実写版『キングダム』はどこまで続くのか? 山﨑賢人、大沢たかお、小栗旬の次なる戦場

「ンフフフフ」と笑う大沢たかおがネットミーム化し、大きな話題になったのが実写映画「キングダム」シリーズです。SNS上では「#大沢たかお祭り」が主婦たちの間で広まり、大喜利的な盛り上がりを見せてきました。
そんな大沢たかお演じる王騎将軍の見納めとなったのが、シリーズ第4弾『キングダム 大将軍の帰還』(2024年)でした。最新作『キングダム 魂の決戦』が7月17日(金)から劇場公開されるのに合わせ、同日の『金曜ロードショー』はシリーズ第3弾『キングダム 運命の炎』(2023年)と『大将軍の帰還』を中心に再編集した「今夜限りの特別版」を放送します。
王騎将軍の退場劇となる『大将軍の帰還』ですが、ハリウッドで定着した「IPビジネス」の流れもあって、シリーズはまだまだ続くようです。
主演の山﨑賢人、王騎役の大沢たかお、敵将役の小栗旬ら、日本の芸能界を代表する3人はこの先どんなキャリアを歩むのか勝手に考えてみたいと思います。
日本の芸能界の写し鏡
ざっくりと『大将軍の帰還』までのストーリーをまとめるとこんな感じです。
下僕として育った信(山﨑賢人)は「大将軍になる」という夢を叶えるため、政(吉沢亮)が治める秦国の兵として参戦。魏国と交戦した「蛇甘平原の戦い」で目覚ましい活躍を見せ、100人の兵を率いる「百人将」となります。秦国の大将軍である王騎(大沢たかお)から、「飛信隊」と名づけられます。
次なる戦場は、趙軍との「馬陽の戦い」です。趙軍の総大将(吉川晃司)は「武神」を名乗っており、人間離れした強さを誇っています。信を守るため、「飛信隊」の仲間たちは次々と倒れていきます。
趙軍の軍師を務めているのは李牧(小栗旬)です。策略家の李牧の思惑どおり、王騎軍は趙軍に包囲されてしまいます。絶体絶命の状況ながら、体を張って戦う王騎の姿と叱咤激励に背中を押され、信たちは血路を切り開くことになります。
武将たちが知恵と力を競い合う「キングダム」シリーズは、山﨑賢人、大沢たかお、小栗旬ら人気俳優たちが存在感を競い合う今の日本の芸能界の写し鏡にもなっています。
大沢たかお演じる王騎将軍は理想の上司像
大沢たかおは王騎役を演じるにあたって、シリーズ第1作では体重を15kg増量しましたが、『大将軍の帰還』ではさらにマッチョ化を進めています。そんな大沢たかおと、日本映画界にアクションブームをもたらした『るろうに剣心』(2012年)でラスボスを演じた吉川晃司が激突します。
両者のバトルシーンは、5~6日間かけて撮影したそうです。その結果、山﨑賢人や清野菜名の出番はかなり控えめです。
戦いの中で描かれる、王騎の大将軍としての器の大きさが今夜のいちばんの見どころでしょう。李牧の仕掛けた罠だと見抜きながら、味方の将を見殺しにすることができず、あえて趙軍の包囲網へと飛び込みます。圧倒的に不利な状況において、王騎は「久しぶりに血が沸き立ちます」と不敵に笑うのでした。
「ここからが王騎軍の真骨頂です。みなの背には、この王騎がついてますよ」
戦場で死ぬのも殺すのも絶対に嫌ですが、こんな上司が職場に実在するなら一緒に仕事をしてみたいと思わせるものが、大沢たかお演じる王騎将軍にはあるわけです。
大掛かりなアクションシーンの連続で、数百人規模のエキストラを動員した撮影現場は大変だったと思います。現場をまとめる監督やアクション監督の手腕に加え、メインキャストのムードメーカーとしての役割も大作映画では重要となってきます。
殺陣シーンの撮影は打撲などの怪我が絶えないわけですが、無事に完成したのは現場に一体感があったからでしょう。
イメージの転換期を迎えた山﨑賢人
山﨑賢人は『キングダム』に加え、同じく佐藤信監督と組んだNetflixシリーズ『今際の国のアリス』(2020年~)、さらに『ゴールデンカムイ』(2024年)にも主演しています。人気アクション漫画の実写化企画は、山﨑賢人に集中している形となっています。
2028年のNHK大河ドラマ『ジョン万』に主演することも発表されました。所属事務所「スターダストプロモーション」の看板俳優となっていますが、長丁場の撮影が続くことが心配です。まぁ、余計なお世話ですけど。
かつて1年間にわたってゴールデンタイムで主演を張る大河ドラマに主演することは、俳優としての最終ゴールとされてきました。大物俳優がキャスティングされるイメージのあった大河ドラマですが、以前のように20%以上の高視聴率を誇った時代とは違い、若手の人気俳優が起用されるようになっています。
