『ホーム・アローン2』はクリぼっちに最適映画 天才子役マコーレー・カルキンのその後は?

もうすぐクリスマスですど、特に予定はなく、自宅でひとりで過ごす人も少なくないと思います。そんな「クリぼっち」な人のために、『金ロー』こと『金曜ロードショー』(日本テレビ系)がこの季節の定番にしているのが、コメディ映画『ホーム・アローン』(1990年)です。天才子役マコーレー・カルキンがひとりぼっちのクリスマスを満喫し、さらには泥棒たちを撃退してしまうお話です。
昨年の12月22日は、『ホーム・アローン』の第1作を放映しました。今年の『金ロー』最後の放映となる12月20日(金)は、主演のマコーレー・カルキンが続投した『ホーム・アローン2』(1992年)を放映します。気軽に楽しめて、ちょっぴりハートウォーミングな要素もあるので、ぼっちな人たちにもおすすめできる内容です。
前作はクリスマスシーズンでがらんとしたシカゴの高級住宅街が舞台でしたが、『ホーム・アローン2』はクリスマスで賑わうニューヨークで冒険活劇が繰り広げられます。前作に続いて登板したクリス・コロンバス監督はキッズ版インディ・ジョーンズ『グーニーズ』(1985年)で知られ、『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年)などもヒットさせています。コロンバス監督が撮るキッズムービーは安定した面白さがあります。
ジョン・ヒューズ脚本ならではの天邪鬼キャラ
もうひとり忘れてならないのは、このシリーズの脚本を担当しているのがジョン・ヒューズだということ。シカゴ出身のジョン・ヒューズは、『すてきな片想い』(1984年)や『ブレックファスト・クラブ』(1985年)といった青春映画の脚本&監督として活躍した才人です。1980年代、イケイケ時代のフジテレビはおしゃれなトレンディードラマで大ブームを巻き起こしますが、ジョン・ヒューズ作品からの影響が大きかったように思います。
マコーレ・カルキンが演じる『ホーム・アローン』の主人公・ケビンは、家族の中では厄介者扱いされている末っ子で、クリスマス旅行に出かける家族からひとり取り残されてしまいます。ところがケビンは置き去りにされたことを悲しまずに、自由気ままに過ごせると大喜びするわけです。
ひねくれた性格のケビンですが、第1作ではお隣に住む独居老人と仲良くなり、息子とケンカ別れしたまま関係を修復できずにいる老人に「勇気を出して電話してみたら」と背中を押すんですよね。身内には素直になれないけど、家族以外の人には天使的な存在になるというケビンの天邪鬼なキャラクターは、ジョン・ヒューズならではの脚本でしょう。
1980年~90年代に青春を過ごした世代は、ジョン・ヒューズ作品にずいぶん楽しませてもらったものです。その後、ジョン・ヒューズはシカゴで隠遁生活を送り、「映画界のサリンジャー」みたいな存在となっていきます。2009年にジョン・ヒューズが亡くなったときは驚きました。息子と生まれたばかりの孫に会うためにNYを訪ねた際に、心臓発作で急逝したそうです。59歳でした。
クソ生意気な主人公にぴったりなマコーレー・カルキン
世界中で大ヒットした『ホーム・アローン』に続く、続編『ホーム・アローン2』も、ストーリー展開はほぼ同じです。クリスマスシーズンとなり、一家はフロリダ旅行へと向かいます。今回はケビンも空港までは一緒だったものの、ひとりだけ間違ってNY行きの便に乗ってしまいます。
父親のクレジットカードを使って、高級ホテルで豪遊するケビンでしたが、前作の泥棒二人組(ジョー・ペシ、ダニエル・スターン)に街で遭遇してしまいます。泥棒たちがクリスマス商戦で潤うおもちゃ屋を狙っていることを知ったケビンは、今回も泥棒たちに立ち向かいます。
クソ生意気なんだけど、子どもらしい無邪気さ、無防備さも感じさせるケビン役に、マコーレー・カルキンはぴったりでした。
前作では独居老人と仲良くなったケビンですが、今回はNYのセントラルパークで暮らすホームレスの鳩おばさん(ブレンダ・フリッカー)と友情を育むことになります。ケビン自身が家族のはみ出し者であり、社会からドロップアウトした人には本当に優しいんですよ。まぁ、泥棒たちには容赦ないんですけどね。
クリスマスを家族や仲間たちと盛り上がるのもいいけど、いろいろと事情があって孤独に年末年始を過ごす人もいるわけです。そんなぼっちな人たちを思いやるケビンこそ、クリスマス精神の体現者じゃないですか。
すっかりおじさんになった人気子役の今
ケビン役を2作続けて演じたマコーレー・カルキンは、天才子役として大人気を集めました。しかし、高騰したギャラの取り分をめぐって、両親は泥沼裁判に。そのことからマコーレー・カルキンは俳優業を一時引退。10代でアルコール依存症となり、20代で薬物所持で逮捕。死亡説がたびたびSNSで流れるという転落人生を味わっています。
日本では神木隆之介や芦田愛菜ら元人気子役たちが、うまくセルフプロデュースして、成人後も演技派俳優や人気タレントとして活躍しています。マコーレー・カルキンという参考にしちゃいけない前例があったから、作品選びや学業との兼ね合いなど、本人も家族も所属プロダクションも慎重に考えるようになったんじゃないですかね。
その後のマコーレー・カルキンですが、40歳を過ぎたおっさんとなり、現在はテレビドラマを中心に俳優業を続けているようです。2021年には女優のブレンダ・ソングと婚約し、2人の子を持つ父親になっています。自宅で子どもと一緒に『ホーム・アローン』を観ることもあるそうです。
つらい孤独な時期も味わったマコーレー・カルキンですが、今ではよき父親になっています。そのことを知っていれば、今夜の『ホーム・アローン2』はより安心して楽しめるのではないでしょうか。
(文=映画ゾンビ・バブ)