CYZO ONLINE > 社会の記事一覧 > 「カニカニ詐欺」の実態

「カニはいらない!」電話で一方的に購入を勧められ、断ってもまくし立てられ、届くのは粗悪品!?“カニカニ詐欺”への対応方法

「カニはいらない!」電話で一方的に購入を勧められ、断ってもまくし立てられ、届くのは粗悪品!?カニカニ詐欺への対応方法の画像1
食べる分には美味しいが、勝手に送り付けられると困る(写真:Getty Imagesより)

 カニなどの魚介類の購入を勧める電話があり、強引に契約をさせられてしまったり、断ったのに商品が届いたりするという相談が、国民生活センターに寄せられている。

 客が注文していないにもかかわらず、一方的に商品を送りつけて代金を請求する「送り付け商法」と呼ばれる手口だが、こうした海産物の電話勧誘販売や送り付けは、「カニカニ詐欺」とも呼ばれている。

 語感だけを聞くと愉快に思えるかもしれないが、実際には反社会的勢力が一般市民を騙そうとしている、極めて悪質な行為である。

『べらぼう』文書をめぐる詐欺の実態

国民生活センターも注意喚起!

「先日はありがとうございました! 以前、購入していただいたことがありますが、今も北海道物産展をやっているんですよ。サケやいくら、カニはいかがですか?」

 年末年始のある日、都内在住の男性のもとに、北海道の海鮮業者を名乗る人物から突然、電話がかかってきた。男性はこう語る。

「知らない番号でしたが、電話口で僕の名前を呼んでいたので、知り合いの居酒屋かなと思いました。口ぶりもうまく、カニは魅力的でしたが、調理の仕方がわからなかったので、『いらない』と丁寧に断ったんです。すると『もったいないですよ! 今日限りなんですよ!』とまくし立てられ、『なんか変だな』と思って電話を切りました。ネットで検索したところ、『カニカニ詐欺』の業者と出てきました」

「オレオレ詐欺」や「ロマンス詐欺」と比べると、子どもが考えたような名称で、思わず「なにそれ?」と笑ってしまいそうになるが、カニなどの魚介類の送り付け商法は全国的に拡大し、れっきとした詐欺である。

 北海道物産展を名乗り、「以前購入していただいたことがある」と言うのはお決まりの文句で、もしも「はい」と答えようものなら、海産物を代引きで送り付けてくる。その挙げ句、実際に送られてくる品物は、新鮮な北海道産ではなく、海外産の粗悪な海鮮物という、極めて悪質な手口だ。

 高齢者などは送り主からの圧に負けてしまい、断りきれないだろう。国民生活センターでも注意喚起が行われており、SNSでもたびたび被害の声が上がっている。

〈2万円以上払わせて、中身は6000円程度の品しか入っていなかった。クーリングオフのはがきを送り、電話したら屋号を間違えるお粗末な対応。北海道ではそれが2万円に値すると言うが、鼻で笑える。北海道に謝れ! 金返せ!〉

〈北海道の海鮮市場を名乗る電話があり、「以前はご購入ありがとうございました。年末セールでカニを19,800円のセットでお届けします」とのセールス。注文した覚えはないよ? こちらの電話番号、住所、フルネームを知っていて怖い。どこから漏れた?〉

〈母親が認知症発症前のフレイル期に何度か買わされて冷蔵庫に入っていて、その後も着払いで届いたのを受取拒否したりもした〉

 カニカニ詐欺は一体いつからはやりだし、誰がつくったものなのか? そして、実際に電話がかかってきたら、どのような対応をすればよいのか? 山岸純法律事務所の弁護士・山岸純氏に話を聞いた。

押し売りと類似する「カニカニ詐欺」

――カニなどの魚介類を送り付ける詐欺の手口は、珍しいものなのでしょうか?

山岸純氏(以下、山岸) いわゆる「送り付け商法」と言って、昔からある詐欺のやり口です。頼んでもいない商品を送り付けて、「受け取った以上は支払わなくては」と勘違いさせて代金を支払わせようとする手口ですね。これは、自分以外の第三者である他人が自分のために動いてくれた事実に対して、本人が引け目を感じてしまう。特に日本人は断るのが苦手です。こういった心理をうまく利用した犯罪詐欺形態です。

――悪質なやり口ですね。

山岸 実は詐欺の手段というのは、100年前から大して変わっていないんですよ。まったく新しい詐欺なんて、存在しないんですね。

――そんな昔から似たような手法で詐欺が行われているんですか?

山岸 同じような形態で「押し売り」というのが、40〜50年前からありました。昔は人が物を持ってきて「ちょっと入れてもらえますか」と言って、玄関先でいろいろ売りつける。ただ、押し売りは詐欺ではないんですよ。ちゃんと目の前で売るわけですからね。カニカニ詐欺は、それの郵送バージョンです。いきなり送り付けてきて、いらないけど申し訳ない気持ちがあるので、被害者はお金を払ってしまうという。

――そもそも、電話口の相手は自分の電話番号だけではなく、名前も住所も知っているわけですが……。これはどこから情報が漏れているのでしょうか?

