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AKINOソロデビュー20周年インタビュー#2

「一万年と二千年前から愛してる」AKINOが繋ぐ国境を越えるアニソンのメッセージ

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AKINO
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 15歳で歌い上げた『創聖のアクエリオン』から始まり、振り返ればアニソンにとどまらない軌跡をたどってきたAKINO。その歌声はいまや国境を越え、南米・ヨーロッパ・アジアへと響き渡っている。10万人を熱狂させる海外イベント、現地アーティストとの涙のコラボレーション、そしてファッションやアップサイクルを通じた新たな表現――。

 AKINOが見つめるのは、アニソンの未来と、自らが切り拓く“次の20年”。世界のファンとともに育まれる「音楽の力」と「愛のメッセージ」を、彼女はいまどんな想いで届けようとしているのか。

「ただ生歌だけじゃダメ」

日本語を知らない南米のファンが日本のアニソンを歌う

――前編では、大ヒット曲『創聖のアクエリオン』と共に歩んだキャリアについてうかがいました。後編では、ご自身の活動の場を海外にも広げられているAKINOさんから見た、世界のアニソンシーンとその未来についてお聞かせいただければと。

AKINO  海外のアニソンイベントには、本当に頻繁に呼んでいただいています。最近もブラジルに行ってきました。10万人以上が来場する『Anime Friends』というイベントで、そこに集まる人々の熱量が本当にすごいなと。

 お客さんと触れ合う中で、「アニソンは人の人生を変えているんだな」と強く感じます。「アニソンのコミュニティがあったから、人生を諦めそうになったけど生きている」「仲間や音楽、全てがあるから自分がここにいる」といった話を聞くと、音楽が持つ力の大きさを改めて感じますね。

――日本と海外のファンで、熱狂の仕方に違いなどは感じますか?

AKINO 日本ではたくさんのアニソンイベントがあって、好きなアーティストに比較的会いに行きやすいですよね。でも海外、特に南米などでは、年に一度開催されるアニメイベントが彼らにとって、本当に全てなんです。その日のために1年間ずっと楽しみにして、やっと来られた”一年のご褒美”のようなものという話も聞きます。だからこそ、一回のイベントに注ぐエネルギーが何倍にもなっているように感じます。

 日本に行ったこともない、日本語も知らなかったみんながアニメを見て、アニソンを聴いて日本語を覚えて、イベントで一緒に歌ってくれる。その姿を見るたびに毎回感動しますし、「私の日本語より上手じゃない?」と思うこともたくさんあります(笑)。

――なぜ、日本のジャパニメーションやアニソンはこれほどまでに世界で愛されているのだと思いますか?

AKINO 私が思うのは、やっぱりアニメから伝わるメッセージの力ですね。綺麗ごとだけではない、苦しみや悲しみといった人間のリアルな感情がアニメの中には詰まっています。そして、そのアニメを代表しているのがアニソン、主題歌だと思うんです。どんなに長いシリーズでも、オープニングとエンディングの主題歌3分間がその全てを凝縮して表現している。だから、アニソンはその人たちの人生を変えるほどの力を持つし、一緒に歌いたくなるんだと思います。

まだまだ足りない日本のアニソン支援

――AKINOさんから見ても、アニソンというジャンルは独特だと感じますか?

AKINO とても独特だと思います。私の中で最初アニソンはアイドルや声優さんが歌うかわいいもの、という印象でした。でも、色々なアーティストのライブを見ると、ロックもあれば、オペラ的な曲、ゴシック系だってある。アニソンには音楽のジャンルというものがなく、本当に幅広くて飽きないです。

 そして、どの曲もすごくドラマチック。サビでは疾走感があったり、みんなを盛り上げるような作りになっている。それは、アニメの世界観や物語を表現することが一番の目的だからなんだと思います。なので、アニソンシンガーの人たちは歌唱力もすごく高い方が多いですし、高音やシャウトなど、勉強になることはたくさんあります。

――これほどの世界的ブームになっている中で、日本のエンタメ業界に対して「もっとこうすればいいのに」と感じる部分はありますか?

