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『金ロー』を独自視点からチェックする!【103】

博物館が舞台の『ナイトミュージアム』 白人視点に偏った「歴史観」が問題に

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映画『ナイトミュージアム』

 金ローでおなじみ、『ホームアローン』(1990年)や『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年)などのヒット作を飛ばしたのがクリス・コロンバス監督です。いつまでも童心を失わない作風とユーモアで、世界中で愛されています。

『タイタニック』が描いた「永遠の一瞬」

 そんなコロンバス監督が製作を手がけたのが、ベン・スティーラー主演映画『ナイトミュージアム』(2007年)です。博物館に展示された蝋人形や剥製たちが、夜になると動き出すというファンタジーコメディです。

 まぁ、ピクサーの大ヒットCGアニメ『トイ・ストーリー』(1995年)をしれっと実写化したような内容です。売れそうなものは何でも実写映画化してしまう、いかにもハリウッドらしい発想の作品じゃないですか。

 9月18日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)でオンエアされる『ナイトミュージアム』を、いつものように独自視点で考察したいと思います。

豪華キャストがそろった博物館の展示物

 主演のベン・スティーラーは『メリーに首ったけ』(1998年)や『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』(2008年)などのコメディ映画で人気のハリウッドスターです。うまく大人になりきれずにいる、冴えないオッサン役に定評があります。

 物語の舞台になるのはニューヨークにある自然史博物館です。博物館に展示されている歴史上の人物を演じるキャスト陣がかなり豪華です。第24代米国大統領のセオドア・ルーズベルトにロビン・ウイリアムズ、エジプトから来たミイラの王子に『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)のラミ・マレック、西部開拓期のカウボーイのミニチュア人形に『ミッドナイト・イン・パリ』(2011年)のオーウェン・ウィルソンらが扮しています。

 昭和世代の人間は、『新春隠し芸大会』(フジテレビ系)でハナ肇が顔を青銅色に塗って銅像を演じていたのを思い出すかもしれません。

 本作を撮ったのはショーン・レヴィ監督。Netflixの人気シリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のエグゼクティブ・プロデューサーでもあり、現在公開中のホラーミステリー『バックルームズ』の製作にも名前を連ねています。

 誰も知らない夜の博物館を題材にした、都市伝説っぽい世界です。

動き出す恐竜の骨格標本

 主人公のラリー(ベン・スティーラー)は転職を繰り返してばかりいます。離婚した妻からもあきれられ、ひとり息子のニックになかなか会わせてくれません。いつまでも父親の自覚が持てずにいるラリーでした。

 ようやく見つけたラリーの新しい仕事は、自然史博物館の夜警でした。閉館して夜になり、誰もいないはずの博物館がにわかに賑やかになります。ロビーに展示されていたティラノザウルスの骨格標本が動き出し、モアイ像はしゃべり始めます。ジオラマセットにいるミニチュアの人形たちも暴れ始め、ラリーに向かって一斉攻撃を仕掛けます。

 おかしなキノコの食べ過ぎではありません。蝋人形のセオドア・ルーズベルト(ロビン・ウィリアムズ)によると、エジプト王の石板が運ばれてきてからその魔力によって、館内の人形や剥製たちは夜の間だけ動き回っているとのことです。

 暴れ回る人形たちを館内から逃げ出さないよう、ラリーは四苦八苦します。時給に見合わない重労働に、すぐに転職を考えるラリーでした。

アルコール依存症で苦しんだハリウッドの名優

 夜警の仕事なんてやってられないと思っていたラリーですが、ルーズベルトに励まされ、また世界の歴史を学ぶうちに、自分の生き方も見つめ直すことになります。息子のニックにいいところを見せたくもあり、少しずつですが仕事に対する責任感を身につけていきます。

 ラリーも敬意を払う、セオドア・ルーズベルトは歴代の米国大統領でも人気の高い人物です。パナマ運河の建設を推進し、日露戦争の停戦の調停役を務めたことでも知られています。また、大統領を辞めた後は、冒険家として活躍しています。

 ルーズベルトを演じたロビン・ウィリアムズも、ハリウッドで愛されてきた名優です。『ガープの世界』(1982年)や『グッドモーニング・ベトナム』(1987年)など多くの作品に出演していますが、晩年はアルコール依存症や心身の不調に悩み、2014年に63歳で亡くなっています。

 セオドア・ルーズベルトも60歳の若さで亡くなっています。惜しまれて亡くなった点では、共通するものを感じさせます。

血で塗られた米国の暴力の歴史

 本作の舞台となっているのは、ニューヨークに実在するアメリカ自然史博物館です。リアルに再現したセットで撮影を行なっています。しかし、公開から20年が経った今では、博物館の展示内容に問題があったことが認識されるようになってきました。

 セオドア・ルーズベルトはネイティブアメリカンの女性・サカジャウィア(ミズオ・ペック)に思いを寄せていますが、館内ではネイティブアメリカンは白人による西部開拓に協力的だったことになっています。歴史的には、欧州からの移民である白人はネイティブアメリカンが暮らす土地を奪い、抵抗する部族は武力で制圧し、合衆国という国をつくっています。

 さらに奴隷解放政策をめぐって、国が二分する南北戦争も起きています。南北戦争のジオラマのミニチュア兵たちは「のっぺらぼう」みたいに顔がありませんが、戦場には多くの黒人兵が送り込まれていました。合衆国の歴史は、血で塗られた暴力の歴史でもあったのです。

 ファミリー向けのコメディ映画『ナイトミュージアム』では触れられていませんが、当時のアメリカ自然史博物館は白人視点に偏った「歴史観」による展示構成だったことが、近年になって問題視されています。博物館正面にあったセオドア・ルーズベルトの騎馬像は、人種的ヒエラルキーを想起させると批判され、2022年に撤去・移設されています。

 多様性が認められるようになった現代では、どのような視点から博物館の展示を構成するのかも重要な課題となっています。

パリ万博で人気だった「人間動物園」

 大英博物館も問題になっています。入場料無料の大英博物館ですが、植民地支配した土地からの略奪品の数々が展示されています。また、19世紀末から20世紀初頭にフランスで開かれたパリ万国博覧会では、世界各地の少数民族の生活ぶりを見せ物として展示する「人間動物園」があったことが知られています。

 1903年に大阪で開かれた「内国勧業博覧会」でも、アイヌや沖縄の人々が見せ物になっていました。

 さらに言うと、アメリカ自然史博物館が1877年に開館する以前にニューヨークで人気を集めていたのは「バーナム博物館」でした。ヒュー・ジャックマン主演映画『グレイテスト・ショーマン』(2017年)のモデルになったP・T・バーナムですが、「ジョージ・ワシントンの161歳の元乳母」などの見せ物で、バーナム博物館に人を呼び込んだことで有名です。こうして見ると、博物館はかなりダークな歴史を持っていたことが分かります。

 入場料金が良心的だった上野の「東京国立博物館」ですが、国からの助成金が削られ、前庭にカフェやレストランなどの商業施設が新設されました。世知辛いですね。

 博物館の裏の顔を知っておくと、今夜の『ナイトミュージアム』がより楽しめるのではないでしょうか。

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(文=映画ゾンビ・バブ/映画ウォッチャー)

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映画ゾンビ・バブ(映画ウォッチャー)。映画館やレンタルビデオ店の処分DVDコーナーを徘徊する映画依存症のアンデッド。

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最終更新:2026/09/18 12:00