CYZO ONLINE > 社会の記事一覧 > 困窮する外国人の支援者が高市政権に感じた環境の変化

「人助けに国境は関係ありません」困窮する外国人の支援者が高市政権発足後に感じた「環境の変化」

「人助けに国境は関係ありません」困窮する外国人の支援者が高市政権発足後に感じた「環境の変化」の画像1
大澤優真氏

 2月8日に投開票が行われた衆議院選挙では、外国人政策が論点のひとつとなり、「移民の制限」に言及する候補者が一定の票を得た。さらに、XなどのSNSには、より直接的に移民排斥を唱える投稿が氾濫している。このような現状に憂慮の念を抱くのが、「一般社団法人つくろい東京ファンド」や「NPO法人北関東医療相談会」を中心に活動する大澤優真さん(33)だ。さまざまな事情で安定した住居のない人たち、特に難民申請中や仮放免といわれる日本に住む在留資格のない困窮する外国人の生活支援に力を入れている大澤さんに、いま、外国人支援の現場で起きていることを聞いた。

家賃保証会社の審査に落ちる理由とその仕組み

――今回の選挙に当たっても、「移民NO」を唱える候補者が目立ち、SNS上でも移民排斥の投稿が多数ありました。そのなかで、大澤さんが活動する「つくろい東京ファンド」など11団体は1月26日に「衆議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対する緊急共同声明」を出しましたが、何を訴えたのでしょうか?

大澤 2025年7月の参議院選挙では、外国人に対する明らかなデマが声高に主張されましたが、一方でそれが本当に事実に基づいているのかというファクトチェックも進んだと思います。その結果、外国人のせいで治安が悪化しているとか、外国人が社会保障をタダ乗りしているといったあからさまなデマは、今回の衆院選では減り、党首クラスの責任ある立場の人は言わないようになっています。ただ、その分もう少し洗練された言い方、「そういうケースもあると聞いている」とか、「一部の外国人が」とか、ミスリードを誘う言い方をあえてしている候補者は今回もかなりいました。依然として誤解を招く表現がなされていることとともに、今年1月に政府が出した「外国人の受け入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」について、おかしい部分をファクトベースでお話ししました。

――Xでは外国人や移民に対する差別的な投稿が多く見られます。

大澤 そうですね。そのような投稿をしている人のなかには、真面目にそう信じて書いている人もいると思いますが、排外的な感情を持つ人を利用している一部の政治家、単にSNSで拡散されるとインプレッションに応じてお金が稼げるからやっている層など、さまざまな人がいると思います。

――Xでよく見られる、外国人は生活保護を受けやすいというのはデマなのでしょうか?

大澤 その通りです。厚生労働省の「被保護者調査」によれば、生活保護利用世帯の中で世帯主が外国籍のケースは2.9%。むしろ外国人の生活保護の運用はかなり制限されています。そもそも外国人は生活保護法に基づく保護は利用できず、生活保護法の準用措置というものが認められているだけです。この準用措置は適法に日本に滞在する永住者、定住者などの在留資格を有する外国人にしか認められておらず、日本人と違って不服申し立てをすることもできません。たとえば、最近私たちが保護した外国人で、日本人の夫からDVを受けて、逃げ出して生活保護を申請したら夫のところに戻りなさいと却下されてしまった人がいました。しかし夫のところに帰ると暴力を受けるのでとても帰れず、かといって母国に戻る飛行機代もありませんでした。日本人だったら生活保護を却下されたら不服申し立てができるのですがそれもできず、病気をしていて食べるもののなく、路上生活寸前のところを私たちが保護しました。

寒いなかで路上生活をしていた妊婦も

――「つくろい東京ファンド」では生活に困窮する外国人を支援しているとのことですが、たとえばどのような人がいるのですか?

大澤 ある南米出身の方は政治的な対立から母親と弟を殺され、さらにその死体は見せしめに街中で引き摺り回されたそうです。このままでは自分も殺されてしまうと、貯めていたお金で飛行機のチケットを買って国々を点々としましたが難民として保護されず、日本に辿り着きました。いまは日本で難民申請を試みていますがシェアハウスにも入れず、ネットカフェで暮らしています。

 また、ある方は夫婦で日本に逃れてきたのですが、妻は妊娠していました。RHQ(難民事業本部)に保護費の申請をしたのですが決定せず、寒いなかで路上生活をして公園のゴミ箱から食べられるものを探して生き延びていました。私たちが支援することでようやくRHQへの再申請が通り、子供は無事生まれ、生活はようやく安定してきました。

――高市政権が発足してから、外国人の人たちの置かれた状況は変化しているのでしょうか。

大澤 高市政権発足後というよりは、「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」というものが石破政権下の2025年5月に公表され、「不法滞在者」をゼロにすると表明されましたので、そこから地続きの政策が実行されているという感じです。石破さん自身は自民党内ではリベラルだと言われ、排外主義を否定していましたが、そんな石破政権下でこのゼロプランは最終決定されています。

――どのように強制送還されるのですか?

