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「RESOUND CLOTHING」代表デザイナー・梅本剛史のカルチャー✕ファッション考現学

【対談】丸山ゴンザレス×梅本剛史 |アウトローとファッションの密接な関係

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梅本剛史氏(右)と丸山ゴンザレス氏(写真:宇佐美亮)

メンズブランド「RESOUND CLOTHING」を率いるデザイナー・梅本剛史が、カルチャーとファッションの関係を読み解く本連載。最終回となる今回は、旧知の仲である丸山ゴンザレス氏を迎え、「アウトローとファッション」をテーマに語り合った。

ギャングの足元にあるコルテッツ。半グレが身にまとうハイブランド。なぜフードを被り、キャップを深くかぶるのか。それは流行か、それとも生存のための選択か。世界の裏社会を歩いてきた丸山氏の経験を手がかりに、その境界線を探る。

運動靴がカルチャーになる瞬間

なぜヤンキーのオシャレは賞味期限が切れる?海外アウトローとの決定的な差

丸山ゴンザレス(以下、丸山) 今回は「アウトローとファッション」がテーマですけど、この2つのトピックは親和性が高いんですよ。世界中のどの街でも、アウトローは「その街のかっこいいヤツら」ですから。日本は少し特殊で、違う部分もあるんですけど。

梅本剛史(以下、梅本) 何がどう違うんですか?

丸山 日本のヤンキーの先輩って、中学・高校時代はカッコよくても、大人になると「何か違うな」って思われる時期が来るじゃないですか(笑)。でも海外は違って。アメリカでも中南米でもイタリアでも、地元の不良のストリートファッションは、ずっとトレンドの中心なんです。

アウトローの人たちがどんな服を着ているかについては、やっぱり「見栄え」を気にする人が大半なので、流行のハイブランドを着ている人はどこの国でも多いですね。

梅本 いわゆる「イキリ」ですよね。やっぱりオシャレって、「目立ちたい」「モテたい」って気持ちの延長線上にあるものだと思うんですよ。僕はバンドマンでしたけど、バンドマンの連中もモテたいからオシャレをしてましたし、それは今のアウトロー的なヒップホップの連中でも同じやと思います。

丸山 そういう個々人のオシャレが集団レベルまで広まる中で、自分たちがアウトローであることを示す象徴的なアイテムが生まれることもあるんですよね。アメリカではそうやってコルテッツがギャングファッションのアイテムになりました。またバンダナは、彼らが所属するチームやカラーを象徴するアイテムとして有名ですけど、地域によっては「どのポケットに入れるか」までシビアなルールになっている場合もあります。

梅本 見た目で違いを見せるわけですね。日本でもヤクザの方々が似たようなカッコしてますし。

丸山 ヤクザも世代によって服装がぜんぜん違うけど、いちばん上の世代の人たちは麻生太郎さんみたいな感じが多いです。スーツをベースにしたファッションをカッコよく着こなせないと、下の人間たちもついてこないんでしょう。一方で若い半グレとか特殊詐欺グループみたいな人たちは、上から下までハイブランドで固めてる人が目立ちます。

梅本 ヤクザの方々のスーツも、行くとこまで行くとゼニアみたいなほんまの高級ブランドになるんでしょうね。ゼニアはそもそも生地屋(テキスタイルメーカー)ですけど、ゼニアのレベルのウールになると生地代が1メーター100万円になることもありますから。

丸山 ヤバいね(笑)。肌触りや質感の違いは、他の生地と並べたら分かるものなんですか?

梅本 並べてしっかり見たら分かりますけど、まあ何となく見る分には気づかれないでしょう(笑)。

特攻服はサルエルパンツ? カーハート、ディッキーズが越える国境

梅本 ヤンキーの特攻服もファッション的に分解して見ると面白いんですよ。特攻服って、言っちゃえば上は長ランで、下はニッカポッカがベースやないですか。そこにミリタリーの要素を足してる感じですよね。

丸山 ちなみにニッカポッカみたいな日本の作業服は、寅壱(作業服のブランド)が海外に売り込もうと頑張ってますよ。

梅本 ニッカポッカも見ようによってはサルエルパンツやし、乗馬のジョッパーズパンツにも近いですからね。普通に「オシャレなもの」として受け入れられる可能性はあるんやないですか?

