六代目山口組が描く次世代体制と沈黙する離脱組織、それぞれの行方

山口組分裂問題に終止符を打ち、司忍組長を頂点のままに、髙山清司相談役、竹内照明若頭を中核とする新体制をスタートさせた六代目山口組。この新人事からみても、この3人の出身母体である弘道会が六代目山口組体制にあって、圧倒的な勢力を持っていることがうかがえる。そしてこの変化によって、弘道会の本拠地である名古屋の色がより一層強まることとなったが、組織内部から何らかの不満の声が上がっているという話は聞こえて来ない。
髙山相談役の剛腕が導いた新体制
それは、弘道会という組織がいまだに山口組の中枢を担っている証であることを意味しているのだろう。そして、その状況を次世代へとスムーズに移行できるように考えたのが、六代目山口組で長きにわたり若頭を務めてきた髙山相談役に他ならない。
「絶対的指揮官として六代目山口組を引率し、七代目に最も近い存在と見なされていたのが髙山相談役でした。ですが、自らが一線から退き、次世代の竹内若頭にバトンを託したわけです。これはなによりも、六代目山口組のため、司忍組長のためだったことの証明ではないでしょうか。誰しもがトップに立ちたいものです。ですが、髙山相談役はそうではなく、常に山口組と親分である司組長のために尽くし、そして次世代のことも考えて、後進に道を譲ったわけです。これは、なかなかできることではありません」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
六代目山口組が発足した際、組長と若頭が同じ出身母体であることに難色を示す声もあったという。だが、それは杞憂であることがすぐに明らかとなった。なぜならば、髙山相談役は誰よりも司組長からの厚い信頼を受けており、司組長に対しての忠義とその実力で、組織内の支持を集めていたからだ。そして今回、それが竹内若頭へと受け継がれたのである。
神戸山口組など離脱した勢力の今後は?
次世代に向けて注目される人事はそれだけではないと関係者は話す。それは竹内体制下で若頭補佐に昇格した六代目豪友会・加藤徹次会長だ。
「加藤会長は、豪友会の名門である坂井組の出身。若い頃から地元では有名で、山口組と一和会の抗争でジキリを賭けて、徳島刑務所に長期服役することになった。塀の中の務め方も立派で、その時代の徳島刑務所には数多くの親分衆が務めていたが、加藤会長はそうした中でも一目置かれて、ゆくゆくは組織の階段を登り詰めていく人だと同囚からも言われていたほど。事実、そこから坂井組組長、豪友会会長へと登り、今回、山口組の執行部の一端を担う若頭補佐へと昇格を果たされた」(業界関係者)
加藤会長を知る人物らは「寡黙でありながらヤクザとして筋を通し、行動力に長けており、地元でも評判の良い親分」と口を揃える。竹内若頭を支える立場として、どのような働きを見せてくれるのかに注目が集まっているようだ。
分裂問題を解消させた六代目山口組が新たな動きを見せた中で、一方の神戸山口組や池田組、絆會といった離脱した組織については、何らかの動きは伝わってこない。この点について前出のジャーナリストが述べる。
「六代目山口組の抗争終結宣言は、山口組以外の団体からの要望を受けてのこと。対して、山口組から離脱し処分された側は、何かしらの要望を他団体から受けていません。つまりは、他団体も六代目山口組を割って出た組織を認めていないということです。それは山口組から処分を受けているからです。ヤクザ社会においては、処分者を拾わない、処分者と付き合いをしないという不文律があります。そのような中で、地盤を固めて根付いていくのは不可能と言えるでしょう。現に抗争終結宣言が六代目山口組から出されるまでの何年間もの間、六代目山口組は離脱した組織を一方的に武力で攻め続け、報復はほとんど起きていません。暴力を真髄とするヤクザが守り一辺倒で繁栄はあり得ない。今後も、離脱した組織の衰退は避けられないのではないでしょうか」
10年前の夏、山口組が分裂するという空前絶後の事態に世間の注目が集まった。だが歳月と共に、離脱した組織は勢力を失っていき、多くの組員が六代目山口組へと復帰を果たしていった。
そして現在、山口組は分裂前の形へと戻り出している。そう遠くはない未来に現在、使用を禁止されている山口組総本部に組員たちが集まる日が来るはずだ。それが名実共に、分裂問題に終止符を打つ瞬間となるのではないだろうか。
(文=山口組問題特別取材班)
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