。
新越谷 で、それがこんだけできちゃう。できちゃう人だった自覚はずっとあったと思うんですよね。コント書けば書けるのに、どうしようもなくて、結果ともしげと組むわけです。普通におもしろいものを書くだけじゃ売れないという確信がないと、ともしげとはコンビ組めないわけですよ。才能を自覚した上で、それを捨てるという作業をやったタイミングがあるわけ。いわば、ともしげを選ぶという絶望ですよね。
編集S ともしげを選ぶという絶望。
新越谷 そして、絶望の中にしか正解がなかったという事実。いわば、ともしげは絶望の天使。
編集S あ、ウザくなってきましたね。何言ってんだこいつ。
新越谷 あと、最後に浜ちゃんに振ったところ。浜ちゃん老けたなぁと思っちゃって。
編集S まあ60過ぎてますしね。
新越谷 それもそうなんだけど、あまりにも興味がないんだなと思って。このあと向上委員会見てて思ったんですよ。ダウンタウンがさんまを追い越してしまったなと、これは寂しい意味でそう思ったんです。ダウンタウン世代がさんま世代を追い落とす未来を見ていたはずなのに、先にダウンタウンの息が切れてしまった。さんま、なんだかんだ言って、まだまだ若手に興味持ってやってるもんね。
(文=新越谷ノリヲ)