丸山 それとは方向が逆なのがカーハート。日本だと「街で着るワークウエアブランド」のイメージですけど、アメリカだと普通に作業服として着られてますからね。でもペンキが付いちゃってる感じとかが、日本人からするとカッコいいんですよ。

梅本 カーハートとかディッキーズって、日本に置き換えたらまさに寅壱みたいなブランドなんでしょうけどね。今やそのカーハートもメゾンブランドとコラボとかしてますけど。

丸山 日本の特攻服も海外の人から見るとクールに見られているみたいだし、だからこそ『東京卍リベンジャーズ』のような暴走族の漫画も人気なんだと思います。中東のデモでは東リベのTシャツを着ている人を実際に見かけましたから。

梅本 このあいだ遊んだサウジアラビア人に聞いたら、サウジアラビアでは『ドラゴンボール』のテーマパークもできるらしいですし、日本のカルチャー自体が人気なんでしょうね。

丸山 ネパールやフランスのデモでも『ONE PIECE』の旗を掲げている人がいましたからね。「自由を求める」というニュアンスで『ONE PIECE』が象徴的に使われてるって、日本だと報じられないけど面白い現象ですよ。

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フランスのデモで掲げられた『ONE PIECE』の旗(写真:Getty Imagesより)

ルールより本能――アウトローが流行を作り、フードをかぶる理由

丸山 あと、これはアウトローに限らないことだけど、アメリカとかの海外の人達にとって、ファッションって「自己表現」の意味が日本以上に強いんですよね。例えば日本だとスタジャンって「子供が着るもの」みたいなイメージだけど、アメリカだとおじいちゃんでもカッコよく着ている人がいますから。

梅本 日本では最近「おっさんは職場でパーカー着るな論争」が盛り上がってましたけど、ファッションに礼儀が入っちゃってる感じは日本的ですよね。

丸山 あの論争のときに思い出したのは、「ドクター・ドレーがチェスターコートの下にパーカー着てたのはめちゃくちゃカッコよかったな」ってこと。彼のようなアメリカのラッパーはアウトロー的な要素が多分にある存在だけど、ドクター・ドレーがそういうファッションをしていたのは、流行とかルールとか関係なしに「自分がカッコいいと思ったから」だと思うんですよね。そうやって自分がカッコいいと思うものを躊躇なく着る人がアウトローには多いし、そういう人がファッションの流行を作るんだなと思いました。

梅本 確かにヤンチャな人たちは、周りを気にせず着たいものを着ますよね。このあいだ免許の更新にいったら、NEW ERAのキャップを被ったうえにパーカーのフードを被って、なおかつサングラスを付けている若者がいて、「これから写真も撮るのに、そのカッコ何?」って思いました(笑)。あのスタイルは日本の人気ラッパーを真似たもので、大元をたどればアメリカのアウトローの影響でしょうね。

丸山 そうでしょうね。でも、そもそも海外の人たちが何でフードを被るかっていうと、「被ったほうが温かいから」だと思うんですよ。あとは傘代わりですよね。キャップも同じで、雨が降ったら傘代わりです。だから俺も、若い頃にアメリカとかヨーロッパを旅したとき、多少の雨が降っててもキャップやフードでそのまま歩く人達を見て「カッコいいな」って思いましたから。

あとロンドンとかパリの暴動が起きた時の映像を見ていても、地元の若いヤツらがパーカーのフードを被って紐をギュッと絞って、フードを顔を隠すマスク代わりに使ってたりしています。「フードはただの飾り」だと思っていた中学生のころの自分とからすると衝撃的な使い方ですよ。

ギャング御用達の白T。アメリカ製がカッコいいのは“雑さ”のせい

丸山 そのほかに海外のギャングらしいアイテムというとパックTかな。ロサンゼルスのストリートギャングのクリップスに取材にいったときに思い出深いことがあって。案内してくれる人が団地の入口の売店に立ち寄って、バンダナとTシャツを大量にレジに積んで、財布も出さずに俺のほうを見るんですよ。

梅本 「案内するからお前が払え」ってことですね(笑)。

丸山 そう思ってお金を出しましたけど、そこの売店はクリップスの縄張りだから、チームカラーのバンダナも死ぬほど置いてあるんですよ。

その白Tについて梅本さんに聞きたかったのが、「なぜ外国人が着る白Tシャツはカッコいいのか」って話。外国の映画を見ていると、普通の白Tシャツをカッコよく着ている俳優さんが多いじゃないですか。でも、それに憧れて日本で白Tを買って着ると、どうしても肌着っぽくなるんですよね。

それが、アメリカを旅しているときに普通の安いパックTシャツを着たら、日本のとシルエットが全然違って、自分が映画で見たようなイメージに近くなったんです。白Tもアメリカと日本で何か違いがあるんですか?

