ハリウッド最後の超大作『タイタニック』 レオナルド・ディカプリオ、22歳の輝き

「わたし、飛んでるわ!」
船に乗ったカップルのほぼ全員が船首で両手を広げて、タイタニックごっこをしたんじゃないでしょうか。そんな小っ恥ずかしいことが平気でできてしまうほど、映画『タイタニック』(1997年)は世界的なメガヒット作になりました。
世界興収は22.6億ドルとなり、当時の興収記録を塗り替えています。日本でも277.7億円を稼ぎ出し、今なお洋画のNo.1ヒット作です。主演したレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットもハリウッドを代表する大スターとなりました。
もう、『タイタニック』はハリウッド最後の実写超大作と言っていいんじゃないでしょうか。
9月4日(金)、11日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)は2週にわたって『タイタニック』を放送します。「ディカプリオって何?」という洋画を観ない令和世代も楽しめるよう、『タイタニック』の見どころを分かりやすく紹介します。
約1500人が亡くなった海難事故を再現
ジェームズ・キャメロン監督は、『エイリアン2』(1986年)や『ターミネーター2』(1991)などで知られるハリウッドのヒットメーカーです。VFXを使ったド派手な映像づくりを得意としています。そんなキャメロン監督が、当時としては最高額となる製作費2億ドルを投じたのが上映時間3時間15分になる超大作『タイタニック』でした。
1912年4月、豪華客船タイタニック号が英国から米国ニューヨークへ向かう大西洋航海中に氷山に接触し、海に沈んだ実話を題材にしています。約1500人が亡くなった海難史に残る大事件です。
主人公のジャック(レオナルド・ディカプリオ)は、ビンボーな絵描きです。風来坊な生活を送っており、ポーカーの戦利品としてタイタニック号の乗船券を手に入れ、乗り込みます。そこで、上流階級の令嬢・ローズ(ケイト・ウィンスレット)と出会います。
ローズには親が勝手に決めた婚約者がおり、息苦しい上流階級の生活にうんざりしています。衝動的に海に飛び込もうとしたところを、止めてくれたのがジャックでした。ジャックの自由気ままで、情熱的な生き方にローズは惹かれることになるのです。
当時は美少年だったディカプリオ
ローズの命を救ってくれたお礼にと、ジャックはローズの婚約者キャル(ビリー・ゼイン)のいる豪華ディナーに呼ばれます。
着替えを持っていないジャックに、世話好きおばさんのマーガレット・モリー・ブラウン(キャシー・ベイツ)が息子のタキシードを貸し与えます。マーガレットは実在した新興成金です。
ピシッと着替えたジャックのダンディーさに、思わず目を見張ります。
公開時のレオナルド・ディカプリオは22歳でした。すでに『ギルバート・グレイプ』(1993年)や『ロミオ+ジュリエット』(1997年)で若手演技派として注目されていましたが、『タイタニック』の成功で世界的な大スターとなります。
この頃のディカプリオはまだ少年の面影が残り、本当に美形です。
ケイト・ウィンスレットがヒロインに選ばれた理由
最近のディカプリオは、『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年)でアルコール&ドラッグ漬けになったダメパパぶりをリアリティーたっぷりに演じてみせていましたが、『タイタニック』の頃はシュッとしてスッとしていたんですよ。
まぁ、自分も晩年のマーロン・ブランドを見て、「この太ったオッサンがハリウッドスターなの?」と思ったものです。令和世代も『タイタニック』を見れば、ディカプリオの当時の人気ぶりが分かるんじゃないですか。そのくらい、当時の「レオさま」は輝いていました。
ローズ役のケイト・ウィンスレットは、現在も実力派女優として活躍しています。実録映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』(2023年)ではアウシュビッツ強制収容所の存在をカメラで暴いた戦場カメラマンを演じるなど、タフなキャラクターを得意としています。
ジャック役は、SF映画『コンタクト』(1997年)のマシュー・マコノヒーも有力候補だったそうです。ローズ役は『セブン』(1995年)のグイネス・パウトローも狙っていたそうですが、ヌードシーンがあるため、ボディの豊満なケイトが選ばれたとも言われています。
結局のところ、このキャスティングで正解だったんじゃないでしょうか。
アイルランド移民たちの最後のパーティ
今夜放送の『タイタニック』前編は、タイタニック号が沈むことを知らないジャックとローズとが出会い、恋の炎を燃やす様子が描かれます。
一等室フロアを抜け出した2人は、貧しい移民たちが肩を寄せ合う三等室フロアへ。そこはアイルランド移民たちによる、無礼講パーティの真っ最中でした。アイルランド音楽に合わせて、2人が踊り明かすシーンは前半の見どころでしょう。
黒ビールを飲み干し、自慢の隠し芸を披露するローズ。お嬢さま育ちの彼女は、生まれて初めての開放感を覚えます。青春ですねぇ。このシーンを見ながら、『タイタニック』公開時の懐かしい思い出が去来する平成世代の視聴者も少なくないことでしょう。
来週放送の後編でタイタニック号は沈みますが、一等室や二等室にいた女性や子どもたちは優先的に救命ボートに乗ることができ、命拾いしています。船員たちの対応は三等室までは手が届きませんでした。というか、三等室の客は救命ボートのある最上階デッキに出ることが通常時は禁じられていました。ジャックたちと一緒に踊っていた移民たちの大半は事故の犠牲となります。
欧米社会に歴然とある「階級」や「格差」をまざまざと感じさせます。長引く経済不況と格差の拡大によって、日本も格差社会の仲間入りをしたことを感じさせる今日この頃です。
『タイタニック』以降は消えた印象的なエンディング
冒頭でも触れましたが、『タイタニック』はハリウッド最後の実写超大作と言っていいんじゃないでしょうか。もちろんCGも使っていますが、あくまでもリアルに再現したタイタニック号の巨大セットで撮影され、世界的なスターが主演した大恋愛映画として話題を呼び、映画館に長蛇の列ができたわけです。セリーヌ・ディオンが歌う主題歌は、テレビやラジオで連日のように流れました。
その後、ジェームズ・キャメロン監督は、ほとんどCGアニメじゃないのと思うSF大作『アバター』(2009年)を手掛け、『タイタニック』の興収記録を自身の手で更新することになります。主演俳優の存在よりも、キャラクターIPや最新の映像テクノロジーが作品における大きな比重を占めるようになります。
また、『アバター』がシリーズ化されたように、ハリウッドは「IPビジネス」が主流の時代になります。シリーズ化作品が量産され、一本のみで完結した『タイタニック』のようなインパクトのあるエンディングを持つ作品はすっかり消えてしまいました。
当時は誰も思ってもいなかったわけですが、『タイタニック』が輝いて感じられるのは、ハリウッド自身が最後の輝きを放った作品だったからかもしれません。20世紀はハリウッドが作る大作映画が娯楽の王さまだったわけですが、今では多くの人が配信動画を自宅で手軽に楽しむようになっています。
最後の航海に出たタイタニック号の行方は、ハリウッド映画のその後とどこか重なるものを感じるのです。
(文=映画ゾンビ・バブ/映画ウォッチャー)