AKINO  こんなに海外でブームになっているのだから、アニメやアニソンを国がもっと全力でサポートしてほしいなと思います。このチャンスをうまく使えていないと感じることはありますね。

 それと、もっと海外の人たちとコラボレーションしないといけないな、とも感じています。海外に行くと、日本人は日本人だけで固まってしまうことも多くあります。でもそうではなくて、現地の文化をもっと知ったり、現地のアーティストを巻き込んで何かをしたり……。そのもう一歩を踏み出せたら、お互いにもっと深く知り合えるんじゃないでしょうか。

 私が行ったブラジルでも今回、現地のアーティストとコラボする機会があったんです。言葉は通じなくても、音楽でひとつになれる。ステージ上でお互いを応援し、ハグをして、実際に泣いている人もいる。音楽でその感情を引き出せて共有できるのは本当に素晴らしいですね!日本でもそういうコラボの機会が増えれば、さらに幅広くなるんじゃないですかね。

自分が切り開かない限り、新しい方向性は見えてこない

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AKINO

――最後にソロデビュー20周年を迎えられたAKINOさんの、今後のビジョンについてお聞かせください。

AKINO  20周年はめちゃくちゃ嬉しいですが、この後のほうがきっと大変だろうな、という思いもあります。自分が道を切り開かない限り、新しい方向性は見えてこない。だから、一人の大人として、本当の意味で音楽を歌いたいなと思っています。今まで出したことのない声や表現でもっと多くの人の心に繋がるような曲を歌ったり、もしかしたら自分でも曲を作ったりしていけたらいいなと。

 あと、音楽活動と並行して、最近はアップサイクルファッションの制作にも力を入れています。ファンの方からいただいた空き缶のプルタブや使われなくなった日本の着物といった、本来であれば捨てられてしまうものを素材にして、新しい命を吹き込んだ衣装を自分でデザインしているんです。シンガポールのアニソンイベントでそのファッションを展示した時には、沢山の人からすごく面白い反応をいただいて嬉しかったですね。

 そして、その活動の集大成として、8月16日と17日に川崎市コンベンションホールで、私たちが企画する『アップサイクルフェス』というイベントにも参加しました。当日は、私が手がけた衣装をモデルさんに着ていただいて、私の歌と融合させた新しい形のパフォーマンスを披露しました。音楽だけでなく、ファッションという形でも何か新しい価値を創造して、メッセージを伝えていけたらいいなと思っています。

 私は英語もできるので、海外でもっと現地のことを知って、彼らのパワーをいただいて日本に持って帰ってきたいです。そして、アメリカでも、アニメと同じくらい(アニソンを歌っている)アーティスト自身も大きくなれたらいいな、という思いもあります。世界に向けて曲を発信し、色々なチャレンジをしながら自分も成長して、新しい世界を見たいですね。

(構成=須賀原みち)

日本のアニソン、K-POPを超える

AKINO(あきの)
歌手。アメリカ・ユタ州出身。卓越した歌唱力を誇る兄妹コーラスグループ「bless4」のメンバーとしてデビュー。2005年、15歳でテレビアニメ『創聖のアクエリオン』の同名オープニングテーマでソロデビュー。同曲はミリオンヒットを記録し、一躍その名を知られる。以降も「AKINO from bless4」として『アクエリオンEVOL』『艦隊これくしょん -艦これ-』など、多くのアニメやゲームの主題歌を担当。2025年にソロデビュー20周年を迎え、近年は音楽活動に加え、アップサイクルファッションの制作も手掛けるなど、多彩な才能を発揮している。

◆公式SNSなどはこちらから:https://linktr.ee/bless4

須賀原みち

フリーの編集・ライター。主な執筆分野はエンタメカルチャー、ビジネス、LGBTQなど。

須賀原みち
最終更新:2025/09/12 19:48