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村上宗隆と岡本和真――30本塁打目前でも“長打力”は別物? データで見えた「来季への明暗」

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日本代表でも活躍したシカゴ・ホワイトソックスの村上宗隆とトロント・ブルージェイズの岡本和真。(写真:Getty Imagesより)

 本物のスラッガーとは、打てる時期にどれだけ本塁打を量産できるかではない。打てない時期を、どこまで小さくできるか。村上宗隆と岡本和真は、ともにMLB移籍1年目から30本塁打が視野に入る数字を残している。しかし、その「長打力」の中身は同じではない。

村上宗隆は29本塁打、岡本和真は28本塁打。数字だけを切り取れば、両者はほぼ同じ地点に立っている。しかし、その長打力を支えている構造は同じではない。

 村上は打率.218、29本塁打、出塁率.357、長打率.497、OPS.854。岡本は打率.230、28本塁打、出塁率.306、長打率.447、OPS.753である。

 本塁打数の差はわずか1本だが、OPSには.101の開きがある。これは、両者が本塁打を打てない打席を、どのように処理しているかの違いでもある。

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【編注:本記事のデータは日本時間2026年8月31日時点になります】

村上宗隆──三振と長打が表裏一体になっている

 村上の長打力そのものを疑う必要はない。平均打球速度94.0マイル、ハードヒット率57.8%、バレル率19.9%はいずれもMLB最上位級であり、実際の長打率.497に対して期待長打率も.492。29本塁打は偶然の積み重ねではなく、打球速度と打球角度によって再現されている数字である。

 問題は、長打が出ない打席の処理にある。村上の8月は打率.150、出塁率.292、長打率.350、OPS.642。月間5本塁打を放ちながら、120打席で45三振を喫した。19四球を選んでいるため出塁率は辛うじて保たれているが、バットに当たらない打席が増えたことで、ホームラン以外の攻撃価値が急速に失われている。

 村上の三振率は33.8%、空振り率は41.9%。ストライクゾーン内のコンタクト率も67.8%にとどまり、MLB平均の82.7%を大きく下回る。一方で、ボール球へのスイング率は21.9%で、MLB平均の28.6%より低い。つまり、村上は闇雲にボール球を振っているわけではない。振る球の選択はできているが、振ると決めた球を捉え切れない打席が多いのである。

 ここが村上の長打力の本質である。強く振り、打球速度を最大化するからこそ、多少芯を外してもスタンドまで運べる。その反面、スイングの大きさとタイミングの取り方がずれれば、三振が一気に増える。三振と長打が、完全に表裏一体になっている。

 したがって、村上に求められるのは「三振をしない打者」になることではない。すべての打席で長打を狙うのではなく、追い込まれた後や投手有利のカウントで、スイングの出力、狙うコース、打球方向を切り替えられるかである。

 今後、村上が年間40本、50本を打てるかどうかは、絶好調時にどこまで量産できるかだけでは決まらない。8月のような状態を1か月続けるのか、10日程度で修正できるのか。その差が、最終的な本塁打数とOPSを左右する。

岡本和真──「打者としての設計力」をMLB仕様にできるか

 岡本の長打力は、村上ほど極端な打球速度に依存していない。バレル率13.2%、平均打球速度90.4マイルは十分に優秀だが、村上の数値には及ばない。それでも28本塁打を記録しているのは、引っ張った打球を効率的に上げる技術と、打てる球を選び、その球を一振りで仕留める能力があるからだ。

 岡本は本来、ホームランだけで打席を成立させる打者ではない。2025年の巨人では69試合で打率.327、出塁率.416、長打率.598、OPS1.014。四球率と三振率はいずれも11.3%であり、長打を狙いながらも、四球や単打を含めて打席全体のプラン立てができていた。

 しかし、MLBでは三振率が29.7%まで上昇し、四球率は8.7%、出塁率は.306にとどまっている。村上よりゾーン内コンタクト率は高く、空振りも少ないが、NPB時代ほど「打てないなら歩く」「長打が難しければヒットを残す」という打席にはなっていない。

 それでも、岡本には修正の形が見えている。シーズン途中には打席内で立つ位置を捕手寄り、かつホームベース寄りへ変更。変化球に対するポイントを後ろへ置くことで、変化球への長打率、空振り率、チェイス率が改善した。これは筋力を増やした結果ではない。ボールを見る時間を確保し、振る球と見送る球を整理した結果である。

 直近7試合では20打数5安打、2本塁打に加えて6四球、3三振。短い期間ではあるものの、ホームランだけでなく、四球とコンタクトを同時に戻しつつある。岡本が維持すべきなのは、この打席の形である。

 岡本の場合、本塁打を増やそうとしてスイングを大きくするより、四球を選び、カウントを整え、失投を待てる状態を保った方が、結果として長打も増える。

 岡本の長打力は、「強く振り続けること」ではなく、「強く振るべき球まで待てること」によって維持される。

MLBの速球対応──本当の課題は、速球そのものではない

 両者に共通する来年以降の課題として、MLBの速球対応が挙げられる。ただし、現時点の数字を見る限り、「速い球が打てない」と単純化するのは正確ではない。

 村上はフォーシームに対して打率.237、長打率.640、プラス14の得点価値を記録。岡本もフォーシームに打率.305、長打率.588、プラス16の得点価値を残している。両者とも、真っすぐ系の球を長打にする能力はすでに示している。特に村上は、7月29日時点では97マイル以上の速球に対するOPSが1.200を超え、MLB全体でも最上位級だった。少なくとも、「150キロ台後半の速球には対応できない」という段階にはない。

