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六代目山口組と離脱組織の現在地…抗争終結宣言で何が変わったのか?

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現在も使用が禁止されている六代目山口組総本部(神戸市灘区)

 六代目山口組が今年4月に抗争終結宣言を兵庫県警に提出して以降、抗争と思われるような事件は起きていない。文字通り、約10年にわたり続いてきた六代目山口組と、そこから分裂して誕生した神戸山口組との抗争が、終結したことを意味する出来事だった。これは、神戸山口組からさらに離脱した池田組、絆會、二代目宅見組に対しても同様といえる。

あの実力者の山口組執行部入り

 「神戸山口組にしても、池田組、絆會、二代目宅見組にしても、現時点で解散はしていません。ですので、分裂問題が完全に解決したとは言い切れない状況です。六代目山口組サイドが抗争終結宣言を当局に提出したとはいえ、離脱した側、つまり六代目山口組と抗争状態にあるとして、当局から特定抗争指定に指定された神戸山口組に池田組、絆會は、何らかの動きを見せていません。ただ、だからといって抗争が継続しているとも言えない。解散や引退に至っていないものの、傘下組員の相次ぐ離脱や高齢化により、組織力は著しく衰退しており、指定暴力団の指定を解除されてもおかしくない状況です。現に二代目宅見組は現在、独立組織ながら官報において指定暴力団としては公示されていません。他団体にも、同様の流れが広がる可能性は十分にあるでしょう」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)

 警察発表によれば、神戸山口組の組員数は約120人となっている。結成時に比べれば大幅に減少しているとはいえ、120人もの組員数がいれば、組織運営的には維持が可能な規模にも見える。だが、業界関係者はこう話す。

 「実際のところ、神戸山口組に限らず、池田組も絆會も警察発表にあるような人数はもういないだろう。組員の中にはすでに引退や他団体に移籍をしている者も多く、自らが所轄署に申し出なければ、当局の登録上は更新されず、そのままになっていることが多い。池田組も絆會も、そして神戸山口組も、実際には30人を切っているのではないか」

 そんな中、神戸山口組の井上邦雄組長が4月下旬、幹部らを伴ってJR新神戸駅に姿を見せたことが、業界関係者の間で話題となった。

 「六代目山口組サイドが抗争終結宣言を提出したことで、井上組長らもある程度、警戒心を解いたのかもしれません」(前出のジャーナリスト)

 一方の六代目山口組は、竹内照明若頭(三代目弘道会会長)の就任後、新体制を確立するべく活発な動きを見せ続けている。

 「竹内会長は若頭就任後、若頭補佐や幹部の増員など、矢継ぎ早に人事を発表しています。今後もさらなる人事や組織改編があるのではないかという噂もあります。五代目吉川組や二代目一道会のように総裁制も導入されました。時代に沿った組織改革を行いながら、同時に組織の若返りも図り、新体制が動き出しているということでしょう」(同)

 これで、六代目山口組の象徴的な存在である神戸市灘区の総本部が、特定抗争指定による使用制限から解放されれば、分裂問題を乗り越えた新体制の山口組が帰ってくることになる。

 ただし、その日が本当に訪れるのかは不透明だ。法律に詳しい専門家は次のように語る。

 「組事務所の使用制限を解除するには、特定抗争指定の解除が前提です。そのためには、対立組織が解散するか、または指定暴力団としての認定を外されるほどまでに組織力が衰退する必要があります。これらの条件が整えば、かつてのように事務所を使用し、人数制限なく組員らが集まることも可能になります」

 その日がいつになるのかは定かではないが、六代目山口組はこの間も歩みを止めることなく、着実に組織改革を断行していると言えるのではないだろうか。

(文=山口組問題特別取材班)

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山口組問題特別取材班

ヤクザ業界をフィールドとする作家、ライターおよび編集者による取材チーム。2015年結成。同年に勃発した六代目山口組分裂騒動以降、同問題を長期的に取材してきた。テレビや新聞などでは扱いにくいヤクザ組織の内部情報にも精通。共著に 『相剋 山口組分裂・激動の365日』がある。

山口組問題特別取材班
最終更新:2025/06/21 12:00