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海外イベントの“杜撰な管理”が招いた悲劇、責任は誰に?

クールジャパン戦略の弊害 !? パリのイベントで不正請求騒動、被害男性が怒りの告発

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日本一、世界のジャパンカルチャー系イベントに行っているのでは? というDAIさん。ヨーロッパだけでなくアジアや南米など毎月のように海外へ渡航しているという。(撮影=DAIさん)

 2024年夏、フランス・パリで開催されたジャパンカルチャーをテーマとした大型イベントに参加した日本のアイドルグループが、ホテル代を未払いのままチェックアウト。さらに、この費用が無関係のイベントカメラマンのクレジットカードに請求され、処理されてしまうという不可解なトラブルが発生。被害者の男性は計67万円を、無断で支払わされることとなりました。

 この件は当の被害者である「DAI 」さんによってSNS上で公開され、多くの反響を呼びました。告発の過程では、ホテルサイド、出演したアイドル、イベントの運営会社、クレジットカード会社、相談した警察、そしてご本人というさまざまな立場の存在が上げられており、事態の複雑さがうかがえます。

 とはいえまず、DAIさんが理不尽な状況に置かれていることがうかがえ、ツイッター上でもバズっていました。

 事件を受けて考えさせられるのは、エンターテインメント業界の海外進出(経済産業省「第1回エンタメ・クリエイティブ産業政策研究会(事務局資料)」は、国としても実情を調査し推し進めているところでもあります。そんな状況下において、ビジネスをしていくには危ういと思える構造が見えてきています。

「日本で最も海外のイベントを取材する内の一人」と自負するDAIさんに事の経緯やその後について伺いつつ、コロナ禍明けもあって乱立する海外の日本カルチャー関連イベント事情について話を聞きました。

宿泊代8万円程度のはずがなぜか67万円!

「問題の発端は、オリンピックを直前のパリという特異な状況で起こりました。この時期、翌月から開催されるパリ五輪の影響でフランスのホテルは大混雑しており、イベント主催者がホテルを一括で予約し、参加者が個別に精算する仕組みを採用していました。しかし、通常チェックイン時にする会計が、ホテルの決済端末が故障し、支払いが滞る状況に。最終的にチェックアウト時に支払うことになったんです」

 このように、ホテル予約は一括で行うが、支払いは個人で行うことになっていたことで、結果的に責任の所在が曖昧となっていました。

 詳しい経緯はこうです。

 DAIさんが問題に気がついたのは、イベントから約3カ月後の10月のこと。クレジットカード会社から覚えのない大金の引き落としがあったので問い合わせたところ、長くて苦痛だらけの“関係者たらい回し地獄”に陥ってしまいました。

「そもそもは4泊5日の滞在で、 日本円で8万円程度と聞かされていましたし、実際にチェックアウト時の精算でもそれくらいの金額となっていました。それが同じホテルから計6回の請求がされており10万6141円の支払いが3回と、25万738円の引き落としが1回、8万4240円の支払いが1回、2万1102円が1回で、合計で67万4503円が引き落とされていたんです(すべて日本円換算)」(DAIさん)

 DAIさんが事の経緯を調べるため、ホテルを予約してくれたイベントの主催者、ホテル側、クレジットカード会社、この3者に連絡をすることになりました。

「海外とのやりとりでなかなか返事がなくてストレスを感じる中で、とんでもないことが起こっていたことがわかりました。どうやら【ホテルのスタッフがDAIさんと名前が似ていた、イベント出演したあるアイドルグループのマネージャーと間違った。そのマネージャーがグループのメンバー複数人の滞在費を支払うのを忘れ、宿泊費を取り戻すため、ホテルは自動的に足りなかった金額を引き落した】という理由で誤って私から引き落とした、というのです。しかし、私自身は退室時に精算してますし、そもそも名前が似ているからって勝手に引き落とすなんてことが可能なのか、と驚きを隠せません」

 当のホテルはパリだけではなく、世界展開していて日本にもあるホテルチェーンだ。やりとりが遅々として進まず怒りのやりどころにも困る中、イベント会社の調査によってホテル側から返金してもらうことになったのですが……。