山岸 一度でもインターネット通販をした経験があれば、漏れていると思ってもいいでしょう。

――えぇっ!?

山岸 例えば、Aというショッピングサイトで顧客情報の漏洩事件があったとします。そのときに「私はAではなく、Bというショッピングサイトを使っているから大丈夫」と思っても、それは違います。実はAとBは企業間で、顧客情報を共有し合うことがあるんですね。

――えっ? ダメなのでは?

山岸 いえ、利用者はショッピング時に、そのことに同意しているんです。例えばAmazonの利用規約を見ると、「お客様の個人情報については、お客様の趣味嗜好を他の同業他社と共有し、お客様が欲しいものを案内するために使用します。これに同意します」と書かれています。

――そうだったのですね……。話は戻りますが、カニカニ詐欺は、どんな人がやっているのでしょうか?

山岸 ヤクザ崩れですね。特殊詐欺を行っている犯行グループは、大抵そういったところから派遣されることが多いです。

――なるほど……。

山岸 それに、電話を使っているという点も、かなりアナログな手法ですよね。考えてみれば、ショートメールの方が楽じゃないですか? 電話は、相当な数をかけていると思います。100件かけて1件成功するかしないかくらいのレベルなので、相当手間がかかる詐欺ですよ。

詐欺に遭わない方法は電話口での対応

――電話口の相手が「北海道産で新鮮なものですよ」と言っていたのに、届いたのは外国産の粗悪品だったケースが多いみたいです。2万円で買ったのに、中身は1万円の価値にも満たないとか。

山岸 悪質ですよね。電話口では「北海道産を送りますよ」と言っていたかもしれませんが、その証拠は残っていない。粗悪品ですが、少なくともカニは届いている……。そのため、詐欺かどうかを判断するのが、とても難しいところです。

――偽物が届いているのに!?

山岸 実際に立件されにくい形態なので、詐欺グループの間ではやっているんですよね。詐欺と立件されなければ、警察も動きにくい。金額の合意がどこであったかも確認が取れませんよね。そのため、泣き寝入りになる可能性は非常に高いです。

――そもそも、届く商品の産地が違うらしいのですが、それは詐欺じゃないんですか?

山岸 産地が違うのは、景品表示法違反にあたりますね。ただ、「外国産を北海道産として売った」という表示の仕方を認知したレベルです。これはもちろん取り締まられますが、犯罪にはならないので、罪には問われません。

――なんだか悔しいですね。実際にこういう電話が来たら、どういう対処をすればいいのでしょうか?

山岸 この例で言うならば、名前を言われた瞬間に「おかしい」と思わなければいけません。知らない電話からかかってくると、「◯◯様の携帯電話でしょうか?」と聞かれますよね。その時に「そちらはどちら様でしょうか?」と聞くんです。「はい、そうです」と答えてしまった瞬間、相手が持っている情報がすべて一致してしまうわけですから。

――なるほど。すぐに「はい」と答えないということですね。

山岸 そうです。電話口の相手が聞いたこともない人や会社だったら、もうその時点で電話を切ってもいいくらいです。僕も心当たりがなかったら切ってしまいますね。

――実際に被害に遭わないためにはどうすればいいんですか?

山岸 詐欺の実態や手口を知ることしかないと思います。義務教育として、学校の授業に取り入れるべきだと私は思っています。授業で教えることで、「こういう詐欺があるんだ」と、日本国民が知るようになる。それだけで違います。「うまい話はない」というだけでなく、実際の詐欺の手口などを映像にして学んでもらうべきだと思います。

――詐欺の実態を知ることが一番いいんですね。

山岸 自動車教習所に行くと、悲惨な事故の映像を見せられますよね。交通事故を引き起こした結果、家族を失い、交通刑務所に入って、仕事も失う……。あの映像を見ることで、「運転に気をつけよう」と思うわけです。「交通ルールを守りましょう」「スピードを出してはいけません」といくら言われても、頭では理解できない。詐欺も同じで、やり口はどれも似ているため、実際の具体的な手法を見せて、国民に理解してもらうしかないのです。

――こういう詐欺は、これからもなくならないのでしょうか?

山岸 なくならないですね。詐欺というのは、その時代に合った手法を使ってくるんです。例えば石破政権が国民一人あたりに5万円を支給するというニュースがありました。これは今後、詐欺としてはやると思います。

――どうしてですか? 結局、政府は現金給付を見送りましたよ。

山岸 それでも、詐欺グループは「石破政権の緊急給付5万円受け取りがありますので、銀行に行ってください」と高齢者などに電話して騙すんですよ。彼らは手口を変えながら人を騙して生活しているわけですからね。騙されないようにするには、我々もアンテナを立てるべきです。

【女性芸能人の金銭感覚】

(構成・文=桃沢もちこ)

桃沢もちこ

1993年生まれ、愛知県出身。東京都在住のフリーライター。社会問題からトレンド、著名人のインタビュー、体験レポなど幅広いジャンルで執筆。

桃沢もちこ
最終更新:2025/05/26 12:00