『ジュラシック・ワールド 復活の大地』 恐竜より怖いのは「倫理観」のない研究者

子どものころ、みんな夢中になって『恐竜図鑑』を読んだのではないでしょうか。そんな恐竜好きなら見逃せないのが、ハリウッド大作『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(2025年)です。スカーレット・ヨハンソンが主演し、日本でも興収49億円のヒット作となっています。
7月31日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では、シリーズ第7弾となった『復活の大地』を地上波初&ノーカットで放送します。
人はなぜ大昔に滅びた恐竜たちに魅了されるのか? そのことも考えてみたいと思います。
怪獣が大好きなギャレス・エドワーズ監督
マイケル・クライトン原作、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』(1993年)が大ヒットしたことから、以降も監督を変えながら続々とシリーズが続いています。
今回は『モンスターズ/地球外生命体』(2010年)や『GODZILLA ゴジラ』(2014年)で知られるギャレス・エドワーズ監督が起用されています。モンスター映画が大好きなエドワーズ監督だけに、新種の恐竜も次々と登場します。恐竜たちが復活した『ジュラシック・パーク』のその後の世界という設定です。
主人公となるのは、凄腕の傭兵・ゾーラ(スカーレット・ヨハンソン)。熱帯にある孤島に生息する恐竜のDNAのサンプルを採集する任務を引き受けます。海、陸、空の三種類の恐竜のサンプルが求められます。
同行するのは、古生物学者のヘンリー博士(ジョナサン・ベイリー)、雇い主である製薬会社から派遣されたマーティン(ルパート・フレンド)たちです。島に向かう途中、海生爬虫類のモササウルスに襲われたルーベン一家を救出することになります。
島に上陸する際にスピノサウルスに襲撃され、クルーザーは大破。なんとか逃げ延びたゾーラたちですが、島では大型の肉食恐竜・ティラノサウルスや翼竜のケツァルコアトルスが追ってきます。
アトラクション感覚満載の2時間40分の放送となっています。
セルフプロデュース能力が高いスカヨハ
スカーレット・ヨハンソンはデビュー時は繊細な美少女イメージで、『ゴーストワールド』(2001年)や『真珠の耳飾りの少女』(2003年)などで活躍しました。犯罪ミステリー『マッチポイント』(2005年)では、ウディ・アレン監督がスカヨハに夢中になっていたことが知られています。ジジ転がしのうまい女優です。
従来の映画のヒロイン像に収まらず、『アベンジャーズ』(2012年)でブラック・ウィドゥに扮してからは、アクション大作にバンバン出演して稼ぐようになりました。その一方、『her 世界でひとつの彼女』(2013年)や『マリッジ・ストーリー』(2019年)などで演技派としての一面も披露しています。最近は自身のルーツを題材に、初監督作『エレノアってグレイト。』も公開しています。
今回はマッチョなおねえさんキャラで、ピチピチの白のタンクトップ姿を披露しています。超大作に主演し続けるための自己管理能力の高さを感じさせます。
ハリウッドでは40歳をすぎた女優はオファーが減ると言われてきましたが、そんな不条理な偏見をぶち壊していくスカヨハは、かっこいいと思いますよ。ハリウッドの新しい女優像だと言えるでしょう。
見せ場は巨大恐竜たちの恋愛シーン
シリーズ第1作『ジュラシック・パーク』に主演したサム・ニールは、7月13日に亡くなりました。サム・ニール演じるアラン・グラント博士が病気のトリケラトプスに寄り添う場面は、シリーズきっての名シーンでした。本作のヘンリー博士は、アラン博士の教え子という設定になっています。
今回の見せ場のひとつが、巨大な植物食恐竜・ティタノサウルスの登場シーンです。ティタノサウルスは長い長い尻尾を使って、求愛サインをつがいに送っています。恐竜たちの恋愛シーンに、思わずうっとりしてしまいます。
小型の草食系恐竜アクイロプスの幼体は、ルーベン家の末娘イザベラに懐きます。劇場アニメ『映画ドラえもん のび太の恐竜』(1980年)のピー助を思い出す、大人のファンも多いと思います。
クライマックスに現れるミュータント恐竜の不気味さと、実に対照的に描かれています。
実は「ヒトコワ」系だった「ジュラシック」シリーズ
ミュータント恐竜を生み出したのは、遺伝子研究を進めている製薬会社です。せっかく大金を注いだ実験結果なので、処分せずに生かし続けてきたわけです。
SFパニック映画として人気の「ジュラシック」シリーズですが、恐竜たちの恐ろしさはアトラクション的なスリル感でしかなく、本当に恐ろしいのは、倫理観もなく遺伝子操作を平気で繰り返している研究者と、それを後押しする大企業です。
古代に死に絶えたはずの生物を蘇らせ、新しい生命を生み出すことで、生態系にどんな影響をもたらすかまでは考慮せず、科学を万能と考え、自社の営利のための研究をひたすら進めています。
恐竜の遺伝子回収のために同行しているマーティンは、まさにモラルなき人物です。人命よりも、会社の指示を第一に考えている冷血人間として描かれています。
物語中盤、ゾーラとヘンリー博士の間で印象的な台詞のやり取りが交わされます。恐竜のDNAがそろえば、画期的な新薬が開発されることになります。人間の寿命は大幅に伸びるそうです。しかし、その新薬を手にすることができるのは、富裕層だけに限られています。
ヘンリー博士から製薬会社の横暴さを聞かされるゾーラですが、彼女自身も製薬会社から膨大な報酬をもらうことになっています。グローバル化した大企業に牛耳られた現代社会に不満を感じながらも、逆らうことはできないゾーラでした。
巨大産業となったハリウッドで働く、スカヨハやギャレス・エドワーズ監督自身の本音が漏れているような生っぽいシーンとなっています。
恐竜は会いたいけど、会えないアイドル
かつては地上の支配者として栄華を誇った恐竜たちですが、急激な環境の変化に対応できずに滅んでいったとされています。絶滅した巨大生物に対するロマンティックさは、子どもたちだけでなく、大人も魅了するものがあります。
恐竜を想うとき、同時に1億年もの時空も我々は飛び越えることになります。
人気絶頂期に他界したジェームズ・ディーンや尾崎豊を偲ぶ気持ちと、通じるものもあるかもしれません。夭折したロックミュージシャンのマーク・ボランは、それこそ「T-REX」を名乗っていました。いずれも神話化、伝説化した存在で、当時を知らない若いファンは残された資料をもとに想像を膨らませます。
現実世界では会えないから、会いたい気持ちが募る。恐竜はそんなアイドル的存在です。
ところが、近年は古生物学の研究が進み、恐竜は絶滅したのではなく、一部の恐竜は鳥類に進化したと考えられているそうです。
ベランダで「ぽーぽー」鳴いているハトやゴミ置き場の生ゴミを狙っているカラスたちは、実は恐竜たちの子孫らしいのです。
そう考えると「うざい」と思っていたハトやカラスが、少しはかわいく思えてくるかもしれません。昭和のおっさん世代も、恐竜たちを見習って少しは進化する努力をしましょうか。
(文=映画ゾンビ・バブ/映画ウォッチャー)
