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海外の映画祭で大評判を得た意欲作『カオルの葬式』が東京に凱旋! 岡山県の葬式で繰り広げられる破天荒な人間ドラマ

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映画『カオルの葬式』より
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 葬式は人生の総決算であると言われるが、同時に主役は決して参加することができない、という不思議な儀式である。もっとも、ある種の共通理解としては、主役はどこかからその儀式を見ていて、立ち会っているとも言われているが……。

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 9月5日(金)よりキネカ大森にて東京凱旋上映される『カオルの葬式』は、イタリアで開催される『Religion Today Film Festival2025』のコンペティション部門に正式選出されたほか、2024年に日本、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジア、中東など世界各地の映画祭で上映され、高い評価を獲得した作品だ。このたび、東京での凱旋上映にあたって9月6日(土)にキネカ大森で開催される観客参加型イベント「しゃべれ場」では、観客を交えた笑いあり、真剣なトークありの対話が開催される予定となっている。

 映画はエンバーミングを施される遺体と、デリヘル店の風俗嬢に乱暴を働く客、そして地獄を描いた仏教画といったなにやら不穏なイメージの重なりから開幕する。いまはデリヘルの運転手をしている横谷のもとに、10年前に離婚した元妻・カオルが亡くなり、彼女の遺言により自分が喪主として指名されていることが知らされる。カオルの故郷の岡山に赴いた横谷が出会うのは、ひと癖もふた癖もある葬式の参列者たち。複雑な人間関係が交錯する中、嵐の夜に事件が起きる……。

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映画『カオルの葬式』より

 伊丹十三監督の『お葬式』、ルイ・マル監督の『五月のミル』など、葬式を舞台とした映画に傑作は多いが、本作も個性的な音楽や意欲的な演出で観る者の感興を誘う。ローカルな岡山県を舞台にしながらも、本作はスペインとシンガポールと日本の合作で、スタッフにはスペインの映画人を起用し、キャスティングはすべてオーディションで行うなど、意欲的な作り方をしている。監督・共同脚本・プロデューサーの3役を務めた湯浅典子監督によると、本作の企画は彼女の友人であるドラマ・プロデューサーの死をきっかけに始まったもので、監督が祖母の葬儀に出席した時に経験した情景からもインスピレーションを得ているという。

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映画『カオルの葬式』より

 映画の中で、葬儀会社を営む人物が、横谷に「ほんまのところ、亡くなった人の思いは誰にもわからんですよ。人が亡くなるいうのは天変地異と一緒ですけんね」と言うシーンがある。確かに主役にとっては葬儀はひとつの終幕だが、参列者にとってはその後も続いていくのが人生というもの。そんなことも感じさせる一方で、ひとりの人間を送り出す葬式という儀式のエピソードに挟まれる、生前のカオルが登場する映像が瑞々しい。型にはまった作品が多くなりがちな日本映画界において、制作方法も出来上がった作品も型破りな本作を通して、葬式という主役不在の舞台で繰り広げられる人間ドラマを堪能してみてはいかがだろうか。

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(文=里中高志)

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映画『カオルの葬式』より

『カオルの葬式』
出演:関幸治、一木香乃、新津ちせ、原田大二郎、黒沢あすか、足立智充、田中モエ、滝沢めぐみ、川島潤哉、蔵本康文、木村知貴、大岩主弥、錫木うりほか
プロデューサー:シモエダミカ
アソシエイトプロデューサー:福武孝之
脚本:西貴人
監督・共同脚本・プロデューサー:湯浅典子
音楽:ジョアン・ビラ
共同プロデューサー:江部亮、ジャスティン・デイメン、久松 猛朗
製作/制作プロダクション 宣伝配給:PKFP PARTNERS
© PKFP PARTNERS LLC.
https://yuasan1203.wixsite.com/pkfppartners

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里中高志

フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、週刊誌記者などをしながら、大正大学大学院宗教学科修了。精神障害者のための地域活動支援センターで働き、精神保健福祉士の資格を取得。メンタルヘルス、宗教などのほか、さまざまな分野で取材、執筆活動を行う。著書に『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)『栗本薫と中島梓 世界最長の物語を書いた人』(早川書房)、『触法精神障害者 医療観察法をめぐって』(中央公論新社) がある。

X:@satonak1

最終更新:2025/08/27 22:00