初代『クレヨンしんちゃん』声優・矢島晶子、再改名の舞台裏――名義を戻すことが「最適だった」ワケ

　国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』（テレビ朝日系）の初代・野原しんのすけ役で知られる声優・矢島晶子。昨年の事務所移籍時に「うえちあき」に改名していたが、現在は改名前に戻して活動していることが明らかとなった。

声優・矢島晶子、「うえちあき」から約8カ月で再改名にネット上では疑問の声

　もともと舞台女優志望だった矢島は、出演舞台をたまたま観に来た声優事務所「ぷろだくしょんバオバブ」のマネジャー（当時）で声優としても活動していた故・たてかべ 和也氏（2015年6月に死去）にスカウトされ、1988年に機内上映版の『ロジャー・ラビット』 の日本語吹き替え版で声優デビュー。

　1992年4月から放送を開始したテレビアニメ『クレヨンしんちゃん』では、主人公・野原しんのすけの声を担当。独特な低めの声で発せられるユーモア溢れるセリフはお茶の間を長年楽しませたが、「しんのすけの声を保ち続ける事が難しくなった」「キャラクターの声を作る作業に意識が集中し、役としての自然な表現が出来にくくなってしまった」ことを理由に、2018年6月29日放送回で降板。同年7月からは小林由美子が後任を務めている。

「なお、矢島は10年4月に『ぷろだくしょんバオバブ』を退所後、15年9月からはアニメの音響制作も手掛ける声優事務所『AIR AGENCY』と業務提携を結んでいましたが、24年8月から山寺宏一らが所属する『アクロスエンタテインメント』に移籍。同時に芸名を『うえちあき』に改名しました」（声優ライター・勅使河原みなみ）

　しかし、旧芸名の「矢島晶子」に再度改名していたことが、事務所公式サイトにて明らかに。矢島の個人ページを見ると、「経歴」の欄に「2025年4月1日　うえちあき より改名」と記載されている。

　わずか約8カ月での再改名となったが、ネット上のアニメファン、声優ファンからは「やっぱりこっちの方がしっくりくる」「うえちあきに改名してたのすら知らなかった」という声や、「そもそもなんで改名したんだろう？」との疑問も聞こえてきた。

声優・矢島晶子、名義を戻すことが「最適だった」？　業界関係者が指摘するワケ

　制作関係者は、矢島が再改名した舞台裏について、以下のように推測する。

「アクロスエンタテインメントは、社長が新人に芸名をつけることで有名な事務所です。とはいえ矢島はベテランですし、一度目の改名は本人希望によるものと考えられます。彼女は、現在沖縄に拠点を置き、仕事などの用事がある時だけ東京に来ているそう。そうした背景から、矢島側が『うえち』という沖縄に多い名字を芸名として採用したのでは。タレントが改名する理由は、イメージチェンジを図ることを目的とする場合と、芸名の権利が前事務所に帰属していて使用できない場合がほとんどですが、矢島の場合、新しい事務所に移籍し、心機一転を図りたかった彼女側の意向が大きいのではないかと推測されます」

　しかし、長く業界で活動し続けるためには、「元の名義に戻すことが最適だったのかもしれません」とのこと。

「『矢島晶子』という名前はすでに非常に強いブランド力を持っており、当時57歳という年齢で改名をしても業界内では浸透しづらいのが現実です。改名して成功した声優の例はあまり多くなく、『マクロス7』（TBS系）の熱気バサラ、『忍たま乱太郎』（NHK）の七松小平太、『Fate/stay night』（テレビ埼玉ほか）のランサー役などで知られる神奈延年も、『もう一度一からやり直したい』との思いで00年1月に本名の林姓から現在の名義に改名していますが、その後の活動に大きな変化は見られていないようです」

　なお、アクロスにおける矢島の扱いをめぐっては、「疑問も残る」そうだ。

「事務所公式サイトの『声優・ナレーター』カテゴリ『一覧』を見ると、山寺や金田朋子ら15名の顔写真と名前が大きく表示され、その下に小さく他の所属タレントが並んでいますが、その小さい中に矢島がいる状態です。彼女に対するリスペクトが感じられませんし、これまでの功績も軽視されている印象を受けます。これではアクロスとして、彼女を売り出す意欲がないように見えてしまいます」

　再びかつての名義で活動を始めた矢島がこれからどのような活躍を見せていくか、今後も注目だ。