大澤 私が支援していた人の中にも強制送還された人がいましたが、仮放免の更新の際などに、入管から呼び出されていくと、「あなたにはもう仮放免は更新されません」と言われてそのまま収容されて、翌日くらいに飛行機に乗せられて帰されてしまうようです。私の知っているある家族は父親だけがビザが出ずに強制退去されて、日本に残されることになった妻と子供は泣き崩れていました。

存在を否定されていると感じる

――最近の外国人や移民に対する排斥論を聞いて、外国人たちはどのような思いをしているのでしょうか。

大澤 私が支援している外国人は日本語があまり理解できない人が多いですが、日本語ができる方では、正式に在留資格を持っている方でも、外国人はルールを守らない悪い人たちであるという言説を聞くと、生活の基盤が日本にあって日本にしかいられないけど、いてはいけないのだろうか、と存在を否定されているような気がすると言っていました。実際、外国を排斥するような言説は、当初の在留資格がない人を指していた段階から、いまは在留資格がある人や帰化した人まで政治に参加してはいけないと言う人たちが現れ、対象が広がっていますからね。

――外国人が日本人の仕事を取ってしまって日本人が仕事にあぶれるということを、移民NOの理由として唱えている人もいます。

大澤 移民が増えるともともとその国にいた人の雇用が減るかどうかについてはさまざまな研究があるのですが、日本に関していえば、明らかに人手不足ですよね。特に地方などで労働力が足りないからこそ、自民党が率先して技能実習や特定技能、現在は育成就労という制度を作り、さらには留学生も実質的には労働力として使って外国人を受け入れている。地方の産業はもはや外国人がいないと成り立たないという現状があるからこそ、全国知事会も2025年11月に「多文化共生社会の実現を目指す全国知事の共同宣言」を出したのだと思います。日本人がやらない大変な仕事を外国人が引き受けてくれているという現状はどこから見ても明らかだと思います。

――そういったなかで外国人排斥の声が高まるのは、日本全体が他人のことを思いやれない社会になっている証左のような気がします。

大澤 それはありますね。路上生活でご飯もない難民を保護しましたなどとXに投稿すると、「帰ってもらえ」とか「お前の金でやれ」とかよく書かれるのですが、目の前で寒いなか路上生活をしている人がいるときに、少なくとも私が初めに聞くのは「大丈夫ですか」「病気はないですか」「ご飯はありますか」ということであって、「国籍はどこですか」と最初に聞いて日本人なら助けられるけどアフリカのどこかなら助けません、とはならないです。自己責任だとか国へ帰れとシンプルに言い切るのは楽だと思いますが、そんな単純なことではないと思います。

――そんななかで、つくろい東京ファンドでは現在「制度のはざまにある日本人・外国人の住まいと健康を支えたい!」というクラウドファンディングを行なっていますが、これはどのような理由で始めたのでしょうか?

大澤 とにかく今は支援団体にお金が足りておらず、つらい話ですがいま困窮者のためのシェルターを減らさざるを得ず、家賃支援もだんだんできなくなっている現状があります。クラウドファンディングで300万円が集まれば、日本人外国人問わず困窮者のためのシェルターの維持費に90万円、家賃支援金に100万円(5万×20世帯)、エアコン/暖房関連支援費に60万円(10万×6世帯)、医療相談会の運営費補助に50万円を使わせていただきます。外国人だけでなく日本人も支援しています。生活に困窮しているという状況を見た時にその人の国籍は関係ない。誰でもお腹は空くし病気になるから支援が必要だということを、どうか理解していただきたいと思っています。

大澤優真(おおさわ・ゆうま)
ソーシャルワーカー。1992年、千葉県生まれ。法政大学大学院人間社会研究科博士後期課程修了。博士(人間福祉)。大学非常勤講師。2014年より生活困窮者支援団体「つくろい東京ファンド」生活支援スタッフとして、夜回り、ホームレス状態にある人のシェルター入居支援、シェルターからアパートへ移った人への地域生活支援を行う。また、2018年より困窮外国人支援団体「北関東医療相談会」事務局スタッフとして、仮放免者など困窮する外国人の支援を行う。
X:@yumananahori

元・家賃保証会社社員が語る壮絶な現場

(構成=里中高志)

里中高志

フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、週刊誌記者などをしながら、大正大学大学院宗教学科修了。精神障害者のための地域活動支援センターで働き、精神保健福祉士の資格を取得。メンタルヘルス、宗教などのほか、さまざまな分野で取材、執筆活動を行う。著書に『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)『栗本薫と中島梓 世界最長の物語を書いた人』(早川書房)、『触法精神障害者 医療観察法をめぐって』(中央公論新社) がある。

X:@satonak1

最終更新:2026/02/11 12:19