「返金額は本来59万円ほどになるはずなのに、実際に返金されたのは52万円。不足額は7万円にも上ります。具体的には、まずは為替レートの差があったと。五輪直前だったので円ーユーロが上がっていたようです。そこはまだいいのですが、加えて数回のわたる請求となったのでそれぞれの手数料が引かれたから、とのことでした。なんで勝手に請求されて勝手に引き落とされて、しかも向こうが間違いを認めて返金したのに、私がその手数料を支払わないといけないのか、と。そのことをクレジットカード会社に問い合わせると『通常なら引き落としをキャンセルすることもできるが、すでにホテルから返金対応があってそれを受け取ってしまったのでキャンセルはできない』とのことで…。とにかくホテルによる不正な引き落としや返金に加え、手数料の負担を求められるという。イベントに参加しただけでこのような事態に陥るのは、さすがに理不尽すぎますよ」

 なすすべなくSNSに事の経緯を投稿したところ、さすがに理不尽な状態には同情の声が多くバズったとのことです。

 「7万円という金額がまた絶妙ですよね。大きな企業だったら見過ごせますが、私のような個人だと7万円あればまた別の海外イベントにいけるくらいの金額です。金額は足りてないし、理由も全く納得できないことから警察にも相談したんですが、この件での被害者は私ではなくクレジットカード会社だ、と説明されました」

 どういうロジックでそうなるのかはわかりませんが、年が明けた今も、その数万円は戻ってきていないそうです。

ホテル、アイドル、イベント会社それぞれの問題は?

 以上のように複雑な事案となってしまっているわけですが、話を聞く限りでそれぞれの立場での問題を洗い出してみましょう。

・ホテル側の問題

 ホテルは、誤請求を行った最大の責任者といえるでしょう。イベント主催者が予約を代行したにもかかわらず、個人カードへの不正請求が行われた点は、決済管理の欠陥を示しています。また、被害者が問い合わせを行った際の対応が不十分であり、返金も一部に留まるなど、不誠実な対応がみてとれます。

 今回、DAIさんがSNSに投稿したことにより知人からは同情の声が寄せられましたが、中には「ヨーロッパならしょうがない」という諦めの声もあったそう。当のホテルは日本にもチェーンがあるわけで、もうすこし真摯な対応ができたのではないでしょうか。

・アイドルグループの問題

 つづいてアイドルグループのスタッフやマネージャーは、支払い手続きを適切に行う責任があったでしょう。混雑する中、また異国でのイベントで現地での不便な状態も想像はできるが、国際的なイベントにおいてルーズな管理体制は、不要な揉め事が起こる可能性も高く、グループのブランドイメージを損なうリスクが伴います。今回、それがどのアイドルかは開示されていないが、のちに暴露されたりしてしまうこともあり得ます。

・イベント主催者の問題

 話を聞いた筆者としては、主催者にも問題があったように思えます。現地での対応が後手に回り、ホテルとの連絡や被害者へのフォローが十分でなかった点が批判対象となり得ます。特に、支払い方法に関する明確なガイドラインやトラブル時の対応策が欠如していたことが問題視されるでしょう。

 日本と海外をつなぐことをビジネスとしているならば、日本の常識では考えられないことが起こりうることを想定した対策が必要です。またパリ五輪前の混乱した状況下ならばスタッフを増員するなどの対応も必要だったのではないでしょうか。

日本エンタメの海外展開における課題

 日本のエンターテインメント業界は、国内市場の縮小を背景に海外展開を加速させています。政府も「クールジャパン戦略」の一環として文化輸出を推進しており、アニメやアイドル文化が多くの国で高い人気を誇っています。しかし、今回のようなトラブルは、海外展開の現場における管理体制やフォローアップの不備を露呈しました。

 杜撰な運営やフォローアップ不足は、参加者やファンの信頼を大きく損ないます。海外イベントでの成功は、安心感と信頼の上に成り立つものであり、運営体制の見直しが急務です。

 今回の事件は単なる一例に過ぎませんが、グローバル化が進む中での日本エンタメ業界の課題を明確に示しています。業界全体でのルール整備や管理体制の強化を進めることで、信頼を取り戻し、持続的な海外展開を実現する基盤が築かれることを期待します。

(取材=大沢野八千代)

大沢野八千代

1983生まれ。大手エンタメ企業、出版社で勤務後、ネットソリューション企業に転職。PR案件などを手掛けている。KALDIフリーク。

大沢野八千代
最終更新:2025/01/21 00:50