それでも準備期間を含めると1年半も同じ人物を演じ続け、大がかりな撮影現場を回していくのはハードワークであることには変わりありません。若々しい印象の山﨑賢人ですが、『ジョン万』の撮影時には30代半ばになります。
信の成長物語だから『キングダム』を続けることは可能でしょうが、生身の俳優として山﨑賢人もイメージの転換を図る時期を迎えているように思います。このままだと、「漫画の実写化作品に数多く主演」という略歴のみが残る俳優人生で終わりかねません。
俳優としての成功例と残念だったケース
今、日本の俳優でいちばん大きな成功を収めているのは真田広之でしょう。若い頃はアクション俳優としてアイドル的人気を博し、『麻雀放浪記』(1984年)以降は演技派として評価されています。1991年には大河ドラマ『太平記』の主演を務めました。
海外の映画にも数多く出演し、ジェームズ・アイボリー監督の『上海の伯爵夫人』(2005年)では日本軍の衣装や所作の監修を務めるなど裏方としても積極的に作品づくりに関わっています。
ハリウッド大作『ラスト サムライ』(2003年)では、トム・クルーズと共演。トムの「自分がやりたい役をやるには、プロデューサーとして関わる」というスタイルに影響を受け、エミー賞受賞作『SHOGUN 将軍』(2024年)では主演とプロデューサーを兼任しています。
一方、チャンスを活かせなかったのは木村拓哉です。全盛期はアジア全域で大人気を誇り、フランス映画『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』(2008年)ではジョシュ・ハートネット、イ・ビョンホンら国際派俳優たちと共演しています。しかし、所属事務所が人気バラエティ番組『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の収録を休むことを許さず、制限された形での参加で終わっています。
この時期、意欲的に海外で活動していれば、キムタクはもっとワールドワイドなキャリアを築いていたかもしれません。
これからは俳優自身が、自分のキャリアをプロデュースする時代になってくるのではないでしょうか。
小栗旬と大沢たかおのケース
策士・李牧を演じた小栗旬は、所属事務所「トライストーン・エンタテイメント」の社長も務めています。自分で出演作を選ぶことができる立場にあります。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に主演した小栗旬は、ハリウッド映画『ゴジラvsコング』(2021年)にも重要な役で出演しましたが、このときは登場シーンを大幅にカットされるという辛酸をなめています。現在配信中のNetflixシリーズ『ガス人間』での熱演には、「ハリウッドに行かなくても世界で勝負できることを証明したい」というリベンジの想いもあるように思います。
大沢たかおは大河ドラマにこそ主演していないものの、Amazonスタジオ製作の映画『沈黙の艦隊』(2023年)の主演兼プロデューサーを務めています。防衛省や自衛隊に協力を求める際に、大沢たかおが自ら交渉にあたるなど人気俳優としてのメリットを活かしたプロデューサー手腕を発揮しています。
大沢たかおのように現場に精通した人気俳優が、企画から関わるプロデューサーを兼任するケースは国内でも増えていくと思われます。山田孝之、岡田准一、斎藤工、MEGUMIといった顔ぶれも、これからの日本映画を面白くしてくれるんじゃないでしょうか。
大河ドラマ『ジョン万』以降の動向に注目
山﨑賢人は『キングダム』の現場で、新しいキャリアを築きつつある大沢たかおと小栗旬に間近に接してきたわけです。
おそらく『ジョン万』で江戸時代の通訳・ジョン万次郎を演じるにあたり、山﨑賢人は英語のトレーニングに励んでいるところでしょう。「いずれ天下の大将軍になる男」を自負する信を演じているだけに、広い世界で勝負してみたいという気持ちもあるのではないでしょうか。
かつて大河ドラマは俳優としての最終ゴールと目されていましたが、現在は俳優が新しいフェーズに向かうための通過点となっています。
天下の大将軍を目指す信が、いや山﨑賢人にそのときが来たら、所属事務所の「スターダスト」は温かく送り出してほしいなと思いますよ。これまで、さんざん稼いでくれたんですから。
(文=映画ゾンビ・バブ/映画ウォッチャー)