 本当の課題は、速球を打つために早く始動したとき、変化球やカット系の球をどこまで見極められるかである。村上はフォーシームを打てる一方、スライダーに対する空振り率は54.9%、スイーパーも43.8%。岡本もスライダー、スイーパー、カッターへの空振りが多く、とりわけカッターには打率.095、長打率.119と苦しんでいる。

 MLBの速球対応とは、単に速球に振り遅れずに打つことではない。速球に間に合う準備をしながら、その準備を利用して投げられる変化球にも対応すること。それが本当の速球対応である。

 来季以降、相手投手は両者が打った球ではなく、空振りした球を中心に配球を組み立ててくる。フォーシームへの強さが知られるほど、変化球やボーダーラインへの攻めは増える。そこで狙い球を絞りながら、完全な読み打ちにもならない状態をつくれるかが、2年目以降の勝負になる。

シーズン終盤は「修正力」が問われる

 シーズン序盤は、初対戦の投手も多く、打者の特徴が完全には共有されていない。

 しかし、試合数を重ねるほど、投手側は打者の空振りするコース、打球が弱くなる球種、カウントごとの狙いを把握していく。さらに打者側には、移動、連戦、故障、疲労が蓄積する。村上は2025年に右脇腹の故障で出場が56試合にとどまり、今季も右ハムストリングの故障で5月末から7月まで離脱した。長打力を年間で維持するには、スイングの技術だけでなく、強く振れる身体を保つことも必要になる。

 岡本は今季すでに133試合、543打席に立っている。継続して試合に出られていることは強みだが、MLB初年度の移動と連戦を経験しながら、終盤にも打席の精度を保てるかが問われる。この時期に重要なのは、好調時のフォームを守り続けることではない。

 疲労によって始動が遅れたなら、準備を早める。速球待ちで変化球を振らされるなら、狙うコースを絞る。厳しい球が続くなら、四球を選んで次の打席へつなげる。状態が変わるたびに、打席の最適解を更新する力が求められる。

 現時点で、純粋な打球の強さと一発の破壊力は村上が上回っている。29本塁打、OPS.854に加え、打球速度やバレル率もMLB上位水準にある。空振りを一定範囲に収められれば、40本塁打級へ進む可能性を持っている。しかし、三振率がさらに上昇すれば、投手側はストライクゾーン内でも勝負できるようになる。村上にとって来年以降の最大のテーマは、長打力を落とさず、ゾーン内のコンタクト率をどこまで引き上げられるかである。

 一方の岡本は、本塁打数では村上にほぼ並んでいるが、出塁率とOPSには改善の余地がある。来年以降、岡本が安定した中軸打者として残るためには、NPB時代に持っていた四球と三振のバランスを取り戻さなければならない。28本塁打を30本、35本へ増やすこと以上に、出塁率.306、OPS.753をどこまで押し上げられるかが重要になる。

 両者はNPB時代から、長期間にわたって本塁打を量産してきた。村上は2019年から2024年まで毎年28本以上、岡本は2018年から2024年まで毎年27本以上を記録している。したがって、両者の長打力そのものは一時的なものではない。問題は、その長打力をMLBの162試合という環境へ適応させられるかである。

 また、本物のスラッガーにとっては、好不調の波を小さくすることも重要なポイントである。村上宗隆の長打力は、打球データを見る限り本物だ。ただし、三振が集中したときにOPSが急落する構造は残っている。岡本和真の長打力も、MLBで30本近くを打てる水準にある。ただし、本来の持ち味である四球、出塁、状況対応まで含めた打席設計は、まだ完全には戻っていない。

 現時点でいえば、村上は「ホームランを打ち続ける確率」が高く、岡本は「打席の組み立てによって成績を安定させられる可能性」を持っている。しかし、両者の本当の評価が決まるのは、好調時ではない。疲労が蓄積し、対戦データが揃い、相手が弱点だけを狙ってくるシーズン終盤。そして、攻略法を持った状態で迎え撃たれる来季である。

 本物のスラッガーとは、打てる時期に誰よりも打つ選手ではなく、打てない時期を誰よりも短く、誰よりも小さくできる選手である。長打力とは、単にボールを遠くへ飛ばす力ではない。年間を通して打席を壊さず、本塁打数とOPSを同時に維持する力である。

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(文=ゴジキ)

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ゴジキ

野球評論家・著作家。著書に『巨人軍解体新書』(光文社新書)、(集英社新書)、『システムで読む甲子園』(カンゼン)などがある。『データで読む甲子園の怪物たち』(集英社新書)と『マネジメント術で読むプロ野球監督論』(光文社新書)は発売前重版を記録。連載実績として「ゴジキの巨人軍解体新書」「データで読む高校野球2022」「ゴジキの新・野球論」などを担当し、現在はサイゾーオンラインにて「ゴジキの野球戦術ちゃんねる」を連載中。週刊プレイボーイ、スポーツ報知、女性セブン、日刊SPA!、集英社オンライン、現代ビジネスなど各種メディアでの寄稿・取材も多数。Yahoo!ニュース エキスパートにも選出されている。
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ゴジキ
最終更新:2026/09/03 22:00