梅本 アメリカのTシャツって基本的に雑なんですよ。パターンが全部まっすぐで、本当に「T」の文字みたいな形のザックリしたシルエットなんです(笑)。日本のブランドは肌に沿うようにしたり、ウエストを絞ってみたりするんですけど。

丸山 だから肌着っぽくなるのか! その逆に、何にも考えずに作ってるアメリカの白Tが、日本人からするとカッコよく見えちゃうんですね。

梅本 その雑さがカッコいいんでしょうね。古着とかヴィンテージの服も、どこかシルエットがどんくさいんですけど、「そのどんくさいのが好きだ」と感じる人がファッション好きには多いんです。

最近のストリートのワルが作る服は“グッズ”? アウトロー発ブランドのリアル

丸山 あとファッションとアウトローの話でいうと、日本でも昔はちょっとワルくてカッコいいストリートの人たちが、自分たちでブランドを立ち上げて、人生の進路としてファッション業界に入っていく流れがありましたよね。

梅本 ありましたね。僕らが若い頃は「あの店の人はめちゃくちゃオシャレだけど怖い」みたいなことが普通にあったし、昔のアメ村では首根っこ掴んで「オリジナルTシャツ作ったからお前買えや!」とか言われることもありました(笑)。それで、そういう人と仲良くなるのがステータスだったりしたんです。

丸山 今っぽい言い方をすると、昔のオシャレな服屋って、スクールカースト上位の人たちしか働けない場所でしたからね。そうした店から成長したアパレル企業には、もともとワルだった人たちもいるんでしょうけど、大卒の新人とかを採用しているうちに普通の企業になっていったんでしょうね。

あと最近は、ストリートから成り上がったインフルエンサー的な人たちが服を作って売ったりしてますけど、その話で梅本さんが言ってて感銘を受けたのは、「ああいう奴らが売ってるのはアパレルじゃなくてグッズなんだよ」という話。なるほどな、と思いました。

梅本 そういうインフルエンサーのブランドって売れてる話を全然聞かないし、特にメンズは厳しいです。レディースでも続いてるブランドは限られてます。今の時代はワルいヤツらがブランドを始めても成功しないですよ。

丸山 ちなみにアウトローの人たちが関わっているブランドは○○○○とか○○○○とか、今もあるんですけどね。危ない話題すぎるので、何でも記事にしちゃう「サイゾー」さんでも伏せ字でお願いします(笑)。

レイカーズ、ブルズから紐解く米国流デザインの真髄

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(写真:宇佐美亮)

梅本剛史(うめもと・たかふみ)
RESOUND CLOTHINGディレクター&デザイナー。海外メゾンデニムブランドのデザインや、LUNA SEA、DIR EN GREY、AAA、SMAP、Kis-My-Ft2などのアーティストの衣装製作も手がけた経験も持つ。スキャンダルのある芸能人を自身のブランドのモデルに積極起用することでも話題に。

丸山ゴンザレス(まるやま・ごんざれす)
ジャーナリスト、作家。1977年生まれ、宮城県出身。國學院大學大学院修了後、出版社勤務を経て独立。テレビ番組「クレイジージャーニー」(TBS系列)では、世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩く“危険地帯ジャーナリスト”として人気を博す。YouTubeチャンネル「丸山ゴンザレスのディープな世界」はチャンネル登録者数150万人超。

古澤誠一郎(ライター/編集者)

1983年埼玉県入間市生まれ。得意なジャンルは本、音楽、演劇、街歩きなど。『サイゾー』『週刊SPA!』『ダ・ヴィンチニュース』などに執筆中。ライター古澤誠一郎のホームページ

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古澤誠一郎(ライター/編集者)
最終更新:2026/02/28 18:00